
このスライスはカリフォルニア州アーヴァイン産の4人組で、ギターのテッペイ・テラニシは100%生粋の日本人だ。1998年夏に結成、暫し下積み時代を送った'00年にカリフォルニアの老舗インディーの一つSub Cityと契約、その少し前に自主制作し、発売した『Identity Crisis』(日本盤未発売)をリイシューするという形で正式デビューを飾った。それを機に本格的にツアーに出、ファンベースを築く中、'02年に2枚目の『The Illusion Of Safety』(同)を発売し、一気に頭角を現した。そこを一大メジャー・レーベルThe Island Def Jam Music Groupに見初められ契約、'03年に『The Artist In The Ambulance』をもってメジャー・デビューし、'04年初頭の「ソニックマニア」に参戦することで初来日も実現した。個人的に前から気になっていたバンドで、メジャー・デビューする直前にロサンゼルスで対面取材し、ライヴも観戦したけど、予想していた通り、彼らはティーンエイジャーを中心とした若年層ファンの心をガッチリと掴み、熱烈に支持されていた。残念ながら、この熱さはここ日本にはまだ伝わっていない。
『The Artist In The Ambulance』での日本正式デビュー時、彼らは“新型パンク・メタル・バンド”とか“新手のエモーショナルなハードコア・バンド”とかいう触れ込みだった。だけど、それに続くこの新作『Vheissu』ではその領域に留まり、甘んじることなく、よりアーティスティックで壮大なスライス・ワールドを描き、見事なまでに表現し切っている。
パンク・ロックやメタルに機軸を置きながらもグッと音楽的視野を広げている。むちゃくちゃ物悲しくムーディーな「Between
The End And Where We Lie」、ソウルフルでスワンピーな「The
Earth Will Shake」、思いっ切りハードコアな「Hold
Fast Hope」、初来日時にお土産で買ったという「さくら さくら」のメロディを奏でるオルゴールを使った「Music
Box」をやるなど、非常に高尚なレベルでバリエーション豊かな作風を創り上げている。
つい先日、“Taste Of Chaos Tour”のカリフォルニア州サンディエゴ公演で久方ぶりに彼らのライヴを観たけど、PAトラブルに見舞われつつも、そのまったく独自の世界観を大観衆を前に繰り広げていた。手前味噌な話だけど、このときの模様は3月末日発売予定の『GrindHouse magazine』のVol.35に掲載される。スライス、“今が旬”のバンドの一つである。 |