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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2007/07/04 セロニアス・モンク

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
セロニアス・モンク 『The Very Best』
セロニアス・モンク  『The Very Best』
TRACK LIST
セロニアス・モンク 『The Very Best』
セロニアス・モンク
『The Very Best』
2005 Release
ダウンロード価格
アルバム\1,500(税込)
トラック 各\150(税込)
アーティスト詳細へ
セロニアス・モンクという稀有なるピアニスト、そしてスーパー・コンポーザー

 一度聴いたら、耳にこびりついて離れないのが、セロニアス・モンクのピアノである。
 これほど個性的、かつ魅力的なピアニストは他にいない。一度聴いたら忘れられない強烈な個性、それは彼独自のフレージングももちろんのこと、その奏でられる彼独特のメロディにも因る。

 いかなる音楽ジャンルを問わず、優秀なピアニストを指す形容詞には、必ずといってよいほど「流麗な」「華麗な」「力強い」とか「自由奔放な」など、どれかがあてはまろう。しかし、モンクのピアノは、そのどの形容にもあてはまらない。もちろん「流麗」「華麗」ではない。どちらかといえば「途切れるような」「引っかかるような」ピアノである。笑いごとじゃなく(笑)…本当にだ。「力強い」タッチもあるには、あるが、全体的には「ぼそぼそとした」「病的な」タッチと形容したほうが、より近いかもしれない。ま、見方によっては、モンクのスタイルは、それはそれは思い切り「自由奔放」なのかもしれないが、その何かに「とり憑かれた」ようなスタイルは、もちろん自由には弾いてはいるのだろうが、あまり奔放には聴こえないだろう。極端なたとえだが、何物かに囚(とら)われて、それこそ奴隷のようにピアノを弾かされているような、そんな悲痛な叫びが聞こえてきそうなのが、まさしくモンクのピアノの醸し出す雰囲気なのである。
 しかし、そのどれもが、とてつもなく魅力的でもあり、他のいかなるピアニストたちにも決して真似のできないモンクだけのスタイルだ。
 ひとたびモンクにハマれば誰もがモンクの虜(とりこ)だ。そう、囚(とら)われの身はモンクではなく我々リスナー。しかもリスナーだけでなく、歴代すべての共演者たちも誰もがみなモンクの虜になっていたに違いない。そういう、極めて中毒性の高い音楽家、いや芸術家なのかもしれない。

 そして、その特異たる魅力は、彼の書いたテーマ・メロディ、つまり、今やスタンダードと化した彼の楽曲群にも大いに顕著である。
 あえて作曲とは書かないのは、やはりメロディ自体が「途切れるようで」あり「引っかかるようで」あり「ぼそぼそとして」おり「病的で」あり「とり憑かれた」ようであるからで(笑)、作曲と言うよりも、彼のアドリブ・フレーズを紡いで、テーマ・メロディに無理やり転化させたかのような楽曲だからである。

 しかし、それらもまた一度聴いたら決して脳裏から離れることのない強力なメロディであり、やはりモンクという人は掛け値なしに「大天才」なのだ、と実感させられるものばかりである。
 “Blue Monk”、“Straight No Chaser”など、その骨頂。もちろんどちらもブルース進行の12小節ゆえ、同じメロのくり返しであり、一度聴いたら忘れられないのは当たり前のようだが、そんなことはない。モンクの場合、それら同じメロディを、いったい「どうしたら『これほど不自然に』弾けるのだろう?」と思わせるほど、いわば『ぎこちなく』弾くのである。この彼のスタイルこそが強力な個性なのである。
 だから、モンクの曲ほど難しいものはない。簡単なメロディのくり返しなのだが、どう譜面どおりに弾いても、モンクが弾いた同曲とは「似て非なる曲」にしかならないのだ。これは「たんなる音符の羅列と割り切って、違う曲として弾く」か、「自我を棄て、モンクになりきって、何から何まで完璧にコピーする」か、しかないのである。

 だが、モンクが残したのは、そうした断片メロディだけではない。彼は“ 'Round Midnight”という、まさしく20世紀最高のスタンダードの1曲を残している。この1曲だけでもモンクの名声は揺るぎのないものであるはず。まず、イントロからして強力!まさしく「モンク節」の炸裂。「途切れるような」「引っかかるような」「ぼそぼそとした」「病的な」メロディ、それでいて完璧なる導入メロディが提示され、その後のテーマに移ってからは、もう夢心地の連続。これほど非の打ちどころのない展開があろうか、という稀有なる才能のみが構築しうる「究極の美意識」に司(つかさど)られたメロディが最後まで続く。
 この世界遺産なみの楽曲については書きたいことが沢山あるので、きっと「セロニアス・モンク」リコメンド第2弾のときに、もっとゆったりと“ 'Round Midnight”バナシを書きたいので、それまでは保留としておこう。

 ちなみに、1984年にセロニアス・モンクのトリビュート・アルバムが発売されたのをご存知だろうか。
 かのUS人気番組「サタデイ・ナイト・ライブ」のプロデューサー、ハル・ウィルナーがプロデュースしたもので、モンクの楽曲のカバー集でもあるが、そのメンツがまたスゴかった。スティーブ・レイシーカーラ・ブレイギル・エヴァンス、エルヴィン・ジョーンズ、ボビー・マクファーリンなど先鋭的なジャズ・ミュージシャンにくわえ、ドナルド・フェイゲンドクター・ジョンジョー・ジャクソントッド・ラングレンピーター・フランプトン、ドン・ウォズなど、もう信じられないアーティストたちの競演。LP、CDともに、すでに廃盤となり世界中でプレミアとなっている超高額物件でもある。ま、近い将来まちがいなくライノ・レーベルあたりから復刻再発されることだろうから、その際は音楽好きならば是非とも手に入れてほしいマスト・アイテムである。

 とにかく、モンクについては書きたりない!! いずれにしても、また書くことにしよう。

鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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