前回の
ヒューマン・リーグに続き、輝かしきエレポップ・グループを続けて紹介しましょう。しかも同じくシェフィールドの出身。その名はABC。
グループとは書きましたが、実質的にABC=マーティン・フライであると言ってよいでしょう。何故なら、4人組としてスタートしたABCは、2人の脱退&新加入というメンバー・チェンジを経るものの、結局’87年からはマーティン・フライとマーク・ホワイトというコンビになり、’97年のアルバム『スカイクレイピング』では遂にマーティン・フライのソロ・プロジェクトになってしまったからです。ちなみにABCの登場時、マーティン・フライは
ブライアン・フェリーに例えられることが多い伊達男でした。そんな訳で、女性だけでなく、男性からも憧れの的であったマーティン・フライを真似し、それこそ
「The Look Of Love」のビデオ・クリップを観て、傘で遊んだ人もいるかもしれません。
今回取り上げるのは、’82年のデビュー・アルバム
『The Lexicon Of Love(邦題:ルック・オブ・ラブ)』です。日本題から想起出来るように、ABC最大のヒット曲であり、代表曲である
「The Look Of Love」を収録したアルバムです。なんといっても最大のポイントは、アルバムのプロデュースをトレヴァー・ホーンが手掛けているという点です。というわけで、後のアート・オブ・ノイズの面々もがっちりサポートしています。
デビュー・シングルである
「Tears Are Not Enough(邦題:涙はまだまだ)」の’81年全英19位を皮切りに、’82年には
「Poison Arrow」が全英6位、
「The Look Of Love」が全英4位、
「All Of My Heart(邦題:我が心のすべてを)」が全英5位といった具合に、4曲ものトップ20ヒットを生んだモンスター・アルバムです。冒頭でエレポップとは書きましたが、いわゆるシンセ系のユニットと異なり、ファンク・テイストがあったりするなどし、昔風に言えば、モダンでゴージャズなサウンドとして他とは一線を画していました。ちなみに最初のメンバーだったデヴィッド・パーマーは、後にザ・ザに加入するなどしていることからも、ABCが本格的な音楽グループであったことがうかがえます。
ベスト盤を除いて、80年代に5枚のアルバム、90年代に2枚のアルバムを発表したABCの最盛期は、残念なことに本作であるデビュー・アルバムを超えることはなく、徐々に失速していく感は否めませんが、だからこそ一番輝いていた時期を今一度、掘り起してみるのはいかがでしょうか。