前回、PWLの全盛期を支えた女性=
カイリー・ミノーグを取り上げましたので、今回は男性、リック・アストリーをピックアップしたいと思います。80年代後半に一世を風靡した単なるアイドルと思いきや、ストック/エイトキン/ウォーターマン(以下S/A/W)サウンドを纏っていたため意外と気付いていない人も多いんですが、ブルー・アイド・ソウルの実力派シンガーでもあります。
しかしながら、カイリーのようにうまく方向転換が成功しなかったため、’93年の4thアルバム『Body & Soul』にて一旦表舞台から姿を消してしまいます。再び登場したのは、’01年のシングル「Sleeping」(リミキサーはトッド・テリー)。こちらを引っさげ、5thアルバム『Keep It Turned On』もリリースしたんですが、結果は芳しくなく再び’05年まで沈黙が保たれます。そして6thアルバム『Portrait』にて全英チャート26位を記録し、まずまずの結果を残しました。
ところが、ずっとベスト盤をリリースしていないアーティストの筆頭ともいえるリック・アストリー。’02年にようやくヨーロッパにて『
Greatest Hits』という、今回ピックアップしている作品が発売され、全英チャートを16位まで駆け上がりました。つまり、皮肉にも人々が彼に求めているのは初期のS/A/Wプロデュース作品だと露呈する形になったのです。
ということで、ここでは初期作品を中心に取り上げようと思います。まず、ソロ・デビューは’87年で「
Never Gonna Give You Up」。弱冠21歳にして全英・全米No.1という素晴らしいスタートを切ります。実際は、その前にリック&リサ名義で「When You Gonna」をリリースしているんですが、それは置いておきましょう、クラブ用の12インチだけでしたので。続く「
Whenever You Need Somebody」は全英3位。クリスマスの時期に出たことでビデオクリップもそういう作りになっていたS/A/W作品としては異色の「
When I Fall In Love /
My Arms Keep Missing You」(A面は
ナット・キング・コールのカバー、B面はオリジナル)は全英2位。’88年に入ってからは、「
Together Forever」が全英2位に全米No.1、「
It Would Take A Strong Strong Man」が全米10位という結果で、デビューアルバム『Whenever You Need Somebody』から実に10曲中5曲がカットされた形になりました。
そして途切れることなく’88年、日本では三ツ矢サイダーのCM(本人出演)にも使われた「
She Wants To Dance With Me」が全英・全米で6位、「
Take Me To Your Heart」が全英8位、’89年にはさらにアルバム・タイトルトラックの「
Hold Me In Your Arms」が全英10位、「Giving Up On Love」が全米38位、「Ain't Too Proud To Beg」が全米89位と、2ndアルバム『
Hold Me In Your Arms』からまたもアルバムの半数がシングルカットされました。これだけで、当時の人気の高さを窺い知ることができるでしょう。
実はシングルでは「
She Wants To Dance With Me」からリック・アストリー本人がプロデュースに関わるようになり、’91年の「
Cry For Help」(元
ネイキッド・アイズで、のちのクライミー・フィッシャーのロブ・フィシャーのペンによるもの。ちなみに’99年死亡)以降、完全にS/A/Wのヒット・ファクトリーから去ることになります。そうして3rdアルバム『Free』をリリースするものの、「
Cry For Help」こそ全英・全米7位と健闘しますが、その後は凋落し、冒頭に述べたようなことになってしまいした。個人的には、この『Free』にストリングス・アレンジでアン・ダッドリーが関わっていたので好きだったのですが、ポップさに欠けるのは紛れのない事実でした。一応、ここから「
Move Right Out」と「
Never Knew Love」がカットされ、4thアルバム『Body And Soul』からは、「
The Ones You Love」と「
Hopelessly」がカットされています。
その後もいくつかベスト盤は出ていますが、今回これを聴いて気に入ったなら、2枚組でリリースされた最新ベスト『Together Forever - The Best of Rick Astley』を手に取ることをオススメします。ホントにいいボーカリストなので、またクラブで映える曲を演って欲しいですね。
さて、これにて’07年の『レコ麺』は終了。来年も引き続きいい音楽を紹介しますね。