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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2006/11/15 シカゴ

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
シカゴ 『Love Songs』
シカゴ 『Love Songs』
TRACK LIST
シカゴ
『Love Songs』
2005 Release
ダウンロード価格
アルバム\1,900(税込)
トラック 各\150(税込)
アーティスト詳細へ
わが最愛のシカゴ

 シカゴは僕が世界一好きな「グループ」だ。1969年のデビュー以来ずっと、彼等をオンタイムで追い続けている。
 1971年の初来日公演を観て以来、日本公演、US公演など、ライヴも数十回は観続けている。彼等の曲を採譜したり演奏したりしたことも、また1970年から10年近く(つまりアマチュア時代中心に)は続けたので、今でも諳んじて演奏できる曲は多い。彼等のウリであるあらゆる曲のホーン・セクションのリフなども、もう五線紙になってアタマにすぐに浮かんでくるぐらいだ。
 かのデヴィット・フォスターが初めてシカゴのプロデュースを引き受けたときも、デヴィットも代表曲のリフをすべて本人たちの前で弾いてみせメンバー全員が驚嘆したということだが、いわゆるアレンジャー的な性格を持ったミュージシャンにとって、シカゴのレパートリーやホーン・リフは、まさしく『キラー・リフ』の宝庫であることは間違いない。
 ふつうロック・グループならギター・リフが大部分、よしんばギターでないにせよ、ピアノやベースなどの特定楽器のリフが、同業者もアマチュア・ミュージシャン、リスナーたち、そう、あらゆるオーディエンスのシンパシーを呼ぶものだが、シカゴの場合はバンド・アレンジ全体が『キラー・リフ』となっていることが多い。

 僕としてはシカゴについては書きたいことは山ほどある。だが、なかなか整理もつかないので、今回はグループの司令塔的な存在でもあり、さらに、とてつもない才能の持ち主でもあるトロンボニストのジェームズ・パンコウについて書くことにしよう。以下は『37年間シカゴをささえ続ける、ジェームズ・パンコウの驚異的な才能』というタイトルで、彼等のデビュー・アルバム“Chicago Transit Autholity”を取り上げ、僕が某音楽専門誌に寄稿した文章である。まずはお読みいただきたい。

 EW&Fとの全米競演ツアーのDVDを観て、その偉大さを再認識したのがシカゴ。このきわめて衝撃的なデビュー・アルバムは、37年という長き歴史上、唯一異なるグループ名でクレジットされ(オリジナル盤のみタイトルと同名)、あの世界一有名なロゴも唯一使われていないが、EW&Fブレッカー兄弟、ジェリー・ヘイ(シーウインド)など、ホーン・セクションを素材とした世界中すべてのプロダクションにとてつもなく大きな影響をあたえた、まごうことなきシカゴのものである。
 当時、1曲‘Introduction’を初めて聴いたときの立ち直れないほどのショックをいまだに鮮明に覚えている。とんでもない所へと目まぐるしく飛んでいくアレンジの妙と、それらを見事に帰結させてしまう強引な快感、この血わき肉おどる躍動感はいったい何だろう?と・・・。
 BS&Tはジャズ、ロック、ソウル、ブルーズなど、あらゆる明解な魅力に充ちていたが、シカゴを支配していたのはそれらどれにも当てはまらない、まさに未知の魅力だった。
 BS&Tのイノヴェーションの大半はフレッド・リプシャスのアレンジによると第一回に書いたが、シカゴもまたトロンボニストであり類稀(たぐいまれ)なる才能のアレンジャーでもあるジェームズ・パンコウが頭脳。
 パンコウをこよなく愛し尊敬するジェリー・ヘイに招かれて吹いたTOTOの代表曲‘Rosana’を聴けば、パンコウの吹くトロンボーンがいかにパンコウ以外には真似できないかということを痛感する。シカゴのホーン・アレンジは徹底して「擬似4管」。パンコウが高音域(時にトランペットの上を吹く!)と重低音域を二人ぶん録音して、他の2管と合わせ4管アンサンブルにするのがシカゴ・スタイルだ。
 皮肉にもメンバー全員が成熟したミュージシャンだったゆえBS&Tは短命だったが、パンコウ以外は未熟だったシカゴのほうがパンコウの手足に徹したことにより、解散〜再結成や活動休止などをまったく経ずに、これだけ驚異的な長寿バンドとなったわけだ。7〜8人編成で4人ものオリジナルメンバーが残っており、それが3人のホーン・メンバーと、ソングライターのロバート・ラムである点が、バンドの核とアレンジの重要性を証明している。信じがたいが「37年ぶんのアルバム収録曲すべてがライヴのレパートリー」という強力無比な財産を持つ、こんなアーティストは(いつもの結び文句ながら)もう二度と現れないだろう。

 そう、シカゴとパンコウは37年たった今でも健在であり、かつ、その音楽的才能は37年前とまったく同じ輝き放っている。

 こちらも、「(隔)週間 鷺巣詩郎」の慣用句だが、これほどのグループと才能なれど、まだシカゴは過小評価されている、と僕は考える。
 この“Love Songs”というアルバム、あまりにベタなタイトルだが、内容は彼等の栄光の37年間と、珠玉の音楽が詰まっている「コンピを超越したコンピ」である。世にコンピやベスト盤やらは数あれど羅列しただけのものが大部分であり、しかもレコードとしてどれだけ優れていても、さらにそれら全曲レパートリーとしてオリジナル・アーティストがパフォーマンスできうるコンピなんて、シカゴぐらいのものだ。これは、どう考えても『奇跡』としか言いようがない。

 収録曲中いちばん古いのが69年のデビュー盤に収められている‘Beginings’だが、かのビル・クリントンが、世界の頂点にのぼり詰める90年代の大統領選挙の時に、この曲をキャンペーン・ソングとして大々的に採用して、全米を駆けめぐったことがあった。当時なんともセンスのいい大統領候補だなと思っていたら、なんとクリントン自身サックス・プレーヤーだと後で知った。デヴィットの逸話といい、やはりミュージシャンたちから愛される最後のバンドなんだな、と思った。

 また機会をみて、この場でもシカゴについてはぜひ書きつづけていきたい。なぜなら彼等はまだまだ現役なのだから。この世界一好きなグループのライヴを、僕はまだまだ観つづけることができるのだ。ああ、なんというしあわせだろう。

鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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