今回は、乳ガンを克服し、見事な復活を遂げ、10作目となる『
X』を発表したイギリス(元はオーストラリアですが)のポップ・アイコン、カイリー・ミノーグをピックアップします。
もう十分メジャーな存在なので、いつものような変遷は一切カットし、クラブ系ならではの視点で、アルバムをちょいと掘り下げたいと思います。しかも、買ったはいいが、アルバムのクレジットのフォントが見づらくて、よく解らなかったという人も是非お読み下さい。
新作では、解りやすいディスコ・チューン的な作品はなく(強いて挙げれば「
In My Arms」と「
Wow」くらいで、ユーロ的なメロディは「
The One」と「
Stars」)、大半は落ち着いた大人なアレンジが施されています。しかしながら、プロデューサー陣の顔ぶれを見れば、クラブ・シーンを知り尽くした布陣であることに気付きます。
まずは常連組からいきましょう。
セルジュ・ゲンズブールとブリジッド・バルドーの「Bonnie & Clyde」をサンプリングした「
Sensitized」は、
ロビー・ウィリアムスらの仕事でも知られるガイ・チャンバーズのプロデュース。ちなみに、この曲は
キャシー・デニスが関わっています。カイリー作品では「
熱く胸を焦がして/Can’t Get You Out Of My Head」などで知られますが、もともとは80年代後半に登場したハウス・アクト、D-MOBに起用されて世に登場したシンガーなのです。
「
In My Arms」に「
The One」に「
Stars」、そして日本盤のボーナス・トラックである「
I Don’t Know What it is」の4曲を手掛けているリチャード“ビフ”スタンナードは、アイドル系だと
スパイス・ガールズや
イースト17、他にもジミー・ソマーヴィルらの仕事で有名。もともと、イギリスのポップ・グループ、トゥー・サード(2wo Third3/3人中2人がゲイという意)の隠れたというか、4人目のメンバーとして漫画キャラクターで登場して音楽面を支えた人物。彼らをマネージメントしていたのが、
ペット・ショップ・ボーイズ、
イースト17、ブロスらを手掛けたトム・ワトキンス(
エレクトライブ101亭参照)だったのですね。
さて、クラブ系ですが、全部キチンと紹介するとライナー並の字数になるのでザックリと。先行カットされた「
2
Hearts」は、ロブ・ダ・バンクのSUNDAY BESTからのリリースで知られるロンドンのデュオ、キッシュ・モーヴのプロデュース作品。カットファーザー&ジョー名義で知られるカットファーザーは、地元デンマーク人脈を中心に作家として取り入れ、「
Like
A Drug」と「
All
I See」を手掛けています。大胆起用という点では、「
In
My Arms」と「
Heart
Beat Rock」のカルヴィン・ハリスでしょう。『I Created Disco〜カルヴィン・ハリスのディスコ革命〜』もヒットしましたが、元はといえば、Myspaceから世界に羽ばたいた若手です。この辺にまで手を差し伸べるあたりが素早いですね。ちなみに、「
In
My Arms」、「
Stars」、「
I
Don’t Know What it is」に関わっているジュリアン・ピーケとポール・ハリスも重要。ジュリアンはセブ・フォンテインとのイッチー&スクラッチーにリフレクト、他にもストレッチ&ヴァーンなんてのも過去にやってました。ポールの方は、ダーティー・ヴェガスでお馴染みです。「
The
One」をビフと共に手掛けたザ・フリーメイソンズもクラブ・シーンでは新顔ながら有名な存在。というのも、元ファッツ&スモールのラッセル・スモールとジェームス・ウィルトシャイアーによるコンビだからです。しかも注目なのはジェームス・ウィルトシャイアー、別名ジミー・ゴメスの方。実はこの方、イギリスのクラブ・シーンの裏方で長いこと活動してきた人で、クリス&ジェームスからファッツ&スモールまで、実際は全部彼が作業をしていたんですね。ここにきて、ようやく本人が表舞台へ出て来たわけです。他にも、「
Heart
Beat Rock」を筆頭に、ボーナス・トラックを含め5曲にクレジットされているカレン&シェリーのプール姉妹からなる
アリーシャズ・アティックの片割れ、カレンも今回のアルバムでは重要な存在。彼女は、クラブ系では過去に
シェイプシフターズの「Lola’s
Theme」を手掛けています。
マドンナや
ブリトニー・スピアーズを手掛けているブラッドシャイ&アヴァントは「
Speakerphone」、BLUE NOTE傘下のMETRO BLUEにて、ザ・バード&ザ・ビーとしても活躍するグレッグ・カースティンは、「
No More Rain」と「
Wow」、そして日本盤ボーナス・トラックの「
King Or Queen」(「
2 Hearts」のシングルに収録)の3曲を手掛けています。
ようやく最後です。「
Cosmic」を手掛けているエッグ・ホワイトことフランシス・ホワイトは、80年代後半にイギリスで活躍した男性アイドル・グループ、
ブラザー・ビヨンド出身でのちのエッグ&アリスだったんですね。ビックリです。
本当はもっと掘り下げたいけど、字数の関係で終わり。1つだけ触れたいのは、19 ENTERTAINMENT(長くなるので各自調べて下さい。由来は僕のDJ名と一緒です)関連の支配度が高いと感じることくらいかな。
次回は、PWLの屋台骨を支えた男性シンガー、
リック・アストリーにズーム・イン!