硬派パンク・バンド、アンチ・フラッグが見せた新境地 このアンチ-フラッグ、アメリカ東海岸に位置するペンシルバニア州ピッツバーグ出身の4人組のパンク・ロック・バンドだ。途中一度解散し、約3年ほどのブランクがあったものの、その期間を除いてもトータルで16年もの活動歴を持つ立派なベテランだ。SUM 41、グッド・シャーロット、メストなどの、いわゆる新世代パンク・ロック勢の出現、そして世界的な大ヒットにより、パンク・ロックなる音楽の音楽的あり方、捉えられ方などが著しく変わり、今やある種のポップ音楽のひとつとなっている感が否めないのだけど、このアンチ-フラッグは違う。メジャー・レーベル、RCA/BMGに在籍しているのが不思議なくらい、彼らは硬派で、とてもハッキリとしたポリティカルな姿勢、主張を持ち、それを自己の音楽と歌詞とライブ・パフォーマンスを通して強烈に表現し、聴く者にダイレクトに届ける。これぞ、まさにパンク・ロックだ、と言えるのが、彼らなのだ。
'97年にNew Red Archives Recordsより発売した初のフル・アルバム『DIE FOR THE GOVERNMENT』から、2001年にかのFat Wreck Chordsから発売した通算6枚目の『THE TERROR STATE』までのすべての作品が日本盤未発売なのだけど、それでもその間に彼らは初来日公演を行っていて、クラブ・ギグながら大成功のうちに終了している。それからもわかるように、日本にも彼らを支持して止まない熱心なファンが大勢いる。彼らが正当に評価され、より支持層も広がったのはメジャー移籍作かつ日本正式デビューとなった前作『FOR BLOOD AND EMPIRE』(2006年)からで、同年のTaste Of Chaos Tour JAPAN参戦で再来日し、同作も好セールスをマークした。
彼らの音楽性や主張性は首尾一貫してて、常に硬派で、歌詞は鋭く、メロディは男の哀愁を放つ。この新作『THE BRIGHT LIGHTS OF AMERICA』(なんて皮肉っぽいタイトルなのか)でもそれは不変ながら、今回は曲によってはストリングス、ピアノ、チェロ、ホーンなどを取り入れ、過去になかった展開を見せ、響きも放つという新境地を切り開いていて非常に興味深い。人によってはその新境地に驚くだろうけど、すべてが違和感なく彼らの音楽に溶け込み、ベテランならではの妙技も見え隠れする。プロデューサーにデヴィッド・ボウイやT・レックスほかとの仕事で高名なトニー・ヴィスコンティを起用したのも吉と出た。必聴作だ。 |