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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2006/10/04 クインシー・ジョーンズ

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
クインシー・ジョーンズ 『スマックウォーター・ジャック』
クインシー・ジョーンズ 『スマックウォーター・ジャック』
TRACK LIST
クインシー・ジョーンズ
『スマックウォーター・ジャック』
1971 Release
ダウンロード価格
アルバム\1,200(税込)
トラック 各\150(税込)
アーティスト詳細へ
クインシーは「管楽器を鳴らすことにかけては天才」ということが一番よくわかるアルバム

 クインシー・ジョーンズのアルバムも2枚目の紹介となった。

 このアルバムの楽曲群も中学生の頃かなり演奏した思い出がある。当時ちょうど日本のTVでもやっていた米人気TVシリーズ『鬼警部アイアンサイド』(やっぱ当時の日本語タイトルのつけ方ってホント凄いですね〜)は、とうぜん日本でも人気番組だった。とくに主役のアイアンサイドを演じたレイモンド・バーを吹替えていた若山弦蔵の日本人ばなれした超低音の声が、クインシーの最先端BGMと相まって、相当なカッコ良さだった。  LondonでもParisでも東京でも、たまにこの番組の再放送を見かけるが、今聴いても充分このシリーズのBGMのクオリティーは突き抜けているぐらいだから、当時中学生だった僕がかなりヤラれてたことは間違いない。そうそう、クインシーの自伝を読むと、クインシーがこのシリーズに注いだ情熱と労力は並々ならぬもので、仕事仲間から「TVシリーズの音楽ごときに、そんなに入れ込んでどうするんだよ。もうちょっとチカラを加減したほうが良いんじゃないか?」とたしなめられたともいう・・・・・・さもありなん。クインシーが一音一音に込めたものは聴くほうにもひしひしと伝わっていたと思う。

 あとハナシはそれるが、ここ数作のクインシーのリーダー・アルバムに(とは言っても、最新アルバムがすでに10年以上前になってしまったが)必ず「語り手」としてバリー・ホワイトが登場したものだが、僕はバリーの声を聴く、とどうしても『アイアンサイド』の若山弦蔵を思い出したものだ。「クインシーの音楽に合う超低音ヴォイス」ってことで、僕の中では共通の声なのかもしれない。バリー・ホワイトも城達也も亡き今となっては、やっぱ若山弦蔵と僕のアルバムで喋り唄うイアン・ピッターが僕の考える超低音の象徴ふたりなのだが・・・・・・

 で、この『スマックウォーター・ジャック』の中で、僕がいちばん最初に演奏したのが“Hikky Burr”。ファンキーな管楽器が栄える名曲だ。“Soul Bossa”からクインシー好きになったファンもとても多いと察するが、そんな方にもオススメできる。中学生だった僕らは手分けして採譜して、この曲に挑戦したものだ。  ユニゾンで「軽い部分」と「重い部分」があっって、同じテンポなのに「大きく違った聴こえかたをする」ことが新鮮、かつ生まれて初めての経験だったことを良く覚えている。これが黒人音楽を演奏するうえでは欠かすことのできない「いちばん重要な要素」ということを肌で感じることができた教則曲でもあった。また「違った聴こえかたをさせる」ためには「違った演奏をしなければならない」ということも、この曲を演奏することで理解できた。中学生の僕にとっては大きな大きな収穫だった。

 そして、なんと言っても“Ironside”『鬼警部アイアンサイド』のテーマである。僕らより少し下のジェネレーションにとって、この曲は「ウィークエンダー」のパネラーが事件紹介をするときのテーマとしてお馴染みで、泉ピン子や桂朝丸(ざこば)の顔が思い浮かぶんだろうな〜、ギャップありすぎだって(笑)  あのジングルのように使われた「キメ」のフレーズを支配しているのは「長三和音の上に、さらにその半音下の長三和音を構築した」和音=たとえばCの長三和音(C・E・G)の上にBの長三和音(B・D#・F#)を乗せた、六声の和音で、それをパラレルに平行移動させているのだが、当時これは多くの同業者たちにもかなり大きな衝撃をあたえたものだった。米では、というか世界のジャズ屋の間では、この和音を「Ironside和音」と呼ぶようになってしまったぐらいだから。

 これを管楽器全員で「ビャッ(こんな擬音がピッタリ)」と吹いたら、そりゃカッコいいですよ、快感ですよ!

 とにかく、このクインシー・ジョーンズという男は優秀なトランペット奏者だっただけあって、なにより「管楽器を熟知したアレンジャー」なのである。ファンキーな管楽器が栄える“Hikky Burr”しかり、アヴァンギャルドな和音がジングルで炸裂する“Ironside”しかり。
 それを証明する、もうひとつの「大きな要素」も、この“Ironside”という曲に含まれている。それはヒューバート・ロウズのフルートが奏でるテーマがフルート最低音の「C」から始まっていることだ。管楽器ほど「音域によって、まったく違う楽器になってしまう」楽器はない。よほどのアレンジャーでも管楽器の音域と、その「鳴り」を熟知した者はひじょうに少ない。“Ironside”をAmに仕立てて、ヒューバートに最低音のCからG→E→オクターヴ上のCと跳躍させ、Aの音に落ち着かせる、この「音域管理」たるや完璧!!フルートをいちばん美しく響かせている。ドビッシーやラヴェルがフルートの音域をやはり完璧に演出して、クラシック音楽に革命をもたらしたのにも良く似て、もう演奏者としても冥利につきるフレージングなのだ。
 そうそう、そういえばクインシーが仕事を棄て、わざわざParisに暮らし教えを仰いだのはナディア・ブーランジェというクラシック界の大御所女史。ドビッシーやラヴェルとも大いに関連性はあろうかというものだ

鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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