フランスの作曲家ビゼーによって創られたオペラ『カルメン』は今なお上演される不屈の名作。仏オペラ・アリア集での「ハバネラ」の超名演が全曲録音企画につながったのだが、カラスにとってフランス・オペラは初めての正規録音であり、またEMIへの最後の全曲録音となった。この名作オペラのおすすめ有名アリアは、カラスの十八番である「Quand Je Vous Aimerai(恋は野の鳥)ハバネラ」と「Pres Des Remparts(セビリャの城壁の近くに)セギディーリャ」の2曲であろう。「ハバネラ」はあらゆる要素を集約した魅力あふれるアリアで、煙草工場の女子工員カルメンが初めて登場するときに歌われる。カルメンは生まれつきの多情なジプシーの性格を、この歌によってあますところなく示す。「セギディーリャ」は、他の女子工員を傷つけたカルメンは、伍長ドン・ホセに逮捕される。彼女は、後手にしばられたまま、このセギディーリャを歌い、ホセの心をとろかして、縄をとかせて、まんまと逃亡に成功する。
19世紀と20世紀の境目に書かれた歌劇『ルイーズ』は、パリの庶民生活を舞台に、お針子娘ルイーズと貧乏な芸術家ジュリアンとの恋物語。名アリア「Depuis le jour(その日から)」は、第3幕のはじめ、モンマルトの丘の上にあるジュリアンとの楽しい愛の巣で、ルイーズは夕暮れのパリの町を眺めながら幸せに満ち溢れた気持ちを歌うシーンである。
組曲『動物の謝肉祭』でお馴染みの作曲家サン=サーンスのオペラ『サムソンとデリラ』より、美女デリラの優美なアリアを紹介。このオペラのストーリーは、旧約聖書で有名な男サムソンが、敵方のデリラに誘惑され、目を潰された上で囚われの身となり誰もが恐れる怪力を失う。しかし最後にサムソンは神に許しを請い、力を取り戻し敵方の神殿を崩壊させるというもの。名アリア「Mon Coeur S’Ouvre A Ta Voix(あなたの声に心は開く)」は、まさにデリラがサムソンの心を捉える場面で歌われるもので、カラスは幅広い音域と美しいフランス語の発音を生かし、説得力ある表現で聴く人の心をとらえる。