総合TOP > リコメンドインデックス > 音楽と人 POWER PUSH!! > 08/01/16 STAN
インディーズ時代に発表した1stアルバム『STAN』をメジャーで再リリースした後に本作で正式にメジャーデビューした彼ら。とにかくこのバンドは同世代のバンドと比べようがない異色のセンスと才能を放つ孤高のロックバンドである。 この特異なバンドを語るには、その首謀者kygこと西井鏡悟についてまずは説明しなければならない。とにかく彼は性別関係なく万人の母性本能をくすぐる憎めない愛すべき少年性あふれる男である。基本的にロマンチストでありながらもリアリストであり、そして少なからず被害妄想に苛まれているヤツ。本当は誰からも愛されたいしすべてを愛したい。人生を楽しく有意義に謳歌し、世界と人類の平和を心から望んでいる純粋な心の持ち主。でもちょっと甘ったれで打たれ弱さが玉にキズ(笑)。だからそんな彼にとって現実とは、嘘と虚構が横行し悲しみと退屈と荒廃にまみれた世界だったりする。よってkygは退屈な日常や怠惰な人間たちや世間に苛立ち、そこから生まれる負のエネルギーをアイロニカルな視線と態度とともにロックに叩きつけるのだ。しかも叩きつけようとする自分の熱さにちょっと照れてしまうところが何ともいとおしい。 だからSTANのロックは一見一筋縄ではいかない捻じれた論理を孕んでいる。インタビューでは“音楽はコミュニケーションだ”と言い切るくせに、歌詞では様々な照れ隠しという名の回り道をさんざんした上でようやく言いたいことがポロッと出る。他者との繋がりを切実に求めながらもそれを真っ直ぐ歌わない理由を“サムい”と言って切り捨てるのは、羞恥心の問題ではなく真のコミュニケーションとはそんなにたやすいもんじゃないよと、彼自身の経験値がそう思わせるのだろう。だから取材では自分たちの音楽性の素晴らしさをレッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズと同列で大胆に語ったり、“STANマジヤバイ”と自画自賛を歌う。そんなビッグマウスなところがとてつもなく可愛らしい。 この作品『STAN II』はそんな彼らの屈折した思いが交錯しているリアルなロックアルバムだ。緻密に練られたギターリフに光るセンス、圧倒的にスポンテイニアスなグルーブの肉体性はどこまでもロックンロールのダイナミズムを鳴らしているのに、kygの軟性ボーカルがそんなロックの方程式を自ら駆逐していく。彼は弱者であり、マイナスの男であるのだ。ゆえにそれを自覚した上で、ロックというツールを駆使して世の中とコミットし、理想の自分と社会を本気で夢見る男、それがkyg。そんな男が鳴らすロックが間違ってるわけがない。 樋口靖幸
リアルなロックアルバム『STAN II』
インディーズ時代に発表した1stアルバム『STAN』をメジャーで再リリースした後に本作で正式にメジャーデビューした彼ら。とにかくこのバンドは同世代のバンドと比べようがない異色のセンスと才能を放つ孤高のロックバンドである。
この特異なバンドを語るには、その首謀者kygこと西井鏡悟についてまずは説明しなければならない。とにかく彼は性別関係なく万人の母性本能をくすぐる憎めない愛すべき少年性あふれる男である。基本的にロマンチストでありながらもリアリストであり、そして少なからず被害妄想に苛まれているヤツ。本当は誰からも愛されたいしすべてを愛したい。人生を楽しく有意義に謳歌し、世界と人類の平和を心から望んでいる純粋な心の持ち主。でもちょっと甘ったれで打たれ弱さが玉にキズ(笑)。だからそんな彼にとって現実とは、嘘と虚構が横行し悲しみと退屈と荒廃にまみれた世界だったりする。よってkygは退屈な日常や怠惰な人間たちや世間に苛立ち、そこから生まれる負のエネルギーをアイロニカルな視線と態度とともにロックに叩きつけるのだ。しかも叩きつけようとする自分の熱さにちょっと照れてしまうところが何ともいとおしい。
だからSTANのロックは一見一筋縄ではいかない捻じれた論理を孕んでいる。インタビューでは“音楽はコミュニケーションだ”と言い切るくせに、歌詞では様々な照れ隠しという名の回り道をさんざんした上でようやく言いたいことがポロッと出る。他者との繋がりを切実に求めながらもそれを真っ直ぐ歌わない理由を“サムい”と言って切り捨てるのは、羞恥心の問題ではなく真のコミュニケーションとはそんなにたやすいもんじゃないよと、彼自身の経験値がそう思わせるのだろう。だから取材では自分たちの音楽性の素晴らしさをレッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズと同列で大胆に語ったり、“STANマジヤバイ”と自画自賛を歌う。そんなビッグマウスなところがとてつもなく可愛らしい。
この作品『STAN II』はそんな彼らの屈折した思いが交錯しているリアルなロックアルバムだ。緻密に練られたギターリフに光るセンス、圧倒的にスポンテイニアスなグルーブの肉体性はどこまでもロックンロールのダイナミズムを鳴らしているのに、kygの軟性ボーカルがそんなロックの方程式を自ら駆逐していく。彼は弱者であり、マイナスの男であるのだ。ゆえにそれを自覚した上で、ロックというツールを駆使して世の中とコミットし、理想の自分と社会を本気で夢見る男、それがkyg。そんな男が鳴らすロックが間違ってるわけがない。
樋口靖幸