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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2007/01/10 チャーリー・パーカー

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
チャーリー・パーカー 『Confirmation: The Best Of The Ver …』
チャーリー・パーカー 『Confirmation: The Best Of The Verve Years』
TRACK LIST

チャーリー・パーカー
『Confirmation: The Best Of The Verve Years』

1995 Release
ダウンロード価格
アルバム\2,400(税込)
トラック 各\150(税込)
アーティスト詳細へ
チャーリー・パーカーの偉大さ、ことあるごとに再確認が必要

 21世紀という感覚がごくあたり前となった2007年現在、いったいどれだけの人が「前世紀(20世紀)を代表する音楽家チャーリー・パーカー」のことをくわしく知っているだろうか? とても心配になってきたのが今回とりあげた大きな理由だ。百歩ゆずって、一般的にはチャーリー・パーカー像がどれほど滲(にじ)んできてはいても、まあ、仕方ないとしよう。たぶん一般的には、バッハより、モーツァルトより、プレスリーより、ビートルズより知られてないのは明らかだろうから…何となく名前は聞いたことのある「古典ジャズ・プレーヤー」ぐらいの印象かなぁ…かのクリント・イーストウッドが制作、監督した『Bird=バード(チャーリー・パーカーの愛称)』という伝記映画が話題になったのだって1988年、なにしろすでに20年近くも前のことなのだから。
  でも、もっと心配なのは、コアなリスナーについてだ。いったいれだけの音楽ファンが「チャーリー・パーカーがいかに偉大か」認識しているのだろう? そして、いったいどれだけのジャズ・ファンが「チャーリー・パーカーの具体的な功績」をしっかり理解しているのだろう?

 もう、こうなったら使命感に燃えて、今回はチャーリー・パーカー(以下C・パーカー)の偉大なる音楽的な功績を、ひとりでも多くのひとに向けて紹介しようじゃないか。
  Bebop=ビバップというモダン・ジャズの礎(いしずえ)となったムーヴメントを起こしたのがC・パーカー。また、そのムーヴメントを短期間のうちに強烈に推進させたのもC・パーカーだ。
  ビバップ(ビーバップともいう)とは、プレスリーの曲にもあるようにロック的な語彙として形容詞的に使われることがあるので誤解されがちだが、ジャズの一時代、文化を築いた「様式」名称である。
  わかりやすい例えとしてはクラシックにおけるバロックにとてもよく似ている。誤解を恐れずに定義すれば「今となっては古典だが、当時としてはそれまでの常識を覆すもの」とでもいおうか…。
  とにかく、現在あたり前のように思われている「テーマ→テーマの和音進行上で楽器がアドリブする→テーマ」に戻るという『モダン・ジャズ』の基本的様式と、その中央に位置する「テーマの和音進行上で楽器がアドリブする」という概念は、ビバップ前には無かったのである(もちろん似た形式ではあったが)。
  それまでジャズは、今のポップスとまったく同じく基本的には「唄モノ」であり、バンド自体や楽器が主役であっても「主旋律を奏でる」のが主たる目的の音楽だったのだ。アドリブらしきものはあっても、それは「メロディーを崩したもの」や「和音の構成音をアルペジオのように羅列、連続させた」もので、それ自体は決して主役にはなり得ず、あくまで主旋律に対する伴奏や対旋律でしかない、という考え方だった。乱暴にいえば、そもそも楽器演奏=バンド演奏とは、シンガーの伴奏、そして、オーディエンスにダンスをさせる=踊らせるための装置にしかすぎなかったのだ。

 しかし、ビバップにより立場は逆転する。楽器演奏者たちが「自由な創造力」を発揮してついに主役に登りつめた…それがビバップ・ムーヴメントだった。こうして俄然スポットライトが当たった楽器演奏者たちは、しのぎを削って「競争する」ようになり、ビバップ以降ミュージシャンのパフォーマンスは飛躍的に向上するのだ。それまでの数十年のゆったりとした歩みがウソのように、あらゆる楽器演奏者の演奏能力の進化運動が急速、急激に(具体的には、ほんの2〜3年のあいだで)起こったのである。もちろん常にその渦中、中心にいたのがC・パーカーだ。

 ただし、この「自由な創造力」を誤解釈してはいけない。
  たとえばWikipedia=ウィキペディア日本版のチャーリー・パーカーの項には【天才的なひらめきを伴ったそのアドリブは伝説化している】とある。決して間違いではないが、ビバップ以降のアドリブは自由闊達にひらめきだけでは絶対に出来うるものではない。どちらかといえば、自由なひらめきによる「アドリブらしきもの」が盛んだったのはビバップより前のジャズにおいてである。
  C・パーカーは、それまでの自由なひらめきだけの和音構成音アルペジオの羅列に確固たる理論、法則を植えつけたのだ。つまり超理論派。彼を天才と呼ぶことに異論はないが、自然発生的ひらめき(つまり何の脈絡もなく)でフレーズが天から偶発的に舞い降りてきたのでは決してない。
  それまでのジャズが、足し、引き、掛け、割る、といった単なる「算数」だったとしたら、もっともっと高度な公式を知らなければ成り立たない「数学」がビバップ以降のモダン・ジャズだ。C・パーカーはビバップで、ジャズという音楽を数段高いステージに引き上げたのである。
  彼が「天賦の才能=天才」をいかんなく発揮したのは、どちらかといえば、その理論で固めたアドリブに、とびきり「優雅で美しい」メロディアスな生命力を吹き込んだことだ。そう、ロマンチックな理論派…つまり、まるでモーツァルトのように成されたのである。

 「アドリブしながら、同時にコンチェルトをその場で作曲している」かのようなフレージング、いや、じっさい同時に作曲していたに違いない(笑)…これこそがC・パーカーならではの天才的な創造力だった。
  それゆえ、それまでのスタンダード曲を換骨奪胎して、彼の「アドリブそのものが、テーマとなってしまい、以後、楽曲化してしまった」作品がひじょうに多い。こんな音楽家は、やはり即興で多くの名曲を残したバッハ、そしてC・パーカーぐらいだ。

 まるでモーツァルト、バッハのよう、そう、ジャズという音楽をクラシック以上に数学的に進化させたC・パーカーは、クラシックにジャズの響きを持ち込んだドビッシーのようでもある。
  やはりC・パーカーとは100年にひとりの、つまり20世紀を代表する音楽家だった。
  偉大な音楽家を再確認するのは絶対に必要。C・パーカーの名曲“Confirmation”=確認ではないが、ことあるごとに緻密な再確認をしなければ。
  このベスト盤を出発点として、今後C・パーカーの作品を大いに取り上げ、その功績を熱く語り、詳しく書いていきたい。

鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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