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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2007/04/25 アート・ガーファンクル


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
アート・ガーファンクル 『魅惑の宵』
アート・ガーファンクル 『魅惑の宵』

TRACK LIST
 2007 Release
ダウンロード価格
アルバム¥1,500(税込)
トラック各¥150(税込)

 
 
 
   

アーティスト詳細へ
5年ぶりの新作は、安心して長く聴ける究極のスタンダード集。
   

 ヒップホップやパンクのライヴを聴けば、いまでも体は反応する。外見的にはすっかりおじさんだが、それでもやっぱり反応するのだ。どちらもリアルタイムに体験してきたのだから、まあ当然といえば当然。年齢や頭髪の寂しさとは別なところで、それらのエッセンスは確実に、体内のどこかに刷り込まれているのであるよ。
 けれども反面でここ数年、落ち着いた音楽を聴きたいと思うことが多くなったのも事実なのだ。きっと、それが年齢を重ねるということ。若いころには「落ち着いちゃったらオシマイだぜ!」みたいな感じだったけれど、いざここまで到達してみると悪い気分ではない。
 同じような気持ちの人、いるんじゃないかな。

 ともあれ聴き手の僕がそうなのだから、演じ手にはそれ以上の心境の変化があるんだろうなと思う。だから、ロッド・スチュワートがスタンダード集『グレート・アメリカン・ソングブック』を出した気持ちもものすごくわかる。「ロックをやれる年齢は過ぎたから仕方なくそうした」わけではなく、そうしたいという欲求が彼のなかに生まれたのだ。

 アート・ガーファンクルもそうだったんじゃないかな。彼の場合はもともと落ち着いた音楽をやってきたわけだが、それでも今回は、 20〜50年代のスタンダード・ナンバーを歌うことで原点のようなところに立ち返りたかったんだと思う。声に衰えを感じさせる瞬間もあるけど気になるほどじゃないし、だいいち今年で66歳ですぜ。逆にいえば、66歳にして『ブレイクアウェイ』や『ウォーターマーク』の時代とほとんど変わらない声を出せるっていうのはすごいことなのだ。

 1975年にその『ブレイクアウェイ』を手がけたトップ・プロデューサー、リチャード・ペリーがプロデュースしている。ドラムスには旧友スティーヴ・ガッドも参加。そういったサポートも功を奏してか、ただスタンダードを歌いましたというだけではなく、「アート・ ガーファンクルのアルバムだな」としっかり感じさせてくれる。そればかりか選曲の幅が広いから「えッ」と驚かされるようなことも多く、とても聴きごたえがあるのだ。

 たとえばオープニングの「アイ・リメンバー・ユー」は、ドロシー・ラムーア、ウィリアム・ホールデンが主演した1942年の映画『艦隊入港』挿入歌。で、「アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー」は1941年にジミー・ドーシーが作曲した楽曲。シブいでしょ。とはいえ、アレンジが現代的だから無理なく聴けるのですよ。
 有名曲では、ピーチェス&ハーヴによるカヴァーも有名な1934年の同名映画挿入歌「レッツ・フォール・イン・ラヴ」が際立っているかな。気持ちが浮き立ってくるような、ポップな曲調が魅力。ミュージカル『マイ・フェア・レディ』に登場した「あの娘の顔に慣れてきた」もゆったりと落ち着いた仕上がりだ。
 それから注目曲は、アントニオ・カルロス・ジョビンの生んだ「静かな夜(コルコヴァード)」ジョアン・ジルベルトの名演でおなじみだが、ガーファンクルというフィルターを通すとまったく違った雰囲気が生まれて、すごくいい感じ。
 ボッサ・アレンジが施された楽曲としては、ジェームス・ガーランド、ジュディ・ガーランド主演による1941年の映画『美人劇場』主題歌をリメイクした「夢から覚めて」も秀逸ですね。

 全部で13曲。聴き終えると、「もう終わっちゃったのか」という印象が残る。でも経験値から断定するが、いいアルバムってたいていそんな思いを残すものだ。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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