“ピアノ・エモ”を超越した、力強く美しい新作『Singularity』 今からちょうど2年前、突如“ピアノ・エモ”なる新音楽的造語が産み落とされ、その手の音楽が注目され、支持層がドッと増えたことがあった。その導火線に火を点け、その動きを引っ張ったのが、『Composure』でデビューしたウェイキング・アッシュランドと、通算3枚目の『The Everglow』で遅ればせながらの日本正式デビューを飾った、このメイだった。
彼らはアメリカは中西部ヴァージニア州ノーフォーク出身の5人組で、デイヴ・エルキンス(vo,g)、ザック・ギャーリング(g)、マーク・パジェット(b)、ジェイコブ・マーシャル(ds)、ロブ・スウェイツァー(key,vo)という顔ぶれだ。バンド名のメイ(MAE)はMulti-sensory Aesthetic Experience(多感覚での美的な経験という意味)の略称だ。なお、ロブは中国系アメリカ人のエイジアン系だ。結成は2001年で、2003年に今は巨大なクリスチャン・ロック・レーベルと化したTooth & Nail Recordsと契約し、『Destination:Beautiful』(日本盤未発売)でデビュー、本格的なツアーにも出た。そのツアーでの反響がすこぶるよかったことから、それを受けて未発表音源や『Destination:Beautiful』収録曲のリミックス・ヴァージョンなどで構成した企画盤『Destination:B-Sides』(同)も発売した。そして、2005年春に『The Everglow』が発売され、これが決定打となった。本国ではもちろん、日本での正式デビューも果たし、上記したような明確な動きを作るまでの存在になったのだった。
『The Everglow』は間違いなく、“ピアノ・エモの名盤”だ。ジャケの持つ世界観と、音楽の世界観が見事なまでに一致し、そこから響くメロディ、鳴る楽曲、音楽も最高だ。それに続くのが、この新作『Singularity』だ。“ピアノ・エモ”なる限定ジャンルの域を完璧に超越した、“力強さ”“繊細さ”“美しさ”が共存共栄しつつしっかり表現、主張された、まさに会心作に仕上がっている。いかにも“ピアノ・エモ”的な雰囲気こそ希薄になったものの、そのぶん聴く者を勇気&元気づけ、ハッピーにもしてくれて、またときに癒し、優しく包み込んでもくれる要素がテンコ盛りだ。
フジロック参戦で通算3度目の来日を飾った彼らは、来年2月に再び単独公演で戻ってくる。これまで以上に大盛り上がりすること間違いなしだ。『Singularity』は今聴いておきたいロック・アルバムの1枚だ。
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