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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2006/07/26UP スーパートランプ


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
スーパートランプ『ブレックファスト・イン・アメリカ』
スーパートランプ『ブレックファスト・イン・アメリカ』

TRACK LIST
 1979 Release
ダウンロード価格
アルバム\1050(税込)
トラック各¥150(税込)

 
 
 
  

アーティスト詳細へ
圧倒的な透明度。悩みのたぐいを忘れさせてくれる究極の「奥深いポップ」。
   

高校2年生の秋に家が大火事になった。隣の家の人が場所を貸してくれたので焼け残った荷物をそちらに運び、以後数日間、僕がひとりで整理をしていた。
 あのとき家族がどうしていたのかはおぼえていないが、とにかくひとり黙々と作業していた。とか書くと悲惨そうに聞こえるが、いや、火事で家を失うということは確実に悲惨なのだが、あのときはけっこう楽しかった。
 なぜってひとつ年上の従兄弟が大量のカセットテープとラジカセを持ってきてくれて、好きな音楽をたくさん聴けたからだ。

 ……って、火事の被害者としての緊張感がない話だが、起きちゃったものは仕方ないという思いはたしかにあったし。

 デレク・アンド・ザ・ドミノス「レイラ」とかアール・クルー『フィンガー・ペインティングス』とかといっしょに、スーパートランプ
『ブレックファスト・イン・アメリカ』のテープがあった。その年の春に出て以来、ロング・ヒットしていたアルバムだ。
 僕も夏前に買っていてお気にいりだったのだが、レコードが燃えちゃっただけに、別れた友人と再会したみたいな気分になった。
 そして隣の家の、柔らかい陽が差し込む半地下の部屋で聴くと、自分の部屋で聴いていたのとは違う印象を感じることができたのだった。

 「衝撃的」だとか、そういう仰々しい感じではない。のだけれど、もしもあのタイミングでこのアルバムを聴いていなかったら、当時の僕の精神状況はもっと壊滅的なものになっていたかもしれない。
 つまり、落ちつかせてもらえたわけです。

 '70年のファーストにはじまって、ジャケがややコワかった翌年の『Indelibly Stamped』「Bloody Well Right」「Dreamer」のヒットを生んだ'74年の出世作『Crime of the Century』、あるいは「Give a Little Bit」を生んだ'77年の『Even in the Quietest Moments...』など、それ以前の作品もよく聴いていた。
 基本的にはプログレッシヴ・ロックの範疇だが難しいことを考える必要もなく、耽美的なムードに浸ることができたからだ。

 だから、その持ち味を残しながらもいよいよ本格的にブレイクしたという印象のある『Breakfast In America』も大好きなアルバムだった。

 ラジカセのボタンを押したら、まず聞こえてきたのは「Gone Hollywood」だ。壮大で、どこか切ないその曲を聴いていたら「ま、いっか」という気分になった。
 キザったらしいけど、マジでその時の記憶は鮮明なのだ。「Goodbye Stranger」あたりもそうなのだけど、単に女々しいだけではない堂々とした意識を感じさせるからかもしれない。

 で、「The Logical Song」とタイトル曲の「Breakfast In America」ですよ。いわずと知れた大ヒット・シングル。この曲には、イギリスから世界を目指して成功をおさめた彼らのすべてがあるように
感じる。ひたすら完成度の高いポップ・ソングであり、でもただ消費されるだけのポップスとは明らかに違うなにかを備えている。

 だけど、もっと好きだったのは「Oh Darling」かな。この曲のキーボードの柔らかさが、当時のいろんなことを思い出させてくれるからだ。
 あとはハーモニカのフレーズがキメになった「Take The Long Way Home」とか、切なさを極めた「Lord Is It Mine」「Just Another Nervous Wreck」などなど、知識なんかなくても純粋に「いいなあ」と感じることができる曲ばかりだ。これを書くためにいま何年ぶりかで聴いているんだけど、本当にそう感じる。

 ハードでテクニカルで筋が通ってて、でもとことんポップでキャッチー。語弊はあるかもしれないけど、オフコースのアチラ版って感じですかね。ともあれ、全米で大ヒットした理由がよくわかるのだ。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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