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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2006/11/08 マーヴィン・ゲイ


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
マーヴィン・ゲイ『アイ・ウォント・ユー』
マーヴィン・ゲイ『アイ・ウォント・ユー』

TRACK LIST
 1976 Release
ダウンロード価格
アルバム¥1,500(税込)
トラック各¥150(税込)

 
 
 
  

アーティスト詳細へ
マーヴィン・ゲイ特集ページ
『ホワッツ・ゴーイング・オン』もいいけど、こちらにも注目!
   

 マーヴィン・ゲイの最高傑作はと聞かれたとき、「そりゃー'71年の『ホワッツ・ゴーイング・オン』でしょーよ」と答える人は圧倒的に多いと思う。ヴェトナム戦争を題材にしたタイトル曲や環境問題に言及した「マーシー・マーシー・ミー(エコロジー)」、子どもを救おうと訴えかける「セイヴ・ザ・チルドレン」など、強いメッセージ色を備えた楽曲が凝縮された同作は音楽的な完成度もすばらしく、たしかに最高傑作の名にふさわしいからだ。拙著『ブラックミュージックこの一枚』にも記したとおり、このアルバムをネタにソウル・マニアを気取って女の子をくどく人(いや、たまにだけど確実に存在するのよ)はどうかと思うけど、それでも充実度を否定することは絶対にできない。

 が、それを承知のうえで異論を唱えるなら、なんておおげさなものではなくってあくまで僕個人の嗜好の問題なんだけど、「一枚だけ選べ」と言われたら、僕は迷わずこの『アイ・ウォント・ユー』を選ぶと思う。

 '73年に『レッツ・ゲット・イット・オン』を発表してから私生活を楽しんでいたマーヴィンが、次のアルバムの制作以来をモータウンから受けて急遽制作したという作品。と書けばチョチョッと作ってしまったように思えてしまうかもしれないけれど、とんでもない。これが完璧というしかない完成度の高さなのだ。

 キーになっているのは、60年代初頭からモータウン・レーベルのソングライターとして活動していたリオン・ウェア。彼が自分のアルバムのために制作したデモ・テープをえらく気に入ったマーヴィンが、全曲を採用したのである。当然ながらリオンはプロデューサーとしても大活躍していて、というよりも彼の色彩がきわめて濃厚。糸を引きそうなくらいトロトロで甘〜い世界観を見事に生み出しているのだ。
 僕がソウルに求めるものは「グルーヴ」と「哀しみ」と「エロさ」だんだけど、ここにはそのすべてがあるし、これらの要素をこのアルバム以上に表現できている作品には出会ったためしがない。

 何度聴いてもため息が出るのは、当時シングル・ヒットしたタイトル曲。コンガとストリングスが織り成す怪しくネットリしたムードがもうたまらなくって、これだけでご飯3杯はイケる(ちょっと表現が違う気が…)。
 もちろん他曲も優秀で、フックのメロディの切なさが魅力的な「カム・リヴ・ウィズ・ミー・エンジェル」、愛とか欲とかが渦巻いた世界を想像させるインストゥルメンタルの「アフター・ザ・ダンス」、奥行きのある音づくりが哀しげな雰囲気を盛り上げる「フィール・オーリ・マイ・ラヴ・インサイド」、1分ちょっとで終わってしまうのに強い印象を残す「アイ・ワナ・ビー・ホエア・ユー・アー」と佳曲揃い。

 折り返し地点で「アイ・ウォント・ユー」がちょっとだけ顔を出した後ではじまる「オール・ザ・ウェイ・アラウンド」、ゆったりとしたグルーヴが心地よい「シンス・アイ・ハッド・ユー」「アイ・ウォント・ユー」の構造を借用した「スーン・アイル・ビー・ラヴィング・ユー・アゲイン」「アイ・ウォント・ユー」のインスト、そして「アフター・ザ・ダンス」のヴォーカル・ヴァージョンと、後半も一時たりとも聴き逃せない美しい流れが構築されている。

 それから、このムードを作りあげている重要な要素にミュージシャンのスキルがある。ベースにチャック・レイニー、ウィルトン・フェルダーら、ドラムスにジェイムス・ギャドソン、ギターにデヴィッド・T・ウォーカー、レイ・パーカー・Jr、ジェイ・グレイドンら居並ぶメンツの表現力に見るべきものがあるのだ。そんなところも含めてひとつのムードが全体を貫いているだけに、一枚通して聴くべきアルバム。

 あと、もうひとつ注目したいのが黒人画家アーニー・バーンズによるアートワークだ。セクシーな全体像を貫く心地よいグルーヴを、見事に描いていると思う。
 余談ながら、当時はまだ僕が尊敬するDJの糸井五郎さんが活躍していた時期。「ソウル・フリーク」という番組でこのアルバムを取り上げたとき、あの独特の口調で「レコード・ジャケットもイカしているので壁に飾っておくのもいいかもしれませんねぃ!」とはなしていたのをはっきりとおぼえている。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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