総合TOP > リコメンドインデックス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2008/04/16 バーブラ・ストライサンド
バーブラ・ストライサンドこそ、最後の大物だ。ちなみに、それほど大物すぎて!?…なのか、いまだ来日したことさえ無い。だから彼女のライブを経験した日本人は少ないのではないか。 しかし彼女はデビュー以来、頻繁ではないにしろ、TV、銀幕、レコードなどあらゆる分野の、しかも「超」一流メディアにコンスタントに登場してきた。そう、ナマの彼女を知らないわれわれ日本人でさえも、なんと50年間ちかくもの間、まさに「おがむように」それらを見聴きして続けてきたことになる。 エンタテイナーと称されるスターの中で、彼女ほど輝かしい経歴を誇るスターなど居ない。そればかりか、歌手としても、女優としても、各々の分野でさえ、いまだに彼女は常に「超えることのできない存在」であり続けている。リビング・レジェンド…とはよく言ったものだ。それだけではなく、さらには作曲家としても、映画監督としても、音楽プロデューサーとしても、映画プロデューサーとしても、彼女は常に米の(イコール世界の)第一線で活躍し続けている…という「驚くべき真実」を決して忘れてはならない。 彼女の才能について「事実を忠実に語れば語るほど」、ここに書ききれなくなってしまうゆえ、ま、今回は音楽に特化したバーブラ・ストライサンドというアーティストについて語ることにしよう。 「ポップス、およびジャズ・ボーカルの真髄、そして、そのソングライティングとアレンジ技術、これら全部いっぺんに学ぶには、どうしたら良いか?」 たとえ、こんなムリな質問を投げかけられたとしても、僕はひと言で即座に答えられる。 「バーブラ・ストライサンドを聴きなさい」と。 バーブラ・ストライサンドの存在こそが「一番すぐれた現代ポピュラー音楽そのもの」であり、バーブラ・ストライサンドの経歴こそ、イコール「その歴史」だからである。 何枚か発売されている彼女のライヴDVDを、堪能してみるのも良かろう。 ならば断言しても良い。音楽のあらゆる質の高さにかけて「バーブラ・ストライサンドのショーを凌ぐショーなど、この世に存在しない」と。 たとえ、彼女の生(ナマ)のショーを経験できないとしても、これらDVDを見聴きさえすれば、すぐに、その結論に導かれる。そして、気がつけば彼女の熱烈な信者になっているだろう。 プロローグから終演まで、まるで神が宿ったように完璧、ため息が出るほど絶品なる本人のパフォーマンスもさることながら、さらに、信じ難いほどのクオリティーを終始発揮する、バックのミュージシャン、オーケストラたち。目には見えないすべてのスタッフたちも間違いなくそうだろう、とさえ一気に信じてしまうほどだ。 「その歌手がフロントに立つや、バックが緊張で引き締まる」歌手など、もはや彼女ぐらいしか残っていない。それほどの大物など…ともにいまは亡き存在だが、米だとフランク・シナトラ、日本だと美空ひばりぐらいか…。 こういうフロント・シンガーは、バック・ミュージシャンや、われわれ作編曲家にとってのリトマス試験紙たりうる存在でもある。超一流だけが発する緊張感は、まさに両刃の剣。 試される者としての結果は「もし実力がなければ、緊張にビビって失敗、あとは田舎に帰るだけ」、もしくは「もし実力があれば、ほどよい緊張が最高の結果を生み、たちまち大出世」ということである。 さらに彼女にはシナトラ以上に優れている点さえもある。その恐ろしいほど豊かな作曲家としての才能、および技量だ。 君がもし作曲家を目指すならば“Evergreen(スター誕生のテーマ)”を聴きたまえ。彼女に作曲家としてもグラミー賞をあたえた審査員たちは決してバカじゃない。この曲からほとばしる、何たる才気!! 「これほどの曲が書ける」歌手、女優などいったいどこにいるというのだ!! そう、この世にバーブラしかいない。 それを知っているからこそ、オーケストラもバックバンドも彼女に最高の演奏を提供するのである。 いまの世の中、たんに大金を稼ぐだけのエンタテイナーならば「世界中、はいて捨てるほどいる」。しかし、バーブラほどの万能アーティストは少なくともポップス界には皆無、ジャズ、クラシック界にさえ希少だろう。これがバーブラを「優れたジャズ、クラシック・アーティストとも呼べる」ゆえんである。 昨年イル・ディーヴォを迎えて久しぶりにステージに登場した、御年64歳のバーブラはいつものことながら完璧。程好い緊張感に包まれたバックのあらゆるパフォーマンスも最高。 さて、現在ポップス最高峰と謳われる他の女神たち…今年50歳になるマドンナ!? はたまた39歳のセリーヌ・ディオン!? なんのなんの…14年後のマドンナが、25年後のセリーヌが、いまのバーブラと同い年になったとしても、正直あらゆる面において、とういてい今の彼女の足元にも及ばないであろう。いやはや、いつもながら書かねばならない真実…「不世出の天才に後継者はいない」…悲しいかな、それが現実だ。 鷺巣詩郎(さぎすしろう)