そして、そんな強さを感じさせるようになった今だからこそ振り返っておきたい時代があり、曲がある。アートスクールがどこまでも儚くて、暗くて、悲しくて、弱かった時代の曲群だ。アートスクールは決して順風満帆の道のりを辿ってきたバンドではない。むしろ相次ぐ危機の数々をどうにかこうにか乗り切ってきたバンドなのである。2003年末のメンバー脱退、および2004年のメジャーとの契約切れは、その最たるものだった。
この『Missing』は、そんな時期に自主レーベルからリリースした2枚のミニアルバム『スカーレット』『LOST IN THE AIR』をリマスタリングしてコンパイルした作品である。とにかくこの時期の楽曲は、暗く、痛い。『Missing』リリース時に、あらためて過去の詞を読んだ木下理樹本人が「痛かったんだなーって思う。笑えないよ(笑)。まあ、今笑えるんだけど」と言ってしまうほどだ。〈酒飲んで 舐め合って すぐに 冷めちぁってねえ〉〈愛なんて それより何か 肉食いたいなぁ〉(「RAIN SONG」)、〈家にいんの 一歩も出ないで〉(「クロエ」)、〈I’ll wating for アルコールその他何?〉(「APART」)、〈I KNOW人生はHELL 空っぽのコンドーム〉(「LOST IN THE AIR」)─。実際、この時期の木下の私生活はこれら歌詞の暗さ、痛さ、殺伐さそのものだったようだ。朝から家から一歩も出ずに、「もう死んでもいいや」と思いながらの酒、酒、酒―。『Missing』には、弱い、暗いというよりは美しい、繊細な新曲「Missing」「それは愛じゃない」が収められているので、『スカーレット』『LOST IN THE AIR』の楽曲の暗さがより際立つのだ。
強くなった、逞しくなった今だからこそ聴きたい『Missing』
7月15日、渋谷公会堂で行われたアートスクールの〈Tour’07“Flora”〉ファイナル。バンドにとって、バンドの中心人物であるボーカル&ギターの木下理樹にとって、そしてアートスクールを見守り続けてきた熱心なファンにとって、実に感慨深いライブになった。いつも通りだったと言えば、いつも通りのライブではあった。いつも通り無愛想で、いつも通り曲数が多い、というアートスクール印のライブ。なんと今回はアンコール含め35曲だった。木下はライブでの演奏曲がひたすら増えていく理由を「僕らは曲を選べないんですよ」と冗談めかして言うけれど、今の彼らのライブからはそんな消極的な理由はみえてこない。みえてくるのは「これが俺たちのライブなんだ」という自覚と自信だった。儚くて、暗くて、悲しいアートスクールのロックに、確かな強さが感じられたのだ。そういう意味で感慨深いライブだったのである。それは、9月19日にリリースされる新作ミニアルバム『左ききのキキ』とともに同時発売されるDVD『Tour’07“Flora”Live&Document』で追体験することができるので、どうか注目してほしい。
そして、そんな強さを感じさせるようになった今だからこそ振り返っておきたい時代があり、曲がある。アートスクールがどこまでも儚くて、暗くて、悲しくて、弱かった時代の曲群だ。アートスクールは決して順風満帆の道のりを辿ってきたバンドではない。むしろ相次ぐ危機の数々をどうにかこうにか乗り切ってきたバンドなのである。2003年末のメンバー脱退、および2004年のメジャーとの契約切れは、その最たるものだった。
この『Missing』は、そんな時期に自主レーベルからリリースした2枚のミニアルバム『スカーレット』『LOST IN THE AIR』をリマスタリングしてコンパイルした作品である。とにかくこの時期の楽曲は、暗く、痛い。『Missing』リリース時に、あらためて過去の詞を読んだ木下理樹本人が「痛かったんだなーって思う。笑えないよ(笑)。まあ、今笑えるんだけど」と言ってしまうほどだ。〈酒飲んで 舐め合って すぐに 冷めちぁってねえ〉〈愛なんて それより何か 肉食いたいなぁ〉(「RAIN SONG」)、〈家にいんの 一歩も出ないで〉(「クロエ」)、〈I’ll wating for アルコールその他何?〉(「APART」)、〈I KNOW人生はHELL 空っぽのコンドーム〉(「LOST IN THE AIR」)─。実際、この時期の木下の私生活はこれら歌詞の暗さ、痛さ、殺伐さそのものだったようだ。朝から家から一歩も出ずに、「もう死んでもいいや」と思いながらの酒、酒、酒―。『Missing』には、弱い、暗いというよりは美しい、繊細な新曲「Missing」「それは愛じゃない」が収められているので、『スカーレット』『LOST IN THE AIR』の楽曲の暗さがより際立つのだ。
本人が認めている。痛く、暗い、悲しい時期だった。しかし、そんなどん底の木下に、ロックだけは絶対に手放さずに、ありのままの自分を曲として表現しようとする力が、タフネスがあったことを忘れてはいけない。そんなどん底でのタフネスが、今の彼らのたくましさと強さにつながっていることは間違いないからだ。
柳憲一郎