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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > (隔)週刊 鷺巣詩郎 > 2006/01/18 ビースティ・ボーイズ

(隔)週刊 鷺巣詩郎  鷺巣詩郎の選ぶおすすめの1枚
今回のPICK UP ビースティ・ボーイズ『ライセンス・トゥ・イル』
ビースティ・ボーイズ『ライセンス・トゥ・イル』
TRACK LIST
The Beastie Boys
『Licensed To Ill』
1986 Release
ダウンロード価格
アルバム \1,050 (税込)
トラック 各\150(税込)
01. Rhymin & Stealin  >>試聴
02. The New Style  >>試聴
03. She's Crafty  >>試聴
04. Posse In Effect  >>試聴
05. Slow Ride  >>試聴
06. Girls  >>試聴
07. Fight For Your Right  >>試聴
08. No Sleep Till Brooklyn  >>試聴
09. Paul Revere  >>試聴
10. Hold It Now, Hit It  >>試聴
11. Brass Monkey  >>試聴
12. Slow And Low  >>試聴
13. Time To Get Ill   >>試聴
アーティスト詳細へ
アーティスト特集
ザ・ビースティ・ボーイズ

 ふと思い付いた。いまやVHSテープで映画を見る人なんて殆ど居ないだろうから、昔レンタル・ビデオでしか見れなかったヒップホップ・ムービーとか、もしかすると投げ売りれてるんじゃなかろうかと。で、行ってみたのが近所のセル・ビデオ屋。おやじが一人で店番してる、在庫の半分以上はエロDVDだが、そのカモフラージュで入り口にフツーの映画のVHSが大量に陳列されてる、いい感じで地元に根をおろしている店だ。ちなみにBGMはJ-Wave。男の欲望が澱のように溜まった黴臭い店内の空気に、その音はとても具合よく馴染んでいた。

 で、早速そのカモフラージュを物色してると、なんだかレコ屋でアナログ掘ってるみたいな気分になってきた。ビデオの背表紙を追いかける目の動きが妙にリズミカルになったりして、おまけに店の主人はおろか私以外の人間にはもう何年間も視界にすら入らなかったであろうパッケージに触ると、あっとゆうまに手が真っ黒けになる。まさに気分はレコ屋のエサ箱漁ってるかんじ。で、ほどなくしてお目当てのお宝ムービーを発見する。こんな簡単に出てきていーのかよってぐらいあっさりと『クラッシュ・グルーブ』を手に入れた。それ以外にも『トレスパス』なんてのが出てきたが、これはまあ次回にとっておこうかなと。間違い無く近所じゃ私以外に買う人間なんていないだろうし。

 ランDMC、ファット・ボーイズの他、デフ・ジャムのリック・ルービン本人が出演して達者な演技を見せていたり、カーティス・ブロウがものすごいスター扱いで出てたり、ちょい役だけどまだやせっぽちのLLクールJや、ビースティ・ボーイズ、さらにはなんとニュー・エディションまで出てるとゆう、まさに80年代のNYの匂いがぷんぷんの作品であり、初期ヒップホップの熱気をかなりリアルに映画化しつつエンタメ作品としてもなんとかまとまっているなぁ、とゆうのが20年ぶりぐらいに見た『クラッシュ・グルーブ』の印象。しかしヒロインがシーラ・Eとゆうのが、ザ・芸能界だよなぁ。

 ビースティーズの出演シーンは、オーディションにやってきた新人とゆう設定で、「She's On It」をちらっと演奏してる。で、これがまた今見てもえらいかっこいい。パンクとヒップホップのミクスチャーって、音だけでは無くてメンタリティーの部分でも物凄い必然性があって生まれたものだとゆうことを、改めて痛感した。で、ホントに久しぶりに彼等のデビュー作『Licensed To Ill』(1986年!)を引っぱり出して聴きなおしたのだが、やはり彼等の本質は紛れも無くハードコア・パンクだった。「Rhymin & Stealin」、「Fight For Your Right」、「No Sleep Till Brooklyn」といったヘヴィ・メタルとのミクスチャーは、当時のランDMCの大ヒット「Walk This Way」に呼応して制作された、マーケティング戦略に則したものだろう。この辺は制作総指揮のリック・ルービンの才気が迸り出た、時代が選んだ才能のみが造り出す事のできる、生まれるべくして生まれた新しい音楽だったのだ。『クラッシュ・グルーブ』はセミ・ドキュメンタリー映画としても、その価値は高かった。

 あれからもう20年も経ってしまった。ビースティーズの3人は、もうじーさんの様な外見だ。でも相変わらずの音楽を作り続けている。歳をとった自分達を俯瞰して面白がっている様に思える。同じ様に歳をとってしまった私も、いまだに毎日、新しい音楽との出会いと新しい音楽制作とを模索している。私はヒップホップや黒人音楽に多大な影響を受け、送り手の側にまわってからというもの、手に入れる事のできたものと、手が届かないでいるものとの距離をいつも考えてしまう。そして行動の中心にはいつも品質の二文字が在る。やっかいな話なのだが、どうしてもこれだけは妥協できないし、妥協すべき理由は理解するがそのように行動できない星廻りらしい。

 ここ数年の間に日本のラッパーやR&Bシンガーのライミングや曲づくりは確実に成長し、それに比例してマーケットの規模も大きく変わった。何と云っても自分達の言葉で、同胞の心をゆさぶるヒットが生まれる様になったのだから。故に私は懐古趣味に走るのでは無く、譲れない部分を妥協するのでも無く、新しい才能や日の当たらない技能から、某かの形を造り出そうと思う。

Text by Ken "Sugarkane" Sato


 ビースティーズが登場した時にゃー「コイツら、遊びながら金儲けやがって…」って、かなりの同業者が舌打ちながら、そう思ったことだろう(笑)。ま、しかし考えてみりゃポップスの歴史なんて同じことのくり返し。エルヴィスが登場したときだって同業者は皆そう思ったろうに。  そしてビースティーズを舌打ちした同業者アーティストだって、きっと登場したときは誰かにそう言われてたに違いない。髪の毛が「耳をほんの少し覆った」だけで不良の烙印をおされた時代だって確かにあったのだ。

 いかにスポーツがエンタテインメント化しようが、音楽がスポーツと圧倒的に違うのは「100メートルを一番早く走れるヤツ」が勝つのではなく、「皆に好かれるヤツ」が勝利を収める、という点である。  それが商業音楽=ポップスの極みなのだ。パンクには叶わなかったことだが、21世紀のいま、ヒップホップは「すでにポップスとして世界的な認知を得た」。  そして将来、ポップス史が学術的に語られるとき(笑っちゃうが、必ずやそうなる)も、ヒップホップの黎明期を飾るアーティストとして、ランDMC、ビースティーズが末永く後世に名を残す確立は、世界中で天下を取ってもはや怖いものナシの50セント以上に高いかもしれない。  マルコム・マクラレンコステロのほうが業界ウケは良いだろうし、インテリ然として「遊びながら」との陰口も叩かれないアーティストだろうが、歴史に名を残すのがビースティーズ…というのがサイコーに面白い。  そう、それが「ヒップホップ」というものだ。

鷺巣詩郎(さぎすしろう)

お知らせ
ワールドワイドに活躍中の作曲家、音楽プロデューサーの鷺巣詩郎のブログ「SHIRO'S SONGBOOK ひろば」がついにOPEN!
プロフィール
鷺巣 詩郎
25年以上もの長きにわたり第一線で活躍し続け、驚異的なキャリアを誇る、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。
80年代初頭のアイドル歌謡曲時代から、インストゥルメンタル・アーティスト、近年のシンガー・アーティストに至るまで広範囲にわたり何百何千もの楽曲、アーティストを手掛け、くわえて、映画、TVなど、あらゆる映像音楽(サウンド・トラック)分野でも活躍、あわせて膨大な数の大ヒットを、絶えず世に送り出している。
90年代よりヨーロッパでも活動、パリでのクラブ経営、英仏アーティストの楽曲も手掛ける。また日本人として初めて韓国映画の音楽監督もつとめた。
近年の代表作はMISIA、平井堅、CHEMISTRY、エリーシャ・ラヴァーン、SMAP、「新世紀エヴァンゲリオン」「MUSA」「CASSHERN」など。 自身のアーティスト活動も”SHIRO'S SONGBOOK”シリーズとして継続中、最新CDが2005年8月avexより発売される。
R&B専門誌への長期連載、USENサイトへのコラム、ブログなどの執筆活動も盛ん。現在ロンドン、パリ、東京の3ヶ所に在住。
USENのCS衛星放送SOUND PLANETにて鷺巣詩郎選曲による音楽プログラム『SHIRO'S SONGBOOK』(BF-53チャンネル)が 絶賛放送中! こちらもお聴き逃しなく!





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