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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2006/05/10UP LLクールJ


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
LLクールJ『Todd Smith』
LLクールJ『Todd Smith』

TRACK LIST
 ダウンロード価格
アルバム ¥1,500(税込)
トラック 各¥150(税込)

 
 
 
   

時代と無理なく歩調を合わせ、いまなお進化し続けるヴェテラン・ラッパー。
   

たぶん『Phenomenon』が出たときだった気がするから……と書きながらも記憶に自信が持てないのだけれど、もしそうだったなら9年も前のことなのであるが、とにかくそのころ一度だけ、LLと話をした。

  ただし当時、僕は彼にちょっと違和感を感じてもいた。もちろん否定が目的ではないのだが、'85年のデビュー作『RADIO』から『Mama Said Knock You Out』あたりまでの攻撃性をもろに体験しちゃった人間としては「丸くなったなあ」ってな印象は拭いにくかったのだ。若いころ尖りまくって客に灰皿投げつけてた居酒屋のオヤジが、いきなりOL向けのランチタイム始めちゃったみたいな感じというか(ひどい比喩だ)。

 だからそのときもちょっと否定的なことを言った気がするんだけど(詳細おぼえてません)、表情を変えるでもなく意地の悪い問いかけを鼻であしらったLLの返答が冴えてた。

 「笑わせんなよ、俺は10年以上やり続けてんだぜ」

 マジな話、負けたと思いました。なぜって「続けること」それ以上の説得力はないからだ。時代に媚びへつらうわけではなく、彼はただ時代と歩調を合わせながらやりたいことをやってるだけなのだ。ヒップホップが進化し続ける音楽である以上、考えてみればそれは至極当然なリアリズムなのだった。

 だからそれからは、彼の作品を存分に楽しんでいる。そもそも鼻にかかった声が好きだし、オールドスクール・マナーを適度に残したラップのスキルも文句なしだし、なにより時代を見据える視点を彼は持っている。だから余計な理屈さえ排除してしまえれば、嫌というほどラップの楽しさを実感できるのだ。

 で、今回もそうでした。

 難しいこと考える以前に、純粋に「いいなあ」と感じられる楽曲がぎっしり詰まっている。

 ラッパー歴20数年の実績をレペゼンするかのような勢いに満ちた「It's LL and Santana」「Preserve the Sexy」「What You Want」ギャップ・バンド「Outstanding」を下敷きにしたトラック上でメアリー・J・ブライジと絡む「Favorite Flavor」スパンダー・バレエ「True」を思い出させる(古いすか?)ギターも効果的な「Freeze」。ちょいモテおやじ(超死語)の魅力をジェイミー・フォックスとアピールする「Best Dress」や、ジニュワインと拮抗する「Ooh Wee」。あと112をフィーチャーした「Down the Aisle」や、ニーヨ「So Sick」逆フィーチャー・ヴァージョンなんかもたまりませんなあ。

 そして極めつけはジェニファー・ロペスとの息もぴったり合ったヒット・シングル「Control Myself」ですよ。すごくキャッチーな楽曲だけど、ここにはポップ・ミュージックとしてのヒップホップの可能性がはっきり表れていると僕は感じる。

 CDJが回転する場面が二箇所だけ出てくるこの曲のヴィデオ・クリップも、なんだかすごく自然に感じたなあ。

 ヒップホップはターンテーブルにアナログが基本なんだけど、「もうそういう次元じゃないだろ」って言われてるみたいで(かなり考えすぎかもしれないけど)。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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