今回は、イギリスが誇るリヴィング・レジェンド、ニュー・オーダーをピックアップします。歴史も長く、彼らにまつわる文献も多数出ていますので、いわゆるバイオ的な流れは無視して、プロデューサーに焦点を当てながら、少し違った形で紹介できたらと思っています。その題材として選んだのは、’87年にリリースされた2枚組のベストアルバム『
サブスタンス』。
映画『24アワー・ パーティ・ピープル』をご覧になった方は、彼らを排出したFACTORYというレーベルが如何に特殊で、ある意味、運命共同体であったかが解ると思います。それだけでなく、ニュー・オーダーというグループの発生自体が、前身である
ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスの死(’80年)によってもたらされたという皮肉なスタートを切っているのです。この『
サブスタンス』は、結成からのシングルカット順にトラックリストが作成されているので、サウンドの変遷もハッキリと感じ取れます。内容的には、12インチ・コレクションなんですが、1枚目がシングル(「
Temptation」と「
Confusion」は新たに再録音されたもので、「
Ceremony」はギリアン・ギルバート参加後の音源を使用)、2枚目がそのB面集という体裁をとっています。そのため、今回はディスク1(12曲目まで)を中心に書きますね。
ジョイ・ディヴィジョン時代に書かれた「
Ceremony」で幕を開けるので、プロデュースはFACTORYを語る上では避けて通れないマーティン・ハネット(’91年没)が手掛けています。次の「
Everything's Gone Green」もマーティン・ハネットなんですが、ニュー・オーダーの面々は’81年にNYを訪れ、クラブ・シーンに感化されてエレクトロなサウンドに傾倒し始めます。そのため、この曲では微かな変化を感じ取れます。そして「
Temptation」からは完全にセルフ・プロデュースとなります。ニュー・オーダーの元を離れたマーティン・ハネットは、のちに
ハッピー・マンデーズでFACTORYに多大な恩恵をもたらすのですが、その辺は置いときまして、クラブ路線は「
Blue Monday」で花開きます。
「
Confusion」と「
Thieves Like Us」はアーサー・ベイカーとの共作。アーサー・ベイカーといえば、朝のバン屋さん(C
大伴良則さん)、もといヒップホップ/エレクトロ/ハウスと多方面に渡って第一人者的存在で、門下生にはジュニア・ヴァスケスやダニー・クリヴィットなどNYクラブ・シーンの重鎮はみんなお世話になっている大御所です。そのため、「
Confusion」ではジェリービーン(
マドンナ亭参照)にジョン・ロビーも関わっています。アーサー・ベイカーの右腕的存在で、キーボーディストでもあるジョン・ロビーがプロデュースしたのが「
Shellshock」で、「
Subculture」ではリミックスを手掛けています。あと、プロデュースではないですが、
マドンナなどでお馴染みのシェップ・ペティボーンが「
Bizarre Love Triangle」を手掛けています。彼も元をたどればアーサー・ベイカー繋がりで世に出て来た人なんですよね。
他に外部のプロデューサーなのが、「
True
Faith」のスティーヴン・ヘイグです。
ペット・ショップ・ボーイズなどを手掛け、エレポップ的な作品をやらせたらピカイチなのでイギリスのプロデューサーと思っている人も多いんですが、実は昔ジュールズ・シアー率いるジュールス・アンド・ザ・ポラー・ベアーズにいたアメリカ人なんですね。このあとも、ニュー・オーダーとは「
World
In Motion」や『リパブリック』、ジ・アザー・トゥー(スティーヴン・モリスとギリアン・ギルバート)では『ジ・アザー・トゥー・ユー』で組んでいるので、かなり相性はいいです。
というわけで、まるっきりUKの音なのに、意外とアメリカの血が注入されていることも不思議です。「
Perfect
Kiss」まではアルバムからのシングルカットがなかったので、アルバムを揃えてもシングルが聴けなかったのですが、このアルバムでほぼ解消(洩れてる曲もありますけどね)された人も多いハズ。その後の活動も重要ですが、是非とも初期から振り返って欲しい人達です。ちなみに個人的なベストは、「
True Faith」のカップリングだったのに’95年にはシングル化された「
1963」です。
最後に、FACTORYの総帥であるトニー・ウィルソンが昨年亡くなり、ピーター・フックまで活動を共にしないなんて言い出して悲しいことになっています。ギリアン・ギルバートも’01年にグループを離れてるし、なんだかファンとして切ないですね。特にクラブ系には影響を受けている人が大勢いて、BTなんて「Last
Moment Of Clarity」という曲で、自分が弾いてるのに わざわざ“ピーター・フック・スタイル・ベース”とクレジットしてたんですよね。ホントに今後の動向が気になります。