“モンスター・バンド”トゥールのメイナードのソロ・プロジェクト、その奇妙な世界!
昨年秋から年末にかけて全米各地を巡演したツアーをもって、新作『10,000 DAYS』(2006年)発売に伴うライブ動に一区切りをつけた、“モンスター・バンド”、トゥール。DVDシングル第3弾『VAICARIOUS』(日本盤未発売)がようやく発売されるも、現在バンドは基本的にはちょっとしたオフ期間中にある。ダニー・キャリー(ds)は別バンド、VOLTO!でちょこちょこライブ活動を行うなど、“音楽好き虫”はその間も大人しくしてないようだ。オフのときは主に趣味と実益を兼ねたワイン作りに精を出すメイナード・ジェームズ・キーナン(vo)も、かねてから話題に上っていたソロ・プロジェクト、プシファーの作品『V
IS FOR VAGINA』を発売した。
プシファーは映画に登場する、この世に存在しない架空バンドとして、まず姿を現し、トゥール・ファンの間にその名を知られた。その後インターネットを駆使してのプロモーションを機軸としつつも、Tシャツなどのマーチャンとも連動しながら、映画のサントラに楽曲を提供することで、ファンの期待感を煽っていった。そのさなかの時期に発売されたのが、この『V
IS FOR VAGINA』だ。トゥールのツアー中にメイナードがパソコン相手に格闘し作り上げた音源もあれば、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのティム・コマーフォード(b)やブラッド・ウィルク(ds)、そしてプライマスのティム・アレキサンダー(ds)らをスタジオに招いてレコーディングした音源もある。
プシファーの音楽は、トゥールのそれとはかなり異なる、非常に実験的かつ個性的で風変わりなものだ。バンド形式で録った音源が少なく、かつバンド形式の表現方法をとった楽曲も少ないことが一番大きいだろう、特殊な印象に満ち、独特のヴァイブが間断なく放たれてくるところに、最大の特徴がある。全編をダークなテイストが包み込むのだけど、けして鬱積してしまうような陰鬱さはなく、むしろ緩やかなグルーヴが心地よく、自然と身を委ねてしまう。とても不思議なマジックを宿し、放つ音楽であると同時に、メイナードの鋭く、深く、広い音楽的感性に脱帽させられる。基本的にはツアーはやらないようだけど、ぜひライブを観て、この音楽をどうステージで再現するのかしかと確かめてみたいという思いに駆られる。そう思うこと自体がもう、メイナードの思うツボなんだろうけど(笑)。
|