総合TOP > リコメンドインデックス > 音楽と人 POWER PUSH!! > 08/02/27 木村カエラ
なぜ私は歌を歌うのか。その理由や意味を自覚できず、音楽や歌との向き合い方に戸惑っていた前作『Circle』までの木村カエラが、一気に開眼し急成長を遂げたのが本作『Scratch』だ。 もともと彼女は何かとネガティヴに考えがちなマイナス思考で繊細な女の子である。“バンドが好き”“ロックが好き”という単純でプリミティブな動機で音楽を始めたものの、これだけ多くの支持を得て認知されても自分の歌に自信が持てずにいるという面倒くさいタイプだったりする。しかし、テレビや雑誌などで見かける彼女にそんな影は見当たらないのが現実だ。誰もが木村カエラと聞いてイメージする【いつでも明るく元気な女の子】を彼女が演じるのは、世間にそんなイメージを求められていたからだろう。でも本当の私はいつも明るいわけでもないし元気でもない。落ち込みやすいしいろいろ考えすぎて閉じこもってしまう厄介で面倒なヤツ(本人談)。そして前作『Circle』は、そんな彼女の自問自答ぶりがそのまま歌に表れた作品だったのだ。 ループする自問自答が『Circle』という作品になり、そこに収録された歌を人前で歌うようになると、彼女は自分にとって音楽とはふさぎ込んだ心を吐き出せる唯一の場所であることに気づき始める。そして、本作『Scratch』収録曲であるシングル「Magic Music」「TREE CLIMBERS」とリリースを重ねるたびに、その自覚は次第と強くなっていく。さらにはこの時期に行われたツアーで、歌を歌うことに対する意識が一気に高まっていくことになるのだ。 このツアーにおいて彼女の歌唱力が飛躍的に上がっていたのだが、それは単なるスキル面の向上だけではないだろう。どんな聴衆を前にしても揺るがない歌。たとえ心が揺らいだとしても、歌さえ揺らがなければ私は私のままでいることが出来る。そんなことにも気づいた彼女は、シンガーとしての強い自覚とともに『Scratch』への制作に没頭していったのだ。 だからこのアルバム『Scratch』には、自問自答という長いトンネルから抜け出した彼女がいる。自信が持てない自分だからこそ、誰かとの繋がりを必要としている。そのことを迷いなく歌っているのだ。“伝えるべき人に楽しいことも辛いことも全部言わなきゃ”。このアルバム・リリース時のインタビューで、彼女は笑顔でそう言い切っていた。そんな思いに溢れた木村カエラの歌は、この先さらなる飛躍をとげることとなる。誰かを助けたり元気づけたり幸せにする、ポップ・アイコンとして…。 樋口靖幸
『Scratch』で彼女が伝えたかったこと
なぜ私は歌を歌うのか。その理由や意味を自覚できず、音楽や歌との向き合い方に戸惑っていた前作『Circle』までの木村カエラが、一気に開眼し急成長を遂げたのが本作『Scratch』だ。
もともと彼女は何かとネガティヴに考えがちなマイナス思考で繊細な女の子である。“バンドが好き”“ロックが好き”という単純でプリミティブな動機で音楽を始めたものの、これだけ多くの支持を得て認知されても自分の歌に自信が持てずにいるという面倒くさいタイプだったりする。しかし、テレビや雑誌などで見かける彼女にそんな影は見当たらないのが現実だ。誰もが木村カエラと聞いてイメージする【いつでも明るく元気な女の子】を彼女が演じるのは、世間にそんなイメージを求められていたからだろう。でも本当の私はいつも明るいわけでもないし元気でもない。落ち込みやすいしいろいろ考えすぎて閉じこもってしまう厄介で面倒なヤツ(本人談)。そして前作『Circle』は、そんな彼女の自問自答ぶりがそのまま歌に表れた作品だったのだ。
ループする自問自答が『Circle』という作品になり、そこに収録された歌を人前で歌うようになると、彼女は自分にとって音楽とはふさぎ込んだ心を吐き出せる唯一の場所であることに気づき始める。そして、本作『Scratch』収録曲であるシングル「Magic Music」「TREE CLIMBERS」とリリースを重ねるたびに、その自覚は次第と強くなっていく。さらにはこの時期に行われたツアーで、歌を歌うことに対する意識が一気に高まっていくことになるのだ。
このツアーにおいて彼女の歌唱力が飛躍的に上がっていたのだが、それは単なるスキル面の向上だけではないだろう。どんな聴衆を前にしても揺るがない歌。たとえ心が揺らいだとしても、歌さえ揺らがなければ私は私のままでいることが出来る。そんなことにも気づいた彼女は、シンガーとしての強い自覚とともに『Scratch』への制作に没頭していったのだ。
だからこのアルバム『Scratch』には、自問自答という長いトンネルから抜け出した彼女がいる。自信が持てない自分だからこそ、誰かとの繋がりを必要としている。そのことを迷いなく歌っているのだ。“伝えるべき人に楽しいことも辛いことも全部言わなきゃ”。このアルバム・リリース時のインタビューで、彼女は笑顔でそう言い切っていた。そんな思いに溢れた木村カエラの歌は、この先さらなる飛躍をとげることとなる。誰かを助けたり元気づけたり幸せにする、ポップ・アイコンとして…。
樋口靖幸