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総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2006/01/11UP ポール・アンカ


インナミリコメン 印南敦史の選ぶオススメの1枚
ポール・アンカ『Rock Swings』
デューク・エイセス『焼跡のジャズVol.1』

TRACK LIST
  ダウンロード価格 
トラック\150(税込)
アルバム\1,500(税込)
 
 
 
  01. It's My Life>>試聴  
  02. TRUE>>試聴  
  03. Eye Of The Tiger>>試聴  
  04. Everybody Hurts>>試聴  
  05. Wonderwall>>試聴  
  06. Black Hole Sun>>試聴  
  07. It's A Sin>>試聴  
  08. Jump>>試聴  
  09. Smells Like Teen Spirit>>試聴  
  10. Hello>>試聴  
  11. Eyes Without A Face>>試聴  
  12. Lovecats>>試聴  
  13. The Way You Make Me Feel>>試聴  
  14. Tears In Heaven>>試聴  

この人、見なおした! ロックの名曲を完璧にジャズ・アレンジ!
   

 ポール・アンカの名を聞いて僕が思い出すのは、「ダイアナ」とか「君はわが運命」などのポップ・スタンダードだ。つまり、たまに聴きたくなったときそれらのヒット曲をなぞれば充分に満足できるアーティストであり、創造性とかイメージを覆されるほどの劇的な変化とか、そういうものを求める必要もない人なのである。
もちろん否定的な意味ではないっすよ。「ダイアナ」聴いたら「ポール・アンカを聴いたなあ」という気分になってそれなりに満足できるのだから、それで充分だったというだけの話だ。

 だから新作が出たといっても、本音をいえばものすごく期待したわけではなかった。なかったのだが、実際に聴いてみたら期待していなかったぶん余計に驚いた。というよりも、発想の斬新さと完成度の高さに感動したといった方がいいかな。
 なぜって1941年生まれで今年65歳になるポール・アンカ、今回の『Rock Swings』というアルバムではロックの名曲の数々をジャズ・ボーカル・ナンバーにアレンジして歌っているのである。

 まあ、発想としては斬新というほどではないのかもしれない。そのテの異種格闘技は他ジャンルでこれまでにいくらでも行なわれてきたし、ロックをジャズにアレンジしたと聞いただけでは「ほう、そうですか」というしかないわけだから。
 発想という意味では、ね。
 しかし、それでもこの作品が優秀だと断言したいのは、発想のみならず完成度においても群を抜いているからだ。ほら、斬新なだけで中身が伴っていない作品っていうのも少なくないでしょ。でも、これに関してはそれがあてはまらない。というより、本当によくできている。
 ロック・ファンに新鮮さを与えることができるだけでなく、なんの予備知識も与えないままジャズ・ファンに聴かせたとしても、充分に納得させられるだけの完璧な仕上がりなのだ。
 事実、行きつけのジャズ・バーにこのCDを持っていって強制的に聴かせたら、店主も常連さんたちも感心してましたぜ。ちょっと、うれしかったです。

 ゆったりとした余裕を感じさせるボーカル能力もさることながら、僕が驚いたのは自身で手がけているらしい彼のアレンジ能力の高さだ。つまり単に有名曲を「ジャズっぽく」再演するのではなく、別な曲といっていいほどの完璧なアレンジを施しているのである。
 「Eye Of The Tiger」はアメリカン・ハード・ロック・バンド、サヴァイヴァーの大ヒット曲。そう、映画『ロッキー3』のテーマにもなったアレだ。だが、ただでさえ強いインパクトを持つ原曲のイメージを持ったまま聴けば、「あれ、全然違う曲じゃん」と最初に感じ、次いでフック部分などで「ああ、やっぱりあの曲なのか」と感じることになるだろう。そこがツボだ。
Jump」にしても同じ。もちろんヴァン・ヘイレンの代表曲なわけだが、これがビッグ・バンド・スタイルの豪華な楽曲に様変わりしているのだ。「I say jump!」というフック部分には力強い男性コーラスが効果的に活かされており、「なるほど! こういう手段があったか」と驚かされる。

 もちろん他の曲にもすべて、そうした驚きがある。R.E.M.の「Everybody Hurts」やサウンド・ガーデンの「Black Hole Sun」やペット・ショップ・ボーイズの「It's A Sin」は思いっきりムーディなバラードに、オアシスの「Wonderwall」やライオネル・リッチーの「Hello」は楽しいジャンプ・ナンバーに、ボン・ジョヴィの「It's My Life」はタキシードが似合いそうな雰囲気に、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」はカクテル・ムード満載のゆったりとしたムードに……と全曲に予想外の仕掛けが施されているので、何度聴いても楽しめるのだ。
エリック・クラプトンの「Tears In Heaven」を過度に手を加えず純粋に歌っている点も、曲の特徴を理解した名アレンジというしかないですねー。

 本当の意味でのリメイクとは、こういう作品のことをさすのではないだろうか。ホントにいいアルバムだと思う。
 50年近いキャリアはダテじゃないっすね。いや、ホントに参りました! そして、「ホントかな〜?」と疑う人にこそ、ぜひとも聴いてほしいと思います。


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  1962年東京出身。雑誌、ラジオなどで活躍中のエッセイスト/フリーライター/編集者/DJ。音楽を中心としつつ、食からバカネタまでに広く精通。すべてのカテゴリーにおいてマニアックに暴走することなく、独自の語り口でわかりやすく伝えることを信条としている。最新刊は『音楽系で行こう!』(ロコモーション・パブリッシング)。その他、『 あの日、ディスコが教えてくれた多くのこと』『ブラックミュージックこの一枚』(知恵の森文庫)など著作多数。
『TITLe』(文芸春秋)『ラピタ』(小学館)『BRIO』(光文社)『モノ・マガジン』(ワールド・フォト・プレス)『月刊PLAYBOY』(集英社)など、多くの雑誌に執筆。TBSラジオ『ストリーム』出演中。
脱力系日記が人気のウェブサイトは www.innami-atsushi.com/

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