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総合TOP > リコメンドインデックス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2008/05/07 クインシー・ジョーンズ

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
クインシー・ジョーンズ 『The Dude』(HD 16bit/44.1kHz)
クインシー・ジョーンズ  『The Dude』(HD 16bit/44.1kHz)
モダン・ジャズではなく、商業音楽としての「現代のジャズ」、
その究極の洗練のひとつ(前編)

 ここLondonにおける、僕のホームグラウンドであるEASTCOTE Studiosは、元々Chas(Chaz)JANKEL=チャズ・ジャンケル(日本ではチャスとも発音され混同されるようだが、Charles=チャールズの愛称と理解すれば簡単、要はどちらでも良し)のスタジオだった。

 80年代、彼のリーダー・アルバムをよく聴いていた僕は、ミュージシャン・クレジットやエンジニア・クレジットと同じように、当然のことながらスタジオ・クレジットも、よく見ていた。やはり80年代よりLondonでセッション経験がある僕は、市内の大概のスタジオは知っていたが、このEASTCOTE Studiosは知らなかったので、ぜひ一度使ってみたいとは思っていたのだが、残念なことにその機会はなかなか訪れなかった。
 それが90年代初頭、ひょんなことから僕の相棒Martin LASCELLES=マーティン・ラッセルズ(鷺巣とのグループMASHにおける)にスタジオ選びを任せたところ、なんと彼がEASTCOTE Studiosをチョイスしたので驚いた。聞けば、彼の家の近所らしい。もちろん当時はマーティンの家にもスタジオはあったが、その時、われわれはリズム・セクションやストリングス・セクションが録音できる、広い部屋を持ったスタジオが必要だったのである(ちなみに現在はマーティンは西南フランスに引っ越してしまった)。

 僕はめぐりめぐったような偶然に驚きまがら「そりゃイイね」とマーティンに相槌を打ち、喜び勇んでスタジオに向かったのは言うまでもない。そこで僕を迎えてくれたのが、エンジニアのPhilip BAGENAL=フィリップ・バグナルだった。
 フィリップの名前も、とうぜん僕はチャスのアルバムで見慣れていたので、さらに嬉しかった。そう、フィリップはチャズのメイン・エンジニアとして、いつもクレジットされていたからである。エンジニアだけでなく、シンセなどの楽器やボイス(声)やパーカッションなどでもクレジットされていたフィリップは、チャズのパートナー的な存在だったのだ。しかも、聞けば「すでにEASTCOTEをチャズから引き継いだ」とのこと。EASTCOTE Studiosはフィリップのスタジオになっていたのだ。

 早いもので、それから20年近くたつだろうか、僕はこのスタジオに自分の機材を並べて居座ってしまったことになる。そう、20年近くも毎年欠かさず、一年のうち延べ半年はEASTCOTEの階上第二スタジオに、ず〜っと僕は居るのだから。人生のうち延べ10年以上も、同スタジオの同部屋に居るなんて、東京でもParisでも自宅スタジオ以外では、ありえないことだ。ちなみに僕のLondonの自宅は、ここEASTCOTEから歩いて15分である。
 かくしてフィリップとは、プライベートでも、ビジネスでも、たがいに不可欠な間柄となったわけだ。そんなワケで、チャズとも頻繁に会うようになった。
 チャズは「大成功」して、一時期はUSにも暮らしたりしたそうだが、いまはUKに戻ってきている。

 そう、その「大成功」のいちばん直接的な原因が、今回紹介する、このアルバムのリード・トラックである“Ai No Corrida”なのだ。

 1980年、自身の初リーダー・アルバムに収められたのがチャズによるオリジナル・バージョン。そして、同曲を世界的に隅々まで知らしめたのが、その1年後の81年にこの曲を1曲めに据えてリリースされたQuicy JONES=クインシー・ジョーンズのリーダー作『The Dude』だったというワケだ。

 こんなことがあった。94年ごろ僕とマーティンは、あるプロダクションで“Ai No Corrida”をカバーすることになったのだ。
 アレンジにあたり、僕らは考えた。世間一般的には、当然このクインシーのカバーのほうが有名である。だが、チャズのオリジナルの素晴らしさをも良く識っているので、そのエッセンスも注入したい。そして「もちろん、レコーディング場所は、EASTCOTE Studiosだ!!」
 単音で「ペケペケ」いう(変な表現だが、この表現がピッタリなのだ)ギター・カッティングは、いかにもチャズ譲り・・・それを生かしたうえで、上モノのゴージャスなバッキング・ボーカル(コーラス)はクインシー譲りに・・・それが、僕とマーティンの導いたカバーだった。
 もちろん、チャズにも話し、聴いてもらった。

 さてと、それではクインシーの話しもしなければなるまいな。
 クインシーは旅先で、このチャズのオリジナルの“Ai No Corrida”を、はじめて耳にして「心を奪われた」という。この曲のメロディーの下世話さ、そしてなんと言っても、連呼される“Ai No Corrida”という「語呂」が持つフックに魅かれたはずだ。フック=Hookとは読んで字のごとく「引っかかり」で、「人々を誘惑する、引き付ける、関心をひくもの」という、いわゆるギョーカイ用語だ。
 クインシーは“Ai No”を、“I Know”と認識していたというハナシ、そして、それはオリジネーターのチャズとて当初はそう勘違いしていた(チャズではなくKenny YOUNGという著名なUSの作詞家による詞のため)というハナシは、わりと良く知られている。

 これからクインシーの話題に…というところで字数が尽きた。続きは2週間後の(後編)にて!

鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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