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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2007/02/14 オフコース


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
オフコース 『i(ai)〜オール・タイム・ベスト〜』
オフコース 『i(ai)〜オール・タイム・ベスト〜』

TRACK LIST
 2006 Release
ダウンロード価格
アルバム¥2,400(税込)
トラック各¥200(税込)

 
 
 
  

アーティスト詳細へ
誰の記憶にも張りついているに違いない、時代を超えた名曲の数々。
   

実家が昔、下宿をやっていた。離れの二階に四畳半が三つと六畳がひとつ。共同のトイレと流しとがあって、それぞれの部屋には大学生が暮らしていた。
 それこそ物心つく以前から、僕はそのお兄ちゃんたちに遊んでもらっていたのだが、なかでも印象に残っているのは1974年ごろ六畳間に越してきた「S本の兄ちゃん」だった。
 なぜならフォーク・ソングをやっていたS本の兄ちゃんの部屋には、2本のフォーク・ギターと1本のバンジョー、そしてモジュラー・ステレオとたくさんのレコードがあったからだ。そろそろ思春期にさしかかろうかという少年にとってはまさに夢の空間であり、その部屋に遊びに行ってはいろんなレコードを聴かせてもらった。
 いつも音楽を聴いているかギターを弾いているかしていて、彼女を連れてくることもあった長髪のS本の兄ちゃんは、両親や婆ちゃんからはめちゃめちゃ評判が悪かった。
 「無気力・無関心・無責任、典型的な三無主義だ」
 母と婆ちゃんはよくそんなことを言っていたが、僕は彼がそんな人間ではないことを知っていた。

 押さえつけられまくっていた僕にとってなにより魅力的だったのは、S本の兄ちゃんが押しつけがましい人間ではなかったことだ。
 「これ、いいジャケットでしょ」
 静かにそう言いながら、イーグルスの『呪われた夜』のジャケットを見せられた記憶が残っている。
 偉ぶらず、大人ぶらず、同じ目線で話をしてくれるところがうれしかったのだ。
 ある日、部屋のすみに立てかけてある一枚のレコードが目についた。ソフト・フォーカスの写真がレイアウトされた白いジャケットは、子どもの目にもおしゃれに見えた。
 『僕の贈りもの』
 それが僕と、オフコースとの出会いだった。
 聴かせてもらったが、一曲目の「僕の贈りもの」を聴いた時点で僕はもうすっかりやられてしまった。曲もすごくおしゃれで、それまで聴いたことのないような世界がそこにあったからだ。「水曜日の午後」とか「静かな昼さがり」みたいに大人っぽい曲を聴いていると、早く大きくなりたいと感じた。オフコースやS本の兄ちゃんぐらいの世代の日常は、僕にはおよびもつかないくらいにすてきなもののように思えたからだ。
 以来、10代を通して僕の近くにはオフコースのレコードがあった。時代を経るごとに音楽性は変わったけれど、どちらも好きだったな。それに「男の女々しさ」を隠さない歌詞表現が変わらない限り、このグループを容認できるという偉そうな考え方が僕のなかにはあった。

 なんだかいろんなことに葛藤していたんだけど、「逃すなチャンスを」を聴いて勇気づけられたのは13歳のときだ。
 家族で出かけた軽井沢、なんとなく入った喫茶店でかかっていた「眠れぬ夜」が涼しい空気とマッチしているように思えて、ものすごく感動したのは14歳のときだ。
 恋をして、みっともない失恋をして「悲しい男」になりきり、「まるっきり俺のことじゃん」とか思いながら「Yes-No」を聴いていたのは18歳のころだ。
 一浪して大学に入ったものの、なにもうまくいかなくて全員が敵に見えているとき、新宿駅で「I LOVE YOU」のポスターを見つけ立ち止まったのは20歳の夏だ。

 全然脚色してなくて、全部実話。でも僕が特別だったわけじゃなく、10〜20代に70年代から80年代を通過してきた人ならたいていは、オフコースと自分だけの記憶を抱えているんじゃないかと思う。
 ベスト・アルバム『i(ai)〜オール・タイム・ベスト〜』を聴いていたら、なんだかいろいろ思い出してきて泣けてきた。
 さっきから思いにまかせ、飛ばし飛ばしいろんな曲を聴いてる。いまかかっているのは「言葉にできない」です。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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「インナミリコメン」「印南敦史の武蔵野音楽日記」でおなじみの印南敦史の新作エッセイ『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)が発売されました。フリーライターの現実を赤裸裸に、そしてコミカルにつづった内容。専門書とは違って、笑いながら気軽に読めるので、音楽ライターになりたい人も、そうでない人も楽しめるはずですよ。ぜひチェックしてください

 






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