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インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
マット・ビアンコ 『Samba In Your Casa』
マット・ビアンコ  『Samba In Your Casa』

TRACK LIST
 1991 Release
ダウンロード価格
トラック各¥210(税込)

 
   

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「日産TEANAのCMに使われたあの曲」だけではなく、全体的にバランスのとれた秀作。
   

 80年代初頭のロンドン、パンク/ニュー・ウェイヴの流れのなかでファンカラティーナ(Funkalatina)という音楽が話題になったことがある。文字どおりファンクとラテンとニュー・ウェイヴをかけ合わせたような、踊れて知的でちょっとクールな(おもに白人による)音楽だ。ヘアカット100やバウ・ワウ・ワウ、モダン・ロマンスのようなポップ系からファンカポリタンみたいなちょいコアなバンドまで、いろんなバンドが雨後のタケノコのように現れたのだった。

 で、そんななかで異彩を放っていたのがブルー・ロンド・ア・ラ・ターク。82年のデビュー作『Chewing The Fat』は「I Spy (For the FBI)」とか「Klact-Oveeseds-Tene」など知的でクールな楽曲満載で、明らかに頭ひとつ抜きん出ていたのである。84年のセカンド『Bees Knees & Chicken Elbows』で、早くも解散してしまったのだけど。

 マット・ビアンコは、このバンドの残党にポーランドの女性シンガー、バーシアを加えて84年に始動したグループだ。最初、デビュー・シングルの「Sneaking Out The Backdoor」を12インチで聴いたときには、ちょいマヌケな感じもするかわいらしさに卒倒したもの(それは大げさ)。続いて出たファースト・アルバム『探偵物語』の軽めラテン路線もよかったしなあ。ただしオリジナル・メンバーが揃っていたのはこの一枚だけで、以後は中心人物のマーク・ライリーと、あとから加わったマーク・フィッシャーによるデュオ・グループとなるわけです。

 ってところでちょっと個人的見解を。マット・ビアンコをファンカラティーナと紹介している文章をたまに見るけど、僕の記憶からすれば彼らが「Sneaking Out The Backdoor」で出てきたときすでにファンカラティーナ・ブームは終わっていたように思う。重箱の隅をつつくようで恐縮だけど、それなりに思い入れがあったから気になってしまい。

 今回紹介する『サンバ・イン・ユア・カーサ』は、二人体制で『マット・ビアンコ』(86年)、『インディゴ』(88年)と秀作を放ってきた彼らの4作目。発表は91年。初期に少なからず感じられたニュー・ウェイヴの匂いは消え、というのは否定論ではなく、デビュー当時とはまた異なった魅力を持った作品になっている。

 なにが優れているって、ベタなくらいのわかりやすさですよ。ポップ・ミュージックとしての完成度がすごくて、過去の彼らやファンカラティーナのことを知らない(興味がない)人でも、存分に楽しめること間違いなし。
 ヒップホップのビート感とラップを取り入れたオープニングの「You're The Rhythm」「Macumba」、グラウンド・ビートを取り入れた「Strange Town」、『探偵物語』の時代を彷彿させる「The Night Has Just Begun」、ライト・ファンクの「True Love」、ボッサを取り入れた「You're The Rhythm (Brazil)」、柔らかい質感を持った「Lady Of My Mind」、そして現在のダンスフロアでかかっても違和感を感じさせないであろうタイトル・トラック「Samba In Your Casa」までヴァラエティ豊かだし、それでいて全体の統一感がしっかりとれているのがすごい。

 だけどやっぱり、いちばん訴求力を持っているのは日産のCMでもおなじみ「What A Fool Believes」だろうな。いわずと知れたドゥービー・ブラザーズのカヴァー。個人的にはオリジナルを超えていないと思っていたりもするんだけど、まあそれは個人的見解。あなたはどう感じるでしょうか?

 むしろカヴァーについていえば、注目すべきは「Let It Whip」だ。白人黒人混合のファンク・バンド、ダズ・バンドが82年にブレイクさせたダンス・クラシックのカヴァーだが、ファンク・トラックだったオリジナルを、ラテン風味を加えてリメイクしているのである。オリジナルを知ってる人は特に、チェックのしがいがありますぜ。


  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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