総合TOP > お役立ちインデックス > OnGenアーカイブス > 富澤一誠のフォークが好き!> 2005/08/24 荒井由実
ユーミンこと荒井由実(現在は松任谷由実)の出現は衝撃的だった。いや、正確には“異質”だったといった方がいいだろう。
私が初めてユーミンに会ったのは、TBSラジオのMディレクターから「今度東芝レコードからデビューする女の子で、いいのがいるのだが、聴いてみてもし良かったら、プロジェクト・チームに入って、何かアドバイスをしてくれ」と頼まれたからだ。 プロジェクト・チームでの私の役割は“キャッチ・コピー”をどうするかということだった。それまでのフォークとは180度も異質な彼女のポップな歌を印象づけるには、どうしてもわかりやすいキャッチ・コピーが必要だったのだ。 キャッチ・コピーを考えることに疲れたときに、たまたま彼女のアルバムを聴いてみたら、なぜか精神的に落ち着いてきた。変な理屈はいわないし、だからこそ精神鎮痛剤にもなる。そんな感じだった。これこそ彼女の音楽の魅力だと思った。そう思ったとき、私の脳裏に“新感覚派”という言葉が浮かんだ。 “新感覚派ミュージック”はファースト・アルバム『ひこうき雲』のキャッチ・コピーに採用され、定義はパンフレットに印刷された。つまり、キャッチ・コピーが必要なほど、フォーク全盛の折、彼女の音楽は新しかった、というわけだ。
新しさ― については、彼女自身も自信を持っていた。「五輪真弓さんの歌は自分のことを考えながら歌にしているので、聴きながら考える音楽といえるけれども、私のは全然違うのよ。聴きながら考えるっていうよりも、軽く聴けるというか、イージー・リスニングかな。イージー・リスニングといっても薄っぺらな意味ではなくて、気持ちよく聴けるっていうのかな。朝起きてふと聴きたくなるような、夜眠るときにふと聴きたくなるような…それが私の音楽ね」
彼女はそう語り、自分の音楽はフォークとは違うということを明確にするために、自らの音楽を“イージー・リスニング”と規定した。これはいいえて妙だった。アルバム『ひこうき雲』は今聴いても新しいところがすごいと言わざるをえない。