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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2008/04/09 ルーク・ソロモン


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
ルーク・ソロモン 『ザ・ディファレンス・エンジン』
ルーク・ソロモン  『ザ・ディファレンス・エンジン』

TRACK LIST
 2008 Release
ダウンロード価格
アルバム¥1,500(税込)
*単曲販売はございません

 
 
 
 
  • The Difference Engine   >>試聴
  • The Beat Goes   >>試聴
  • Robots   >>試聴
  • People, Places, Thoughts And Faces   >>試聴
  • Skin   >>試聴
  • Top, Bottom (Versions)   >>試聴
  • Martin, A Cello And Me   >>試聴
  • Out Of Control   >>試聴
  • Spirits   >>試聴
  • Open Fire   >>試聴
  • The Darkest Secret   >>試聴
  • Junkies And Whores   >>試聴
  • Liquid   >>試聴
 

アーティスト詳細へ
現役を退いた人にもきっと響くはず。懐かしくって新しい、過去と現在をつないでくれる音。
   

  ある程度年齢を重ねてくると、新しいものに対していきなり消極的になってしまったりしますよね。 「もう新しさを競いたい歳でもないし」とか、 「若い人の感覚にはついていけないから」とか。

 気持ちはわかる。
 すんごくわかる。
 ある意味、僕もそうだから。

 ただ、忘れてはいけないなと改めて思うのは、僕らは僕らで過去のクラブ・カルチャーをしっかり見てきているという事実だ。
 いま30〜40代の人なら、みんなそうじゃないですか?
 あのころって特別に敏感な人じゃなかったとしても普通に、クリエイティヴな匂いがする夜の街を楽しんでたじゃないですか。
 ディスコからクラブへの過渡期だった80年代中期あたりから、90年あたりの話。
 でね、それって大きいなと思うわけです。
 そしてその経験があるからこそ、“新しい音”のなかに過去からの流れを感じることも充分にありうるわけで。

 なんか理屈っぽい表現で申し訳ないんだけど、ルーク・ソロモンの『ザ・ディファレンス・エンジン』を初めて聴いたとき、それを強く感じたんですよね。

 明らかに新しい音。けれどその随所には過去から受け継いだものがはっきりと反映されていて、だからそれらが90年代もしくは80年代のクラブ・シーンを通りすぎてきた人にも訴えかけるというか。

 魚屋のバイト、レコード屋の店員とのかけ持ち状態で90年からDJとしての活動を開始したUKのアーティスト。その後Freetownレーベルのレコーディング・スタッフ、ラジオDJとして活動し、シカゴ・ハウス・シーンのトップDJであるデリック・カーターとClassicというレーベルを立ち上げ、ファンキー・ハウスで知られる相棒のジャスティン・ハリスと始動させたMusic For Freaks からはFreaksというプロダクション・チーム名義で3枚のアルバムをリリース。数種類の名前を使い分けながら、独自の活動を続けてきた奇才だ。現在もFreaks名義で制作稼働と続けていおり、昨年は『The Creeps』をヒットさせた。

 思いっきりはしょるとそんな感じの経歴を持った人なんだけれど、こういうデータっぽいこと以前に、10年以上のキャリアをへて初の自己名義作品となったこのアルバムに収められている音は、サブカルチャーを通過してきた広範な年齢層を刺激すると思うのだ。

 その証拠に、オープニング「The Difference Engine」や「Liquid」のブリープ感を耳にした時点で、なんか感じるものがありません? 前者の中盤にしつこくはさみ込まれるドラム・サンプルなんか、まんまアート・オブ・ノイズだよね。かと思えばその流れがいつの間にか変態ジャズ・モードな「The Beat Goes」へとつながり、今度はそこからタイトルどおりロボチックな「Robots」へ。続く「People,Places,Thoughts And Faces」や「Skins」には、クラフトワークに通じる粘着性が備わっていたりもする。

 「Top Bottom(Version)」とか「Junkies And Whores」は、もろに初期ハウスの影響下にあるトラックですね。ギラギラとしているのにひんやりとした質感があって、そんな逆説性が気持ちよすぎ。この10数年、ハウスにこういう質感が戻ってくるのを個人的には望んでいたかもな。

 タブラの音色を加工したような不思議な質感を持つ「Martin,A Cello And Me」、一転してソリッドに突き進む「Out Of Control」、フルートのあやしい音色がものすごく効果的な「Spirits」、90年代初頭の初期テクノを彷彿させる「Open Fire」や「The Darkest Secret」など他の楽曲もバラエティ豊かなうえに完成度がとても高い。

 これは明らかに、80年代中期のハウスやデトロイト・テクノ、あるいは80年代後半〜90年代初頭のテクノあたりを通ってきた人の耳を刺激する音だと思うな。懐かしいとか古くさいとかネガティヴな意味ではなく、過去を吸収したうえで現在に生きる音だという意味で。

 というわけで、「もう現役は退いたから」という人もぜひチェックしてほしい優秀作。「これをきっかけにまた夜の街へ繰り出そうぜ!」なんて無謀な提案はしないけど、聴けばなにかを感じさせてくれるはずだから。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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