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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2006/04/12UP ドナルド・フェイゲン


インナミレコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
ドナルド・フェイゲン『モーフ・ザ・キャット』
『モーフ・ザ・キャット』

TRACK LIST
  ダウンロード価格
トラック 各\150(税込)

 
   

変わらない、なのに新鮮、こんな作品、なかなか作れるものじゃない
   

音楽にしても美術にしても映画にしても、多感な時期には質の高い作品に触れておくべきだと思っている。「その時期になにを知ったか」は、確実に後々まで影響を与えるものだから。
 で、そういう意味で僕がよかったなと思えるのは、スティーリー・ダンマイケル・フランクスの全盛時代に思春期を送ることができたことだ。それは少なからず、僕の自我形成に役立ったと思う。

 いつの時代にも、そしてどんなバック・ミュージシャンを使ったとしても、一聴しただけで「あ、これだ」と思える音を出せる。スティーリー・ダンマイケル・フランクスはそんなミュージシャンだった。書くのは簡単だけど、なかなかできることじゃない。だからこそ、とりわけ前者の洗練されたインパクトの大きさはものすごく、かなりの頻度でレコードを聴き漁った記憶がある。おかげで彼らのすべてのアルバムはいまでも一年に何度かは取り出す愛聴盤だし、片割れであるドナルド・フェイゲンのソロ・アルバムにしてもそれは同じだった。

 なぜって、ドナルド・フェイゲンのソロにはソロでありながら、スティーリー・ダンとまったく同じ世界があったから。一枚目の『ナイトフライ』にしても二枚目の『カマリキアド』にしても。
 もう一方のウォルター・ベッカーのソロだって決して悪くはないんだけど、それでもドナルド・フェイゲンは存在自体が大きかった。ただ現実的に『カマキリアド』から13年もたっているだけに、また新作が出るだなんて思っていなかったのも事実。
「仕事嫌いのミュージシャン、たとえばドナルド・フェイゲンの新譜が出たようなもんです」
 去年、11年ぶりに子どもが生まれたとき、照れ隠しにそんなことを口走っていたし。

 ところが、出たんですね。
 そしてそこには、紛れもないスティーリー・ダン・サウンドがあった。オープニングの「Morph The Cat」を聴いた時点で、マジで「生きててトクした」と感じた。決しておおげさではなく、そう思わせるだけの価値が彼の音にはあるということだ。

 ヒュー・マクラッケンのギターがクールなH Gang、フェイゲンが弾くフェンダー・ローズがポイントになった「Brite Nitegown」「Security John」、名曲「Do It Again」を彷佛させるグルーヴが心地よい「What I Do」、同じく名曲「Aja」と同質の「The Great Pagoda Funn」、どの曲だったか、でもやっぱりどこかで聴いたような気がする「The Night Belongs To Mona」、緊張感に満ちた「Mary Shut The Garden Door」、そしてラストを締めくくる「Morph The Cat」のリプライズまで、全9曲のうち、ひとつも無駄な曲がなく、すべての楽曲が「そこになくてはいけない」と感じさせるところがすごい。

 そしてもっとすごいのは、「名曲Do It Againを彷佛させ」たり「同じく名曲Ajaと同質」だったり「どこかで聴いたような気がする」にもかかわらず、懐古趣味とはまったく別の次元からとんでもない新鮮さを感じさせてくれるということだ。その証拠に、一日6回繰り返し聴いても、「もう一回聴きたい」と感じた。で、その日は結局11回聴いた。いまの時代、ここまでリスナーを能動的にさせる作品ってほとんどないと思う。
 スティーリー・ダンを知っている人は思わずニヤつくだろうし、知らない世代にもピンとくるだろう。
 10代にも20代にも30代にも40代にも50代にも60代にも(70〜80代も可)フィットする音。
 音楽の好みは人それぞれだと思うから、僕は「聴かなくてはいけない」みたいな表現は避けるようにしている。のだけれど、これだけは別にさせてください。強くいいたいのだけれど、絶対に聴き逃さないでほしいと思う。
 きっと満足できるから。

お知らせ 多方面で活躍中の音楽ライター・印南敦史のブログ「印南敦史の武蔵野音楽日記」がついにOPEN!

  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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「インナミリコメン」「印南敦史の武蔵野音楽日記」でおなじみの印南敦史の新作エッセイ『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)が発売されました。フリーライターの現実を赤裸裸に、そしてコミカルにつづった内容。専門書とは違って、笑いながら気軽に読めるので、音楽ライターになりたい人も、そうでない人も楽しめるはずですよ。ぜひチェックしてください

 






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