時代の流れともいうべきなのでしょうか、あれほど隆盛を極めたイギリスのクラブ雑誌は相次ぎ廃刊し、現存するものでさえ、ページ数が目減りして最盛期から比べると嘘のように薄くなっています。ここの主題とは離れてしまいますが、パーティー全盛の頃は、レコード会社の広告ではなく、パーティー広告が多数を占め、そのため新人も打ち出しやすく、誌面から活気を感じられたんですが、今や広告対応の誌面作りが中心になってしまい、読者としては寂しい限りです。しかしながら、世界中のDJを投票で選んで順位を付ける“TOP
100 DJs”という『DJ』誌の恒例企画だけは、ある種お祭り化してひとり歩きしています。そして、今がまさにそのシーズンなんですね。ということで、今回紹介するのは’02、’03、’04年とトップに輝いたオランダのティエストによる今年3月にリリースされた最新作『
エレメンツ・オブ・ライフ』です。
ティエストにとっては’01年の『透明な記憶/In My Memory』、’04年の『ジャスト・ビー』に続くオリジナルとしては3枚目のアルバムとなります。クラブ系をあまり聴かない方のためにティエストについて最低限の補足をすると、アテネ・オリンピック開会式でDJをしていた人と言えば分かりますでしょうか。他にも、このジャンルでいえば、過去にシステムF(フェリー・コーステン)やアーミンとも共作したりしています。今回のアルバムでは、前作にてアディショナル・プロダクションの表記だったDJ WAAKOP REIJERS(過去にフル・フィラーズ名義などで活動)が全面的にバックアップしていて、豪華なゲスト・ボーカル陣も話題です。まずはその辺をざっと。
まずアルバムから先行カットされた「
Dance4Life」は、エイズ撲滅のチャリティ作品で、フェイスレスのマキシ・ジャズをフィーチャーしています。「
Break My Fall」は、ティエスト作品ではお馴染みのBTがプロデュースを手掛けただけでなくボーカリストとしても参加。また、残念ながらアルバムやシングルにはクレジットされていませんが、実はウチのレーベル(19BOX)のメイン・アーティストのひとりでもあるノエル・サンガーがエンジニアとして関わっています。それは、BTが他に手掛けた2曲、「
Sweet Things」に「
Bright Morning Star」でも同様です。特に「
Sweet Things」は個人的に一番のお気に入りで、フォーキーな歌声がたまらないシャーロット・マーティンを起用しています。彼女は『Veins』に『On Your Shore』というソロアルバムを出しているシンガー・ソングライターでもあります。マジで、6曲目からの怒濤のBT 3連発はヤバイです。
他にボーカルで気になるのは、モーターサイクルの「As The Rush Comes」やソーラーストーンの「Like A Waterfall」、そしてディープスカイの「Ghost」などで素晴らしい歌声を披露しているジェスによる「
Everything」。あと、ホールデン&トンプソン名義で奇才ジェームス・ホールデンと組んだ「Nothing」が爆発的ヒットを記録したジュリー・トンプソンとの「
Do You Feel Me」。
この辺りは、従来のイメージ、即ち“In Search Of Sunrise”的な流れのティエストが聴けます。男性ボーカルでは、元
BBマックのクリスチャン・バーンズとの「
In The Dark」もあります。そして「Flight 643」や「Traffic」に通ずるテッキーな路線は「
Carpe Noctum」で確認できます。
他にも『
パイレーツ・オブ・カリビアン』の「
He’s A Pirate」などなど触れることがたくさんありますがキリがないのでこの辺で。
最後に、冒頭の話題に関して少し。『DJ』誌の企画が人気を呼んだため、弊害を伴い、雑誌を購買していない人、もしくは地域でもインターネット投票出来ることで組織票が可能になり、順位の権威が年々と有名無実なものと化しつつあるのが残念でなりません。