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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2006/09/06 スティーヴィー・ワンダー(2)

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
スティーヴィー・ワンダー 『Fulfillingness’ First Finale』
スティーヴィー・ワンダー『Fulfillingness’ First Finale』
TRACK LIST
スティーヴィー・ワンダー 『Fulfillingness’ First Finale』
1974 Release
ダウンロード価格
アルバム\1,500(税込)
トラック 各\150(税込)
スティーヴィー・ワンダー特集ページへ
アーティスト詳細へ
愛するがあまり、完璧なあまり、改編できない名曲群

またもやスティーヴィーの登場。以前『Talking Book』を紹介したときに「いかにスティーヴィー・ワンダーという音楽家が偉大であるか」、そして「スティーヴィー・ワンダーという名盤の海を泳ぐ、その意義」についても、さんざん書いたつもりだ。だから、もう今回はそういう部分にはあえて触れまい。まったく違った角度から、ハナシをしたいのだが・・・・・そうだ、自分がスティーヴィーの楽曲を演ったときのことを書こうではないか。

 僕はこの『Fulfillingness’ First Finale』に収められている名曲“Bird Of Beauty”という曲を2度カヴァーしている。1度目は1978年、ザ・スクエア(現T-SQUARE)で。2度目は1996年、MASHで。

 1978年といえば30年近くも前になるのか・・・・・・当時「アレンジャー、セカンド・キーボーディスト」の役割で僕がザ・スクエアにお手伝い的に参加していたのは、なによりデビュー・アルバム制作、レコーディングというプロへの扉をひらく一大事に際してという理由が大きかった。スクエアのレパートリーの大部分はリーダーの安藤まさひろのオリジナルで、それがまたグループの売りであったのは今と変わらない。ただし、1枚のデビュー「アルバム」として考えた場合「ザ・スクエアというグループらしく料理した」カヴァー曲が必要でないか?と考えたのである。こういうのは普通、オリジナルだけで固めたいグループの意向に待ったをかけ、レコード会社のプロデューサーなりA&Rがグループに持ちかけるものだが、当時のザ・スクエアにはマイケル河合という非常にプロデューサー的に優れた役割を担ったドラマーがいたので、メンバー内でどんな楽曲をカヴァーするか?ミーティングをした後、自ら決定してレコーディングしたのが2曲の収録候補曲、カーペンターズ“愛は夢の中に(邦題)”とスティーヴィーの“Bird Of Beauty”だった。
 結果“愛は〜”のほうがデビュー・アルバムに収録され、“Bird Of Beauty”はお蔵入りとなった。(が、そのずっと後に、なにかのボーナス・トラックとして陽の目はみたはず)理由はカンタン。"愛は〜"のほうは、僕がまったく原曲から離れたかなり大胆なアレンジをしたので、逆にザ・スクエアらしさが出たのに対し、“Bird Of Beauty”のはうは、メンバーが皆スティーヴィーを愛するがあまり、どう転んでも「なかなかオリジナルから離れることができなかった」からなのである。

 それから15年たち、僕がParisでクラブを経営してた93〜94年、店でとくに良く回ってたのがインコグニートによるスティーヴィーのカヴァー“Don't You Worry 'Bout The Things”だ。「あ〜けっこうオリジナルに忠実だなあ」とは思ったが、じつはこのときはザ・スクエアで“Bird Of Beauty”をやったことなど全く忘れていたのだ。すごく好きなトラックだったが、だからスティーヴィーのカヴァーということではそのぐらいしか感じなかったのだ。ところが、そのすこし後に良く回ったジョディシーによるスティーヴィーのカヴァー“Lately”を聴くにおよび、これもまた、あまりに「オリジナルに忠実」だったので、その15年前のザ・スクエアのことを鮮明に思い出したのだ。
 そして、その記憶に追うちをかけたのが、その2年後95〜96年に爆発的に流行ったクーリオによるスティーヴィーのカヴァー“Gangster Paradise”である。もちろん、その換骨奪胎ぶりにも目は見張ったが、ヴォーカル・トラックとしてはオリジナル“Pastime Paradise”そのものではないか。
 そう、皆スティーヴィーを愛するあまり、ステーヴィーのカヴァーはいじくりヅライんだ、なんだ皆おなじじゃん・・・・・・これが結論である。

 その96年に制作を始めたのが、マーティン・ラッセルズと僕のグループ、MASHのファースト・アルバム『Black Beauty』だ。
 やはり僕とマーティンのオリジナルの中に1曲だけカヴァーを入れようということになり、迷わず僕はマーティンに提案したのだった。
 「“Bird Of Beauty”をやろうよ! マーティン」
 英国白人でありながら米ビルボードR&BチャートNo1の称号をもつ、それほどの黒人音楽ラヴァーのマーティンが断ろうはずがない。
 中学時代「学校で盗まれるのがイヤ」と、スティーヴィーのレコードすべてに自分の名前を書いていたオトコである。名前を書いていたのはスティーヴィーのレコードのみで、しかも2006年現在それらはまだMartin D. LASCELLESと名前が書いたままである(笑)

 「ポルトガル語も出てくるしさ、ヘイゼル(フェルナンデス)にヴォーカル頼もうか?」
 「イイね〜ヘイゼル、大賛成! ヘイゼルにしよっ!!」

 アレンジの打合せなどする必要もない。もちろんMASHらしさは出したが、もう、しめし合わせたようにオリジナルに忠実。これがスティーヴィー・カヴァーの流儀だ。
 僕にとっては30年近くぶりの再戦であり、このトラックはなんとマーティンと僕の満場一致でアルバム1曲目となった。
 しかも、シングル・カットされてLondonで人気のJazz FM(現Smooth FM)やChoice FMでも良く回った。日本ではJ-Waveでも良く回りチャートにも入った。そのヴァイナル・レコードは10年たった現在でも、少量だが定期的に注文が入る。

 かように僕にとって思い出ぶかい楽曲が“Bird Of Beauty”なのである。

 あ、最後に一言だけになってしまったが、当然このオリジナル・アルバム『Fulfillingness’ First Finale』は全曲すみずみまで、まさに0.1秒も聴き逃せない、後世に残すべき偉大な「教科書」だ。
 そう、これまた、いつもの格言・・・「これはもう義務教育でしょ」。

鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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