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総合TOP > リコメンドインデックス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2007/10/17 ジム・ホール

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
ジム・ホール 『ライヴ!』(HD 16bit/44.1kHz)
ジム・ホール  『ライヴ!』(HD 16bit/44.1kHz)
TRACK LIST
ジム・ホール
『ライヴ!』(HD 16bit/44.1kHz)
1976 Release
ダウンロード価格
アルバム\1,500(税込)
トラック\150(税込)
*印の曲はアルバム単位でのみダウンロードできます
アーティスト詳細へ
「Cool Beauty=クール・ビューティー」こそ本領

 「ジャズ・ギター」……ジャズ・ピアノに勝るとも劣らない、なんとも興味深い分野であろうか。
 
 ジョージ・ベンソンの項でも触れたが、1980年代以降、いわゆる「箱ギター」(フル・アコースティック、もしくはセミ・アコースティック)の新たなる弾き手が現れていないという由々しき現状が、逆に1950〜70年代というジャズ・ギターの黄金期を凝縮させ、より際立たせている。
 いまでも、ジャズ・ピアニスト、そう、コースティック・ピアノの新星は次々に現れているが、箱ギターの新星は、なんと「ここ四半世紀ぐらい」は現れていないのである。
 古くはジャンゴ・ラインハルトから、チャーリー・クリスチャン、ケニー・バレルバーニー・ケッセルウェス・モンゴメリー、ジム・ホール、タル・ファーロージョー・パスバーデン・パウエルジョージ・ベンソンまで…まあソリッド・ギターは弾くがフュージョン以降のギタリストたちとは一線を画すラリー・コリエルジョン・マクラフリンあたりまでがギリギリかな…このあたりが「箱ギター黄金期」の系譜に属するギタリストたちであろう。

  いまどき、エレキ・ギターを弾くだけで世間一般から不良の烙印を押されるようなことは有り得ないが、笑い話のようだが60年代までというのは、本当にそういう時代だったのだ。90年代のギャングスタ・ヒップホップが読んで字のごとく、そのように世間から疎まれたこともあったが、それとて「今は昔」である。こうした社会にまで多大なる影響を及ぼした数々の音楽におけるニュー・ウェイブも、いまではもはやクラシック、オールド・スクールと形容されている。そういう意味ではセミ・アコ(ースティック)とはいえ、電化増幅された「いわゆるエレキ・ギター」という新しい楽器を用いたジャズ・ギターという分野は、それまでのジャズとは打って変わった「まぎれもないニュー・ウェイブ」であったはず。ジェネレーションとしては3つも4つも前のハナシだが、かつては、とてつもないムーブメントだったのだ。
 
 今回とりあげるのは、そんな系譜のメンバー中ダントツで「いちばん渋い」ジャズ・ギタリスト、ジム・ホールである。
 「渋い」以外にも、ジム・ホールは「いぶし銀」「クール」「老練」「柔和」「優しさ」「哀愁」などという形容であらわされることが多いジャズ・ギターの名手中の名手。ジョー・パスに代表される「人間離れしたテクニシャン」系ではなく、いわゆる「音数は少ないが、音楽的には雄弁」という、玄人派である。
 僕も日米で何十回とライブを観た。そのうち大部分はギタリストと共に観ている。中には熱狂的なジム・ホールのファンも、そうではないギタリストも一緒だったが、彼等がジム・ホールの生のパフォーマンスに触れ、一様に驚いていたのが、その「運指(フィンガー・ポジション)の特異性」だった。
 たとえば“Billie's Bounce(ビリーズ・バウンス)”という、ビバップのジャズ・ブルース名曲がある。この曲をやったことのないジャズ・ミュージシャンなど絶対この世にいない、というようなスタンダードであり、ギタリストたちは「だいたい、このような運指で弾く」というのがあったが、ジム・ホールのポジションは、それらと著しく違っていたのだ。「あ〜、だから独特な響きなんだな」という発見がジム・ホールにはやたらに多い。そう、このあたりはジャズ・ギターの面白さの醍醐味だ。
 それは、たとえばB.B.キングフレディ・キングといった偉大なブルース・ギタリストたちが「撓(しな)る=弾力のある強固な」響きを追求するあまり、半音下げて(あらかじめ弦を均等に半音ぶん緩めて調弦しておく)チューニングするのにも似ている、そういうギター独特の面白さにも、つながっている。
 
 「Cool Beauty=クール・ビューティー」こそジム・ホールの本領であり、「地味」という形容が、これほど褒め言葉になるギタリストも他にはいないだろう。ロックで言うところのエリック・クラプトンの立ち居地(ポジション)にも似ているかもしれない。ビル・エヴァンスと共に完成した名盤『Undercurrent=アンダーカレント』(1962)、ロン・カーターと共に完成した名盤『Alone Together=アローン・トゥギャザー』(1972)、そして、まさしくジム・ホールが弾くために書かれたようクラシックのマスターピースを弾き大ヒットした『Concierto=アランフェス協奏曲』(1975)など、名盤も多いが、この『Live=ライヴ!』は、そうした名盤発表後の一番アブラの乗った時期のパフォーマンスが聴けるのである。
 
 蛇足かもしれないが興味ぶかいエピソードをひとつ。見るからも、そんな地味な好々爺の印象が強いジム・ホールではあるが、かの時代のジャズ・ミュージシャンの悪例にもれず、いわゆる「ヤク中」になり、更正施設に収監されてしまったこともある。さらに驚くべきことに、そのとき彼の担当医だった精神科医の女医さんを口説いて、なんと奥さんにしてしまったというのだから…いやはや外見にしてはなかなか「やり手」な好々爺(笑)…ま、じつは典型的なジャズ・ミュージシャンなのかもしれない。
 
 このあいだ紹介した渡辺貞夫のアルバムもそうだったが、このアルバムも高音質によるダウンロードが可能。熟練の名手ジム・ホールによるジャズ・ギターの素晴らしい機微が、よりいっそう浮き彫りになるであろう。
 これまた、「素晴らしいアーティスト」による、「素晴らしい音楽的内容」と「素晴らしい音質」を誇る、三拍子そろった名アルバムである。
 
鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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