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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2006/05/03 チャカ・カーン

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
チャカ・カーン『Naughty』
Chaka Khan 『Naughty』
TRACK LIST
Chaka Khan
『Naughty』
1980 Release
ダウンロード価格
トラック 各\150(税込)
*印の曲は現在OnGenでは配信されておりません
チャカ・カーン特集ページへ
アーティスト詳細へ
まさしくチャカ・カーンという名の「革命」

アルバムの一曲目から「Clouds」で大爆発するこのアルバム、なんのかんの云ってもやはりこの曲は強烈すぎる。ノーティーといえば「Clouds」、とゆうのが一般的な認識ですな。しかしリアル・タイムで聴いていた私が今になって思うのは、この「Clouds」に関してはむしろ、後年にハウス・ミュージックが浸透してゆく過程で、ガラージ・クラシックスとして再評価された事の方が重要なんじゃないかなとゆう事。
 ハウス・ミュージックのルーツとしてパラダイス・ガラージの存在が注目されたのは、ガラージがクローズした数年後からで、これはハウスにヤラれた世界中のやDJが、自らの探求心と知識欲を満たすために、限られた情報の中から必死にその生い立ちと歴史の真実を探り出そうとする動きだった。ことにここ日本では、ヒップホップのDJやトラック・メイカーがネタを探してレコ屋のストックを掘るのと同じ感覚で、ハウサーは皆、ガラージ・クラシックス及び、そうだとされるものを手に入れるために日々両手を真っ黒にしていたのだった。
 ホントに情報が少なかった。故にその情報には凄い価値や意義があった。インター・ネットが普及した今となっては考えられないほど、当時は情報に対する枯渇感もあったのだ。因みに80年代末から90年代中頃にかけて、ガラージ関連の最も信頼できる情報源として重宝していたのは、アドリブに連載されていたニューヨーク在住のミッシーナさんのNYホット・ラインだった。他はリミックス等での若野ラヴィンさんとかヒサ・イシオカさんの文章かな。あ、あとミュージック・マガジンでの今野雄二さんのハウス関連記事とかも夢中になって読んだし。今は無きバッド・ニュースでの本根誠さんのレビューも素晴らしかった。
 結局、送り手も受け手も同じレベルで情報を共有して同じ目線で音楽を楽しめた、とても幸せな時代だったのかも知れない。

 閑話休題。
 1980年にアリフ・マーディンのプロデュースでリリースされた本作。現在でも簡単に手に入れることが出来るし、リマスタリングされたCDの音はホントにホントに素晴らしい。
 「Clouds」冒頭の雷のSE(サウンド・エフェクト)からイントロのストリングスとピアノ、ベース、そしてドラムに導かれて文字通り爆裂するチャカのコーラス・・・。洗練の極みとも云えるバックの演奏と、実に多彩な表情をみせるヴォーカルが織りなす4分半の音の塊は、奇跡のようなミックスとも相まって、まさに芸術と称するに相応しい音楽作品だ。
 そしてアシュフォード&シンプソン作となるこの曲は、歌詞がまた完璧に素晴らしいのだ。並の小説家が裸足で逃げ出すほど、その詩はシンプルで美しく、力強くそしてほろ苦い。人生の示唆に満ちている、そう思わせるほどチャカの歌唱も神がかっている。

 2曲目「Get Ready, Get Set」、3曲目「Move Me No Mountain」も実に洗練されていて全く歳を取らないサウンドだが、実はこのアルバム、4曲目の「Nothing's Gonna Take You Away」とそれにノンストップ・メドレーで続く5曲目の「So Naughty」が即死レベルでかっこいい。間違いなくアルバムのハイライトであり黒人音楽好きなら全員即昇天ですノーダウト。前者のフック・ラインは永遠だし、後者のクライマックスで繰り返されるホーンとコーラスは問答無用のかっこよさ。これ、本気で良すぎて今聴いても死にます。
 6曲目「Too Much Love」のギター・リフも全然古くならないし、7曲目「All Night's All Right」のゴージャスなファンキーさも捨てがたい。8曲目は見事なバンド・アンサンブルと、どきりとするボーカル・アレンジが何度聴いても新鮮だし、9曲目の傑作「Papillon(aka Hot Butterfly)」の素晴らしさは云うに及ばず、ラスト10曲目の「Our Love's In Danger」(これまたアシュフォード&シンプソン作)で見事に宇宙の彼方へと連れ去られてしまうのでした。

 なーんだ、結局全曲マストなんじゃないすかこれ。いやいやまじで。

Text by Ken "Sugarkane" Sato

 はい、鷺巣詩郎(さぎすしろう)です。リコメンド・タイトルは僕がつけさせていただきました、研さん。
 ホント、もう問答無用で「聴くっきゃない!」のが、このアルバムです。しかも、いつもながら完璧な研さんの文章・・・こちらも問答無用。僕などが付け加えることはありませんが、本当にひとつだけ、つけくわえさせてください。

 「チャカはあまりに過小評価されている」

 これだけは声を大にして叫び続けたいことです。
 「もし、彼女が居なかったら・・・」と思うと、ぞっとすることがよくあります。そう、もしチャカ・カーンがこの世に出なければ、現在活躍中の彼女より若い女性シンガー達のうち、大げさでもなんでもなく、8割は存在しないでしょう。
 もっと細かく言えば「たとえ存在するとしても、間違いなく唱法はまったく違っている」ということ。チャカが後進の女性シンガーに残した「チャカの遺伝子」の偉大さ、そして、それがいかにエッセンシャルであるかは、近い将来かならずやMusicology的な論文になる、と僕は思っています。
 いずれにしたも、これほど偉大で尊敬に値するヴォーカリストはいません。
 歌唱というパフォーマンスを、自らの登場前と登場後で一変させてしまった・・・そう、まさしくチャカ・カーンという名の「革命」なのです。

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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