総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > インナミリコメン > 2005/01/26UP サディスティック・ミカ・バンド
「おしゃれな人たちだなあ」と思った。 サディスティック・ミカ・バンドの『黒船』のジャケットを見たときのことだ。 たしか小学校6年のころで、フォーク全盛だった当時、街にはおしゃれなお兄さんお姉さんがたくさんいた。でもそんななかにあっても、ミカ・バンドは ヴィジュアル的にも他者を大きく引き離すなにかを持っていたのだ。 つまり音を聴く以前に、「特別なニュアンス」を感じさせた。そしてレコードに耳を傾けてみたとき、大きな確信に包まれた。日本を代表するミュージシャンが集結していたこのバンドは、最初から違っていたのだということがはっきりとわかった。 「違っていた」ものの実態とは、おそらく立脚点、コンセプト、テクニック、その他諸々。70年代にそれらをここまで明確にしていたのは、ミカ・バンド を含めて数グループだけだったといっても過言ではない。
サディスティック・ミカ・バンドは、先端をいくセンスとテクニックによって、70年代国産ロックを明らかに進歩させたバンドである。 加藤和彦と奥さんのミカ、そしてつのだ☆ひろによって結成されたのが1971年。翌年に設立したドーナツ・レーベルからミカ・バンド名義で「サイクリング・ブギ」をリリースし、ギターに高中正義、ベースに小原礼、つのだ☆ひろにかわってドラムに高橋幸宏が加わってサディスティック・ミカ・バンドと名乗るようになった。余談だが、「行動がアグレッシヴだったミカのことを『サディスティックだね』と加藤がいったことからこの名前がついたのだ」と、当時なにかの雑誌に掲載されていた加藤のインタヴューで読んだ記憶がある。 それはともかく、彼らは73年にファースト・アルバム『サディスティック・ミカ・バンド』をリリース。この過程でキーボードの今井裕が加わったり高中が抜けたり復帰したりとメンバーに入れ替えがあったが、その後6人編成に落ち着く。で、'74年にリリースされたセカンド・アルバムがこの『黒船』である。 タイトルどおり、「時代」をコンセプトとした作品。この時代にコンセプト・アルバムをつくるというのは、それだけでとても先進的なことだった。プロデュースを手がけたのはビートルズの『ホワイト・アルバム』、ピンクフロイド『狂気』などの名作を手がけたことで知られるクリス・トーマス。彼を東京に招き、2000万円の予算と400時間のレコーディング期間を費やして制作されている。と、かんたんに書いてるけど、それってすごいこと。
長いイントロからはじまるオープニングの「墨絵の国へ」「何かが海をやってくる」の幻想的でプログレッシヴなムードに続き、名曲「タイムマシンにお願い」に突入する展開がまずいい。ここでのミカのヴォーカルのはっちゃけ具合は、とにかく気持ちよすぎるとしかいえない。 3パートにわかれた「黒船」はインストゥルメンタルだが、なかでもファンキーな「嘉永6年6月3日」は彼らのテクニックがはっきりと反映された重要な楽曲だ。 ファンキーな側面としては、チンドン屋を再現した「よろしくどうぞ」に続く「どんたく」も捨てがたいところ。日本の伝統と黒人音楽のエッセンスが融合……なんて表現はあまりにも陳腐すぎるけど、同じく「塀までひとっとび」と「颱風歌」もめちゃくちゃかっこいいファンクに仕上がっている。また一方、加藤和彦ならではの哀愁が漂いまくったバラードの「四季頌歌」と「さようなら」にもまた見逃せないところ。つまり「捨て曲」が一切ないということでもあり、こういうトータル・アルバムが30年も前につくられたことにはいまなお驚きを感じるばかりだ。 いうまでもなく、ハイ・クオリティの裏づけとなっている大きな要素のひとつが各人の卓越したテクニックだ。クリス・トーマスに注目されていたという高中正義のテクニカルでクールなギター、主張しすぎるわけではないのに存在感を意識させる高橋幸宏のドラム、ファンキーな要素を加える小原礼が、特に重要な位置を占めている。そのせいもあってか彼らはイギリスでも高い評価を受けていて、『黒船』がリリースされた年にはロキシー・ミュージックの全英ツアーでオープニング・アクトを務めているほか、翌年には『黒船』も『Black Ship』というタイトルでイギリス発売されている。
なお、この後ベースが小原礼から後藤次利に交代したが、加藤和彦の離婚に伴ってバンドは75年に解散。高中、高橋、今井、後藤の4人はしばらくの間、サディティックスとして活動することになった。 そして85年には松任谷由実、加藤和彦、高中正義、高橋幸宏、後藤次利、坂本龍一という構成の「サディスティック・ユーニン・バンド」として一日だけ再結成。次いで85年には桐島かれん、加藤和彦、高中正義、小原礼、高橋幸宏によって期間限定の復活を遂げた。