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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2006/11/22 ジョージ・ベンソン


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
ジョージ・ベンソン『ブリージン』
ジョージ・ベンソン『ブリージン』

TRACK LIST
 1976 Release
ダウンロード価格
アルバム¥1,200(税込)
トラック各¥150(税込)

 
 
 
 
* Deluxe Editionに収録
 

アーティスト詳細へ
ジョージ・ベンソンの未来を切り開いた、完成度抜群のクロスオーヴァー・アルバム。
   

このアルバムが出た1976年、僕は14歳の中学2年生だった。なんてったって思春期真っ盛りである。なにかにつけて大人ぶりたい時期である。そういうこと自体がガキの証明なのだが、ともあれ当時は早く40歳ぐらいになりたいとか考えていたような気がする。  なぜなら、40過ぎればすっかり人間として落ち着いている予定だったからだ。そして週末ともなれば高級なソファに身を埋め、コニャックかなんかを片手にジャズかなんかをゆったりと聴いているはずだったからだ。
 んで、14歳の僕がイメージする40歳が好んで聴いていた音楽のひとつがクロスオーヴァー(いまでいうフュージョン)であり、具体的にはジョージ・ベンソンのこのアルバムなのだった。おそらく大ヒットした「This Masquerade」の落ち着いた雰囲気がそう思わせたのだろうが、だとしたら腰が抜けるほど単純すぎる。発想のシンプルさに泣けてくる。

 マイルス・デイヴィスのグループにギタリストとして初めて参加し、その後もCTIレーベルなどで大活躍していたベンソンの、ワーナー移籍第一作。トミー・リピューマのプロデュース・ワークも功を奏して、それ以前よりもポップで親しみやすいアプローチを実現した作品だ。
 クインシー・ジョーンズが手がけた1980年作『ギヴ・ミー・ザ・ナイト』でその方向性は決定的なものになるわけで、そちらにしても文句のない仕上がりなのだけれど、バランス感覚としてはこちらの方が優れている。

 何度聴いても徹底的に爽やかすぎるボビー・ウーマック作品、「Breezin'」がまずは強力だ。ベンソンのプレイもさることながら、フィル・アップチャーチの的確なバッキングがまた素晴らしい。
 アルバム中唯一のヴォーカル・ナンバーであり、“歌うベンソン”を認知させた重要曲でもある「This Masquerade」は、レオン・ラッセルが生み出した名曲中の名曲。なんてこと、いまさら書く必要すらないかもしれないですけどね。彼の持ち味のひとつであるスキャットとギターのユニゾンがオープニングで聴けるが、もう悶絶するほどかっこよすぎです。
 疾走感が心地よい「Six To Four」はフィル・アップチャーチの作品で、彼はベースも担当。ロック・テイストなベンソンのギターもさることながら、ここでのポイントはロニー・フォスターが操るミニ・ムーグの音色でしょうか。ちなみに今じゃすっかり大物の彼も、このころはまだ若手でした。
 「Breezin'」「This Masquerade」も最高なんだけど、同時に絶対忘れてほしくないのが後半のオープニングでもある(LPでのB面1曲目)「Affirmation」ホセ・フェリシアーノのカヴァーだけれど、オリジナル・ヴァージョンとはまったく異なる雰囲気。スムースに流れていくメロディはまさに絶品。ポップなのに深みをも感じさせる、彼の最高傑作の一つであると断言してしまおう。
 アルバム中、唯一のオリジナル楽曲である「So This is Love?」は、ふわっと包み込むようなオープニングの展開が決め手。曲調はまったく違うんだけど、個人的にはアール・クルー「Living Inside Your Love」を思い出しちゃったりもするな。ハーヴィー・メイソンの的確なドラミング、ジョージ・ダルトのクラヴィネットも活きていて、絶対的なバランスがとてもいい。
 冒頭のストリングスが印象的な「Lady」は、ロニー・フォスターのペンによる楽曲。派手な展開があるわけではないけれど、ラストを飾るにふさわしいゆったりとしたナンバーだ。ラストのアドリブがさりげなくクール。

 いま、44歳である。14歳時の予定は見事なくらいに達成されずじまいである。コニャックなんかほとんど飲まないし、飲み屋では「いちばん芋くさい焼酎ください!」なんて注文していたりする。デスクワークだからソファどころか座り疲れが慢性化してるし、どこでどう道を誤ったのやら。
 しかしそれでも、このアルバムに対する思いだけは今でも変わらない。たぶん、一生聴き続けるだろうな。

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  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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