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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2007/03/28 カーペンターズ


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
カーペンターズ 『ホライズン』
カーペンターズ 『ホライズン』

TRACK LIST
 1975 Release
ダウンロード価格
アルバム¥1,500(税込)
トラック各¥150(税込)

 
 
 
  

アーティスト詳細へ
笑っちゃうほどの健康的パワーで、思春期の心をがっちり捕えた“いい曲づくめ”のアルバム。
   

はじめて洋楽のシングル盤を買ったのは小学校6年の冬で、それがカーペンターズの「Please Mr. Postman」だった。記憶は定かじゃないけれど、もしかしたらビートルズのカバーだということすら当時は知らなかったかもしれない。なんか、そんな気がしてきた。でもそれはどうでもいいことで、とにかくはじめて聴いたときから、カーペンターズが歌うこの曲の快活で健康的なムードに僕はヤラれてしまったのだ。メロディラインはもとより、柔らかな中音が心地よい音処理(それはこの曲だけに限らない、カーペンターズの魅力でもある)までのすべてが完璧に思えて。

 スージー・クアトロを聴いてれば「こんな下品な音楽聴くのやめなさい!」とか言い出した親も、カーペンターズなら文句言わなかったしなあ。この兄弟の圧倒されるほど健康的なムードって、それはそれでものすごくパワフルだった気がする。

 だから、そこから半年を経た中学1年の夏に出たアルバム『Horizon』も、もちろん躊躇することなくゲットしたのだった。と書くのは簡単だが、13歳にとってLP一枚の2500円は貴重。親父の財布からしょっちゅう小銭を盗んではいたが、それでもやっぱり大金である。
 しかしそれでも、「Please Mr. Postman」のはいったそのアルバムには買うべき価値があると感じたってことだ。はじめて教わることになった英語の教科書が『New Horizon』だったので、なんとなく英語の参考書でも買ったような錯覚に陥った記憶もちらほら。ついでにいうと、思春期の少年にとってはジャケットにソフト・フォーカスで映るカレンの胸もやけに刺激が強かった気がする。
 あの程度で……純粋だったんだなー。あ、話題がずいぶん飛んじゃいました。

 しかしそんなわけなので、このアルバムはもしかしたら僕にとってはカーペンターズのベスト作品といえるかもしれない。
 「Please Mr. Postman」に続いてカットされた「Only Yesterday」がこれまたスンバラシイ曲だったし、イーグルスのカバー「Desperado」とか、タイトルどおりにシアワセ感満載の「Happy」とか、あるいはニール・セダカの「Solitaire」とか、いい曲ばっかり詰まってる印象がいまでもある。
 「Sing」「Yesterday Once More」を生んだ『Now & Then』あたりを最高傑作とみる人が多いことはわかってるし、それを否定する気もないけれど、記憶や体験の影響力ってそれほど大きいものなんですよね。

 その年、カーペンターズは日本に来た。貯金をはたいてチケットを2枚買ったのはいうまでもない。
 僕は小学1年で彼女をつくり、ふたりの関係をクラス全員に宣言したという早熟すぎる経験の持ち主だが、年を重ねるごとに疎遠になりつつあったその子との仲をどうにか修復したかったからだ。中学に入ってからまたよく会うようになっていたから、あと一歩で結果オーライって感じだった。幸いなことに、誘いを快く受け入れてくれたしね。

 ところがところが、前日になって一本の電話。
 「ごめん、あたし行けない」
 ソリャナイッショー! そんなシンプルに言うなよー。
 いや、心のどこかではそんなことになるんじゃないかと怯えてはいたのだ。でも、そうなったらそうなったで、やはりそれはショックなことであり(倉本聡風に)。

 それでどうしたかといえば、2歳年下の弟連れて行ったわけです。だってそれしか手段がなかったから。チクショー! しかしまあ、そんなことも含めていい思い出か。いまひさしぶりに聴いてるんだけど、「勘弁してくれー!」と叫びたくなるほど、いろんな記憶が浮かんでは消えていく。

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  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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