ブリティッシュ・ロックの個性派バンド、ツイン・キーボードの重厚なサウンドが異彩を放つ! 60年代後半から70年代中盤にかけての時期、ブリティッシュ・ロック界はまさに個性派バンドの巣屈、宝庫状態にあった。レコード・セールスや、それを生むための市場戦略、つまりマーケティング展開などよりも音楽自体や、アーティスト性の方に重きが置かれ、それに対する正当な評価や人気度によってバンドが成功への階段を上がっていくという、ある種健全な時代だったからこその賜物なわけだけど、このスプーキー・トゥースもそういう環境から出てきたバンドのひとつだった。
生誕地はロンドン。母体バンド、ARTにニュージーランド生まれのアメリカ人、ゲイリー・ライト(org,vo)が加入し、バンド名をスプーキー・トゥースに改名する形で結成された。'67年10月のことで、当時新興レーベルだったIsland Recordsと契約、翌'68年初頭にシングル「Sunshine Help Me」でデビュー、ほどなくしてデビュー作『It's All About』(日本盤未発売)も発売した。当時、プロコル・ハルムの「A White Shade Of Pale」が世界的に大ヒットしていた。彼らがマイク・ハリソン(key,vo)とゲイリーというツイン・キーボード隊を軸とした編成となったのも、そのプロコル・ハルムを意識したからではないかと言われている。その後彼らはコンスタントに作品を発売していく。『Spooky Two』('69年/同)、『The Last Puff』('70年/同)、『You Broke My Heart So I Busted Your Jaw』('73年/同)、『The Mirror』('74年/同)などがそうだけど、結局ヒットに恵まれず、メンバー・チェンジも多かったことが原因となり、'74年9月に2度目の解散を宣言した。ミック・ジョーンズ(フォリナー)、グレッグ・リドレー(ハンブル・パイ)、ルーサー・グロブナー(モット・ザ・フープル)などと、布陣にかかわったメンバーがその後他バンド(カッコ内)で活躍し、名を馳せるという皮肉な現象も数多見られる、ユニークな特性も持つ。なお、このベスト盤『The Best of Spooky Tooth』は解散後の'76年に編集され、発売されたものだ。
オルガンとキーボードの描くサウンド・スケープを装飾に、ブルースをベースとした重厚なロック・サウンドが持ち味で、楽曲力もあり、「Tobacco Road」「I Am The Walrus」などのカバー曲の調理の仕方もツボを得ている。けして有名ではないし、実績も持っているわけではないけど、ブリティッシュ・ロックがもっとも輝き、異彩を放っていたときのバンドのひとつだけに、ぜひ耳を傾けてほしいと思う。 |