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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2006/01/25UP セックス・ピストルズ


インナミリコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
セックス・ピストルズ『Never Mind The Bollocks』
『Never Mind The Bollocks』

TRACK LIST
  ダウンロード価格 
トラック\150(税込)
アルバム\1,500(税込)
 
 
 
  01. Holidays In The Sun >>試聴  
  02. Bodies >>試聴  
  03. No Feelings >>試聴  
  04. Liar >>試聴  
  05. God Save The Queen >>試聴  
  06. Problems >>試聴  
  07. Seventeen >>試聴  
  08. Anarchy In The UK >>試聴  
  09. Submission >>試聴  
  10. Pretty Vacant >>試聴  
  11. New York >>試聴  
  12. EMI (Unlimited Edition) >>試聴  

パンク30周年を象徴する、決して色褪せない青春のロックンロール
   

ロッキード事件があってピンク・レディーが出てきてザ・バンドが解散した1976年に、僕は14歳だった。
  これだけ状況がとっちらかっていたら価値観がぐしゃぐしゃになっても無理はなく、自分を見つめなおすにつけ「ああいう時代に育ったんだから、ダメなオトナになってもそりゃ仕方ねえよなぁ」などと思ったりもするのだが、それはともかく状況をさらに引っかきまわしたのが同じ年にロンドンで起こったパンク・ムーヴメントだった。

 ニューヨークのザ・ヴェルベット・アンダーグラウンドやデトロイトのイギー・ポップ・アンド・ザ・ストゥージズなどもそれ以前に聴いてはいたが、それが ロンドンのパンクにつながったのだという認識なんか当時はなかった。ただ、なんだか汚い格好をしたやつらがロンドンで騒ぎはじめたという感じだった。
  ましてや当時、僕はアメリカン・ロックにハマッていたのだ。イーグルスやドゥービー・ブラザーズのレコードを聴いては、晴れやかなカリフォルニアに思いを抱いていたのだ。にもかかわらず、イメージ的には対極にあるロンドン・パンクは、なぜだかすごく気になった。

 まあでも、当然といえば当然なのかな。なぜって当時、雑誌を見てもラジオを聴いても、パンクの話題を避けて通ることはできなかったから。それくらい、時代がパンクに振り回されていたから(少なくとも僕にはそう見えた)。
  それに歌詞でどんなことをいってたのかはともかく、「アナーキー・イン・ザ・UK」は単純にかっこよかった。いま思えばあれはとても周到に仕組まれた曲で、発散しきれないパワーを持て余す若者を焚きつけるフックが随所に隠れていたのだ。だから聴けばいつも、気持ちがたかぶるのがわかった。

 「シド・ヴィシャスがベース弾いてるときのポーズが好きなんだよ」
  僕がいうと、隣の中学校に通っていたKは興奮気味で反応した。
  「お前、わかってんねえ!そうなんだよピストルズはシドなんだよ!シドのポーズが、シドそのものがかっこいいんだよ!」
  ピンクレディーがデビューした翌年。
  ピストルズのアルバム『勝手にしやがれ』を買ったというKの部屋を、録音用のカセットテープ持参で襲撃したときのことだ。
  Kは僕のシド発言がことのほか気に入ったようで、相変わらず興奮したままレコードに針を落とした。
  「さらばベルリンの陽」が聴こえてきたとき、やつの興奮が僕に伝染した。頭をガツンと殴られたような、それでいて爽快な、不思議な気持ちだった。
  一直線な「ボディーズ」、スティーヴ・ジョーンズのギターがかっこいい「分かってたまるか」、冒頭のジョニー・ロットンのボーカルに妙な引きがある「ライアー」、ラジオで何度も聴いていた「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」、そして「怒りの日」。
  狭い四畳半であぐらをかいて、かっぱえびせんをかじりながら、僕とKは無言で体を揺すった。

 最高!
  最悪なのはレコードだった。そこまで聴いたら、B面に裏返さなきゃならなかったから。
  そんなことで興奮を分断してほしくないと思わせるほど、ピストルズのロックンロールには説得力があったのだ。

 そしてB面。
  「セヴンティーン」が聴こえてきて、それからいよいよ「アナーキー・イン・ザ・UK」。いちばん簡単そうだからという理由で、バンドを組んだ数年後に コピーした「サブミッション」、3番目に好きだった「プリティ・ヴェイカント」と8番目に好きだった「ニューヨーク」、そして悪意をむき出しにした「拝啓EMI殿」。
  どれもまったく飽きがこなくて、コピーしてもらったテープを何度も何度も聴いた。
  そんなわけで、『勝手にしやがれ』は僕にとって青春のレコードのひとつになった。

 Kとは結局、それから数ヵ月後につまらない喧嘩をして別れ別れになった。
  いまごろどうしているのかわからないけど、機会があったらまた会いたい気もする。
  なにしろ、パンク誕生から30年もたっているんだから。
  お互い、30も年をとったのだから。

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  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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