寂しがりやのくせに孤独癖が強く、頑固な男。人を笑わせる愛嬌がある一方でどこかで人と深く関わることを怖れている。そんなコントラストを持った男、山崎まさよし。彼の音楽はとても正直で生々しくて、人生の甘酸っぱさとほろ苦さを感じてしまうものだ。繊細で傷つきやすいからこそ、血がにじむほどギターをかき鳴らしガムシャラに歌い叫ぶ。今から10年前、世間の脚光を浴びることになったこの2ndアルバムで、彼はそんな人生の光と陰のコントラストを丁寧に描く希有なシンガー・ソングライターとしての存在を表わにした。
1995年、「月明かりに照らされて」でデビューすると、彼は山口時代はもとより上京(住んでいたのは横浜)しバイト生活に明け暮れていた際に作りためていた楽曲を次々と発表していった。1stと本作のリリースからそれぞれ半年後に発表されたプライベートアルバム2部作『STEREO』『STEREO 2』などを含めれば、デビューから2年間で発表されたその楽曲数はフルアルバム3枚分。現在の山崎のユルユルとしたリリース・サイクルからすれば驚異的だが、それだけ当時の彼はギターを弾き歌を歌わずにはいられない切迫した思いがあったのだろう。今でこそ深みと渋味に満ちているその歌声は、崖っぷちに立たされた男のテンションといった具合にやたらとデカく豪快だ。まさにガムシャラバタフライ。
そんなドタバタした忙しない自身を描いた本作が高く評価されたきっかけは、彼が出演した映画『月とキャベツ』に提供されたシングル「One more time,One more chance」にある。映画の公開とともにリリースされたこの曲が世間へじわじわと浸透し本作はもとより本人の認知も深まった。そして3rdアルバム『ドミノ』は、主演ドラマに出演と制作を同時進行させるというさらに忙しない中で作られたこともあって、やはり作品のテンションは同様。しかし、それ以降の彼が発表した作品はガムシャラに声を張り上げて歌うものではなく、大人の男として成長ぶりを思わせる深い味わいを描くものに変化していったのだ。
デビューから10年経ち、11年目となる06年。最新アルバム『ADDRESS』には、再びガムシャラバタフライしている山崎がいる。25歳、生きることの不確かさと不安から逃れるように身体を動かしつづけてきた男(彼の常套句。ただひたすら曲を作ってライブをやるという意味)が、10年経って同じようにバタバタし始めた。そこにはやはり、『HOME』という名の通り本作が現在の彼にとってルーツであり、出発点であることを改めて確認したからではないだろうか。
樋口靖幸
●完全無料パソコンテレビGyaO 3ch音楽にて、雑誌『音楽と人』主催のライブ・イベント『MUSIC & PEOPLE EXTRA!』を9月29日より放送開始!
今回は、椿屋四重奏とムック。まったくの異種格闘技戦に思われるかもしれないが、どちらも日本のロックにこだわり、シーンに染まらず、オリジナルを貫くスタイルは一緒。このガチンコ勝負が生んだ、圧倒的なライブの模様をお届けします。ラストではフロントマンが共演してのアコースティック・セッションも実現!
寂しがりやのくせに孤独癖が強く、頑固な男。人を笑わせる愛嬌がある一方でどこかで人と深く関わることを怖れている。そんなコントラストを持った男、山崎まさよし。彼の音楽はとても正直で生々しくて、人生の甘酸っぱさとほろ苦さを感じてしまうものだ。繊細で傷つきやすいからこそ、血がにじむほどギターをかき鳴らしガムシャラに歌い叫ぶ。今から10年前、世間の脚光を浴びることになったこの2ndアルバムで、彼はそんな人生の光と陰のコントラストを丁寧に描く希有なシンガー・ソングライターとしての存在を表わにした。
1995年、「月明かりに照らされて」でデビューすると、彼は山口時代はもとより上京(住んでいたのは横浜)しバイト生活に明け暮れていた際に作りためていた楽曲を次々と発表していった。1stと本作のリリースからそれぞれ半年後に発表されたプライベートアルバム2部作『STEREO』『STEREO 2』などを含めれば、デビューから2年間で発表されたその楽曲数はフルアルバム3枚分。現在の山崎のユルユルとしたリリース・サイクルからすれば驚異的だが、それだけ当時の彼はギターを弾き歌を歌わずにはいられない切迫した思いがあったのだろう。今でこそ深みと渋味に満ちているその歌声は、崖っぷちに立たされた男のテンションといった具合にやたらとデカく豪快だ。まさにガムシャラバタフライ。
そんなドタバタした忙しない自身を描いた本作が高く評価されたきっかけは、彼が出演した映画『月とキャベツ』に提供されたシングル「One more time,One more chance」にある。映画の公開とともにリリースされたこの曲が世間へじわじわと浸透し本作はもとより本人の認知も深まった。そして3rdアルバム『ドミノ』は、主演ドラマに出演と制作を同時進行させるというさらに忙しない中で作られたこともあって、やはり作品のテンションは同様。しかし、それ以降の彼が発表した作品はガムシャラに声を張り上げて歌うものではなく、大人の男として成長ぶりを思わせる深い味わいを描くものに変化していったのだ。
デビューから10年経ち、11年目となる06年。最新アルバム『ADDRESS』には、再びガムシャラバタフライしている山崎がいる。25歳、生きることの不確かさと不安から逃れるように身体を動かしつづけてきた男(彼の常套句。ただひたすら曲を作ってライブをやるという意味)が、10年経って同じようにバタバタし始めた。そこにはやはり、『HOME』という名の通り本作が現在の彼にとってルーツであり、出発点であることを改めて確認したからではないだろうか。
樋口靖幸