総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > 富澤一誠のフォークが好き! > 2006/04/26 石川セリ
“化ける”という音楽業界用語がある。これはあらかじめ計算あるいは予想していた以上のことが起きる、という意味だ。 前田一郎さんにとって、石川セリの「ダンスはうまく踊れない」(1977年4月21日発売)はそんな“化けた”曲だったという。彼は当時、井上陽水の所属事務所・なかよしグループで制作ディレクターをしていた。あるとき石川セリの制作担当者から、陽水にセリのシングル用の曲の依頼があった。そして陽水は「ダンスはうまく踊れない」と「気まぐれ」の2曲を書き上げた。前田さんは語る。 「曲を書き上げた段階で井上さん自身は、“気まぐれ”がA面候補だと思ったみたいです。ですから、デモ・テープを作るときに、リズム、パーカッションなどをきっちりと入れてイメージは完璧にできていました。一方、“ダンスはうまく踊れない”の方はどうせB面だからということなので、デモ・テープはシンプルに作ってしまいました」 レコーディングにあたって、前田さんもA面は「気まぐれ」だと思っていたので、初めからこの曲にかける意気込みは違っていた。 「“気まぐれ”はA面候補だから当然力が入るわけです。ところが、“ダンスはうまく踊れない”の方はB面だから制作費も3分の1ぐらいに抑えて…。セリさん自身もガイド・ボーカルを入れるときに、どうせB面だからとリラックスしてうたっていました」 しかし、レコーディングが進むにつれて、曲の評価が逆転してしまったという。 「弦を入れている最中にA面は“ダンスはうまく踊れない”だなと思ったんです。なぜだかわからないんですが、計算していた以上に曲のイメージが良くなって…。だから、本番の歌入れのときは、セリさんもこっちがA面だっていう気になっていたので気合いが入っていました」 こうして“B面候補”だった「ダンスはうまく踊れない」は“A面”となって、発売されたところ見事にヒットしてしまったのだ。なお、「ダンスはうまく踊れない」は82年に高樹澪の歌でリバイバル・ヒットしたことを付け加えておく。