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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2008/03/26 ウォー


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
ウォー 『ヴェリー・ベスト・オブ・ウォー』
ウォー  『ヴェリー・ベスト・オブ・ウォー』

TRACK LIST
 2003 Release
ダウンロード価格
アルバム¥2,500(税込)
トラック各¥150(税込)

 
 
 
  

  アーティスト詳細へ
チカーノ・コミュニティの誠意が息づく、ジャンルを超越したゴッタ煮バンドの名曲集。
   

 イナタいものには心を奪われる。ガンボみたいなゴッタ煮状態で、ものすごいパワーを生み出しているようなものね。僕自身が洗練されていないからなんだろうけど、いずれにせよ、ウォーに惹かれるのもそんなせいかも。

 複数の人種で構成され、ファンク、ジャズ、ロック、ラテン、レゲエなど雑多な音楽を吸収した、文字どおりのゴッタ煮バンド。キーボーディストのロニー・ジョーダン、ベーシストのモリス“B.B.”ディッカーソン、サックス&フルートのチャールズ・ミラー、パーカッショニストのハロルド・ブラウンとトーマス“パパ・ディー”アレン、ハーモニカのリー・オスカーら凄腕のメンバーは、圧倒的グルーヴ感と独特のスウィートネスを表現できる。

 だから楽しみどころ満載で、一度好きになったらなかなか離れられない。元アニマルズエリック・バードンに見出され“エリック・バードン&ウォー”として活動を開始してから成功したわけだが、彼が抜けた後もやっていけたのは幅広い音楽性、それから確かなスキルがあったからだ。

 「世界はゲットーだ」で僕が初ウォー体験をしたのは中学1年生のときだが、そこで大きな衝撃を受けたわけではなかった。にもかかわらず以後は確実にウォーの存在を意識するようになり、ときどき無性に聴きたくなってレコード棚に手を伸ばすって感じだった。

 だから、どの時期の作品も好きだ。 エリック・バードン&ウォー時代の「スピル・ザ・ワイン」(ワインをこぼしたことから曲が生まれたというエピソードからして壊れている)や「タバコ・ロード」のように、エリック・バードンの狂気がいい方向に作用する楽曲はスリリングだし、「オール・デイ・ミュージック」に顕著なホンワカムードも魅力的。ムードだなんて軽薄に聞こえるかもしれないけど、彼らの温かいムードには適度な緊張感もあって、すごく染みるんだよね。

 「スリッピン・イントゥ・ダークネス」は、「世界はゲットーだ」「シスコ・キッド」に次ぐ有名曲。ボブ・マーリーゲット・アップ・スタンド・アップ」の元ネタで、スコーンと抜けるビート感がポイントだ。ちなみにこの曲のライブ・バージョンは、ヒップホップ・グループ、プア・ライチャズ・ティーチャーズ“Rock Dis Funky Joint”のネタですよ。

 ネタといえば、「フォー・コーナード・ルーム」や「ミー・アンド・ベイビー・ブラザー」も重要。あとビースティ・ボーイズが使った「ロー・ライダー」や、ナイス&スムースでおなじみの「ハートビート」ね。ネタにされることが多いバンドなんですよ。それだけリスペクトされてるってこと。

 と話が進めば、思い出すのが「仲間よ目をさませ!」かな。クラブ・クラシックでもあるこの曲のビートには、“レゲエだから気持ちいい”という安易さを超えた、深い心地よさがある。

 「ナッピー・ヘッド」は、公開されないまま終わった幻の映画『ゲットー・マン』のテーマ曲。なるほど映画に似合いそうだけど、僕はこの曲の、チョロッと顔を見せる「ア〜」というコーラス・パートにソウルを感じる。適度に安っちくて悲しげなところがモーメンツ的で。

 で、同じことは「世界はゲットーだ」にもいえるな。聴くたびに新鮮な名曲だけど、これもコーラスがすごく効果的なのだ。いま酔っぱらいながら聴いてたら、改めてそう思った(不謹慎ですいません)。けど、ここまで地味な曲が大ヒットしたって、考えてみればすごいこと。当時のリスナーは“わかってた”んだなと思う。

 「シスコ・キッド」はもう、何度聴いてもチビりそうになるかっこいい曲。“荒削りなのに緻密”という矛盾グルーヴが、下世話なムードとともに胸を打ちまくりです。『仲間よ目をさませ!』のトップに収録されていたラテン風味の「ドント・レット・ノー・ワン・ゲット・ユー・ダウン」も忘れられないな。決して悲しい曲じゃないのに、妙な寂しさがあって。

 ディスコ寄りになった70年代後期については否定的な意見も聞くけど、客観的に捉えれば、ヒットした「ギャラクシー」なんかかっこよすぎでしょ。『ヤングブラッド』のタイトル曲もそうだけど、理屈以前の説得力。

 ねちっこいタイトル・トラック、それからホセ・フェリシアーノとともにメロウネスをアピールした「イーストLA」を生んだ『ピース・サイン』は現時点での最終作だが、やはり重要。当時は13年ぶりの新作として発表されたし、あれから、さらにもう13年もたっているんだよなー。

 新作の気配はまったくないけど、いまでもきっと、基盤であるL.A.コンプトンのチカーノ・コミュニティに根ざした活動を続けているんじゃないかな。音楽性が異なるメイズ・フィーチャリング・フランキー・ビヴァリーにも同じことがいえるけど、時流に流されず地道に生き続けるタイプのバンドだから。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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