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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2008/01/30 スザンヌ・ヴェガ


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
スザンヌ・ヴェガ 『Beauty & Crime』
スザンヌ・ヴェガ  『Beauty & Crime』

TRACK LIST
 2007 Release
ダウンロード価格
アルバム¥1,500(税込)
トラック各¥150(税込)

 
 
 
  

アーティスト詳細へ
明らかにターニングポイント。なのに気負ったところがない高品質な作品。
   

  「思えば1985年は、スザンヌ・ヴェガとランDMCばっかり聴いてた気がするなー」  スザンヌ・ヴェガ来日公演。ステージを眺めながら、そんなとりとめのないことを考えていた。  もちろん両者には、共通点のかけらもない。あるわけがない。のだけれど、当時の僕にとってはどちらもすごく新鮮だったのだ。特にスザンヌ・ヴェガのファースト・アルバム『Suzanne Vega』は、その年の僕のベスト・アルバムだったとさえいえるかもしれない。透明感があって、刹那的で、誠実で、静かなんだけれど確実に心に訴えかけるものがあったから。ホントあの時点で、彼女の世界観は完結していた気がするんですよね。そしてその後『Solitude Standing』から名曲「Luka」「Tom’s Diner」が生まれて、いよいよ存在感が揺るぎないものになったという印象。

 「ああ、僕はこの人の声がずっと好きなんだな」  歌が耳にするりと入り込んでくるたび、そんなことも考えた。つまり彼女の歌はそんな立ち位置にある。押しつけがましくはないのに、耳にすれば古い友人と再会したような懐かしさを感じるというか。わかりにくい表現かな? でも、本当にそんな感じ。安心できるのだ。

 「新しいアルバム、最近になってようやく真剣に聴いてみたんだけど、けっこういいんだよね」  ライブ終了後、後ろにいた人がそんなことを話しているのが聞こえた。ちょっとね、思わず振り向いて大きくうなずきたい気分でした。なぜって、僕もまったく同感だったから。最初にものすごいインパクトを投げかけてくるようなタイプではない。なのに『Beauty & Crime』というこのアルバム、時間が経つにつれてじんじん染み込んでくるわけですよ。

 前作『Songs In Red And Gray』から実に6年ぶり。寡作だ。しかも名門ブルーノート移籍後第一作であり、コリーヌ・ベイリー・レイジェイムス・モリソンなどを手がけてきたジミー・ホガースがプロデュースを、ミックスをチャド・ブレイクが担当。バックにはパティ・スミス・バンドのトニー・シャナハンやソニック・ユースのリー・ラナルドらが加わり……となかなかの気合いの入れようである。間違いなく、彼女のキャリア内でのターニングポイントに位置づけられるだろう。だが、にもかかわらず、ちっとも饒舌ではない。気負った印象皆無。だからなおさら、深く染み込んでくる。この感覚って『Suzanne Vega』を聴いたときの印象とちょっと似ている気がするなあ。

 もちろん、『Suzanne Vega』のころにくらべれば音楽性は大きく広がっている。「New York Is A Woman」「Edith Wharton’s Figurines」、l、「Anniversary」のような初期の作風に近いアコースティックな楽曲があるかと思えば、ジャジーで心地よい「Pornographer’s Dream」やドラマティックな展開と頼りなげなボーカルの対比がおもしろい「Bound」、アグレッシブなダンス・ビートに驚かされる「Unbound」みたいなタイプもあるしね。フォーク・ロック調の「Zephyr & I」、そして先行シングル「Frank & Ava」ではケイティー・タンストールとのコラボにも挑戦している。てなわけで振り幅は広いのだけれど、不思議な統一感がある。長く聴き続けられる音。この、妙なバランスが不思議。

 でもこういうアルバムって、なかなかない気がするな。というかそれ以前に、自身のスタンスを無理なく維持する彼女のあり方自体が貴重だし。ライブを観て、『Beauty & Crime』を聴きなおし、そんなことを改めて感じたのでした。

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  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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