鷺巣詩郎さん2005年のアルバム“SHIRO'S SONGBOOK ver.7.0”をリリースするにあたって、何回か行われた打ち合わせの席上、幾つか出たキーワードの中 「スムース・ジャズ」という言葉が頻繁に使われた。それ以前にも2003年に、鷺巣さんのトータル・プロデュースでリリースしたMAYA(世界初のHipHop/R&Bヴァイオリニストとして、ミリ・ベン・アリに先がける事2年!)の時点で、今の時代のR&B/ヒップホップに於いてスムース・ジャズ的なフレイヴァーが如何に重要かという確認作業が行われ、その結果、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」をR. ケリー風のバック・トラックで演奏するという、極めてユニークな楽曲「Slow Dancin' from Ravel's Pavane pour une infante defunte」が生まれたのだった。
たとえばジャネットの「Any
Time, Any Place(R. Kelly Remix)」で良く知られる、R. ケリー・サウンドの代名詞ともいえるあの音にも、スムース・ジャズの匂いはとても濃厚だ。加えてほぼ同時期にリリースされたケリー自身のアルバム『12 Play』からのシングルとなった「Your Body's Callin'」のインスト・バージョンには“Jazz Instrumental”とゆう副題が付いていた。(余談だがこのバージョン、米国のアナログ12インチ・シングル等でしか聴くことの出来ないものだが、私がJIVE Recordsの日本でのA&Rをしていた時に出した『Summer Madness』とゆうタイトルのコンピレーションCDに、ノン・ストップ・ミックスという形でだが、収録に成功している)
前置きとゆうにはあまりにも話しが長くなってしまった。今回のピック・アップはFOURPLAY。4人のスター・ミュージシャンによるドリーム・ティームである。少し前のこと、月に1、2度だが私が廻しているイベントで、彼らのファースト・アルバムに収録されている「Wish You Were Here」をでかい音で鳴らしてみたことがある。およそR&Bやヒップホップのパーティーでは耳にすることのないタイプの音なのだろうが、打ち鳴らされるリム・ショットはまるでディアンジェロのようにフロアに響いた。多分に私は酩酊していたのだろう。だがこの美しい曲を随分久しぶりに、しかしそれまで経験しなかった大音量で聴いたときに、なにやらこの音楽が持つ根っこのところと繋がってしまったのである。気が付けば周りのオトナの遊び人連中も随分と気持ちよさげに体を揺らしている。生身の人間が演奏する音楽の持つゆらぎに、同じ人間のそれが共鳴している。続けて私は鷺巣さんの「Love Changes」をプレイする。そこに流れる空気は湿度を増してゆき、より官能的な匂いを放つのだった。至福の瞬間である。優れたミュージシャンが紡ぐ音は、ジャンルの違いや洋の東西を問わず、みな真の普遍性を帯びている。