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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2008/01/16 アッシャー・D & ダディ・フレディ


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
アッシャー・D & ダディ・フレディ 『Ragamuffin Hip-Hop』
アッシャー・D & ダディ・フレディ  『Ragamuffin Hip-Hop』

TRACK LIST
 1988 Release
ダウンロード価格
トラック各¥150(税込)

 
  

アーティスト詳細へ
80年代のUKシーンが生み出した、ヒリヒリするようなストリート・ミュージック。
   

 イギリスの音楽が、アメリカのそれ以上にリアリティを感じさせることがある。研究熱心な国民性、そして「どう転がってもアメリカのデカさには勝てないんだから」みたいな負けん気のせいではないかと勝手に考えているのだけれど、いずれにしてもそこに本質が映し出されていることが少なくないのだ。たとえば、1988年に出た本作もそう。

 年末の掃除の際にCD棚からたまたま発掘し、ひさしぶりに聴いてひさしぶりにぶっ飛びました。20年もたってるのに、鮮度はしっかり保たれているから。いつの間にか曖昧になってしまった“ストリート感”って、つまりはこういうことなんだと思う。

 アッシャー・Dは、こののち何枚かアルバムを出すことになるブリティッシュ・ラッパーだ。ちなみにUKのユニット、ソー・ソリッド・クルームもアッシャー・Dという人がいるが、こちらはまったくの同名異人。対するダディ・フレディは、世界最速ラッパーとしてギネスにも掲載されたこともあるジャマイカ・トレンチタウン出身のベテラン。アッシャー・Dの才能に目をつけたUKヒップホップ・シーンの最重要プロデューサー、サイモン・ハリスが、両者を結びつけてこのアルバムが誕生したという流れだ。

 ところでヒップホップが盛り上がっていた80年代中期は、ラガマフィンが生まれた時代でもあった。ラガマフィンとは簡単にいえば現在のダンスホールのベースにあるもので、サンプリングや打ち込みによるエレクトリックなレゲエ・ビーツのこと。ヒップホップとの距離感がとても近く、たとえばビーニ・マンとか、最近でいえばヴァイブス・カーテルなどもこの潮流のなかから生まれてきている。で、世界で初めてこのカテゴリーをタイトルに使用した楽曲が、このアルバムからカットされたシングル「Ragamuffin Hip-Hop」ってわけ。

 アッシャー・Dには「ダンスホール界の貴公子」とかいう気持ち悪い異名もあるみたいだけれど、むしろ、ダディ・フレディも含めたここでの彼らは「不良」そのもの。ヒップホップを熟知したサイモン・ハリスの音づくりの妙もあって、横町のチンピラ的なワルの匂いをぷんぷん漂わせている。それが痛快なんだよね。たとえば真骨頂が、ハード・エッジなビートとテキトーなスクラッチが最高に気分なタイトル・トラック「Ragamuffin Hip Hop」。もうこの一曲だけでも、充分な存在価値があると断言したい。

 「Rough and Rugged」「Posse Rock & Move」「Don't Stop, Do It」「Run Come Follow Me」「Asher's Revenge」など、他曲もとことん優秀だ。どんどん熱を帯びていくトースティングと、根っこにオールドスクール・ヒップホップ的なテイストを持つ(ちょっとしたマヌケ感も味わい深い)ビートの絡みがめちゃめちゃかっこいい。

 ピンチャーズあたりを思い出させる典型的な初期ラガマフィンの「Africa」、メロディアスでポップなリディムが楽しい「In The Summertime」、ロック・ギターのフレーズをちょろっちょろっと絡ませた「Brutality」(たしか「Ragamuffin Hip Hop」に次いで当時シングル・カットされた)など、適度にバラエティがあって飽きさせないところも優秀。この時期のサイモン・ハリスの音づくりがいかにものすごかったか、改めて実感できるだろう。

 まあマイナーといえばマイナーなので、今後このアルバムが大々的にクローズ・アップされることはほとんどないと思われる。それに現在のダンスホールともだいぶ質感が違うけど、ヒリヒリとしたこの緊張感にはたまらないものがあるんですぜ。


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  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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