総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > 音楽と人 POWER PUSH!! > 06/07/12 ソウル・フラワー・ユニオン
僕の実家は神戸にある。 神戸の長田という山のふもとにひらけた街。ここが瓦礫と絶望に埋もれたのは95年の1月。忘れはしない。阪神大震災だった。交通は寸断され、街のほとんどは原形を止めず、水は届かず、救出活動は遅々として進まない。今でも思い出すが、誰もがニュースで見た風景、あれ以上に、現場は壮絶だったのだ。 その現状に、さまざまなアーティストが気持ちを伝えようとした。そのどれもが優しく、暖かかった。しかしその中でも、被災地に入り、避難所や道端で、音楽を通した喜びを与えてくれたのは、彼らしかいなかった。そして彼ら自身もそこから、確かなものを得たのである。 ソウル・フラワー・ユニオン。もともとは、ニューエスト・モデルとメスカリン・ドライブという、ブリティッシュ・パンクやガレージ・サイケを基調とした2つのバンドだった。それが解散し、イギリスやアメリカの影響下にあるものではなく、もっとオリジナリティを、と、その意識の下に結成された。ただセカンド・アルバムまでは、2つのバンドのスーパー・セッション的な側面が強く残っていた。それが前述の震災、被災地での演奏活動を意識した結果、電気を使うエレキギターではなく三線を、マイクではなくメガホンを、オリジナルよりも民謡や戦前戦後のはやり歌を。そういうコンセプトのもとに、モノノケサミット、という活動形態が生まれ、それはソウル・フラワー・ユニオン自体にも大きく影響していく。 そして完成した『エレクトロ・アジール・バップ』。これが実質的な、ソウル・フラワー・ユニオンのファースト・アルバムと言ってもいいだろう。その後、アイリッシュ・トラッドや、沖縄民謡、アイヌ音楽などに触れていくことで、単なるロックバンドには収まらない、音楽的な幅広さが彼らの作品には満ちあふれていく。そして土着的な音楽に近づいていくことで、必然的にそこに潜む政治的な事柄が歌になっていったのだ。 例えば『シャローム・サラーム』は<平和>や<解放>が大きなテーマとなっている。タイトルからして、<SHALOM/シャローム>はヘブライ語、<SALAAM/サラーム>はアラビア語で<平和>を意味する。今だからこそこれを唄わなくてはいけない、そんな意志にあふれた作品だ。ただ、その根底には愛がある。どんな世界の人間にもある、大切なものへの思いがある。さまざまな世界の音楽に触れ、そこにこめた思いを知った彼らだからこそ、圧倒的な説得力で、音楽にポリティカルな意味だけではなく、もっと根源的な<愛>を表現できている。 ちなみに「バンクロバー」はクラッシュの、「ムーンダンス」はヴァン・モリソンのカヴァーである。
どんな世界の人間にもある、大切なものへの思いがある
さまざまな世界の音楽に触れ、そこにこめた思いを知った彼らだからこそ
ポリティカルな意味だけではなく、もっと根源的な<愛>を音楽で表現できている
僕の実家は神戸にある。
神戸の長田という山のふもとにひらけた街。ここが瓦礫と絶望に埋もれたのは95年の1月。忘れはしない。阪神大震災だった。交通は寸断され、街のほとんどは原形を止めず、水は届かず、救出活動は遅々として進まない。今でも思い出すが、誰もがニュースで見た風景、あれ以上に、現場は壮絶だったのだ。
その現状に、さまざまなアーティストが気持ちを伝えようとした。そのどれもが優しく、暖かかった。しかしその中でも、被災地に入り、避難所や道端で、音楽を通した喜びを与えてくれたのは、彼らしかいなかった。そして彼ら自身もそこから、確かなものを得たのである。
ソウル・フラワー・ユニオン。もともとは、ニューエスト・モデルとメスカリン・ドライブという、ブリティッシュ・パンクやガレージ・サイケを基調とした2つのバンドだった。それが解散し、イギリスやアメリカの影響下にあるものではなく、もっとオリジナリティを、と、その意識の下に結成された。ただセカンド・アルバムまでは、2つのバンドのスーパー・セッション的な側面が強く残っていた。それが前述の震災、被災地での演奏活動を意識した結果、電気を使うエレキギターではなく三線を、マイクではなくメガホンを、オリジナルよりも民謡や戦前戦後のはやり歌を。そういうコンセプトのもとに、モノノケサミット、という活動形態が生まれ、それはソウル・フラワー・ユニオン自体にも大きく影響していく。
そして完成した『エレクトロ・アジール・バップ』。これが実質的な、ソウル・フラワー・ユニオンのファースト・アルバムと言ってもいいだろう。その後、アイリッシュ・トラッドや、沖縄民謡、アイヌ音楽などに触れていくことで、単なるロックバンドには収まらない、音楽的な幅広さが彼らの作品には満ちあふれていく。そして土着的な音楽に近づいていくことで、必然的にそこに潜む政治的な事柄が歌になっていったのだ。
例えば『シャローム・サラーム』は<平和>や<解放>が大きなテーマとなっている。タイトルからして、<SHALOM/シャローム>はヘブライ語、<SALAAM/サラーム>はアラビア語で<平和>を意味する。今だからこそこれを唄わなくてはいけない、そんな意志にあふれた作品だ。ただ、その根底には愛がある。どんな世界の人間にもある、大切なものへの思いがある。さまざまな世界の音楽に触れ、そこにこめた思いを知った彼らだからこそ、圧倒的な説得力で、音楽にポリティカルな意味だけではなく、もっと根源的な<愛>を表現できている。
ちなみに「バンクロバー」はクラッシュの、「ムーンダンス」はヴァン・モリソンのカヴァーである。