総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > 富澤一誠のフォークが好き! > 2008/05/28 チューリップ
チューリップの「心の旅」は1973年4月20日に発売された。そのときリーダーの財津和夫は必死だった。 〈今度の曲がまた売れなければ、どうなってしまうか、わからない〉 そう考えて彼は、ひたすら売れ線を狙って一生懸命に「心の旅」を作ったのだった。 チューリップは、72年6月5日に「魔法の黄色い靴」でデビューしたが、地元福岡以外ではさっぱり売れなかった。そのころは、吉田拓郎に代表されるメッセージ・フォークの全盛で、ビートルズに影響を受けたチューリップ・サウンドは、当時のミュージック・シーンにおいては異色だったからだ。 72年9月20日に発売されたシングル第2弾「一人の部屋」も売れなかった。それだけに正念場でつらい時期だった。 財津はともすれば沈みがちになる自分の気持ちを抑え、友だちに見送られて故郷を後にした日のことを思い出していた。彼にはそのころ“恋人”がいた。23歳だった。結婚適齢期の彼女に対し、彼は同じ23歳でもゼロから出発しようとしていた。彼女を待たせるわけにはいかなかった。当然別れはやって来た。そんな1年半ほど前のことを思い出しながら、彼は必死に曲を作り上げた。それが「心の旅」だった。 「とにかく売れ線を狙って一生懸命に作りました。照れくさいんですけど、福岡を出るときの心境を原点にして……」 彼のそんな思いが実ったのか、「心の旅」は発売後2カ月後ぐらいから急激に売れ始め、そして9月10日にはついにヒット・チャートのトップになったのだ。72年2月5日に上京したチューリップは、1年7カ月めにして地元・福岡に錦を飾ることができたのである。