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Vol.4 ソフト・ロック/ドリーミーなメロディと繊細なハーモニーが駆けめぐる 音楽の桃源郷、ソフト・ロック!
“ソフト・ロック”という言葉が日本で使われたのは、68年5月に発売されたハーパース・ビザールのデビュー盤『Feelin' Groovy』の邦題『ソフト・ロックの王者』が最初とされている。音楽の一ジャンルとして欧米で確立したもの、というより日本のレコード会社が、当時のフォーク・ロックからの流れのグループのキャッチ・コピーとして用いた部分も大きく、70年代初頭には使われなくなってしまう。

その“ソフト・ロック”が日本で再び注目を集めるのは、80年代半ば頃からだ。ピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギターなど、いわゆる渋谷系と呼ばれたJ-POPが流行した時期と重なり、彼らが影響を受けた音楽として取り沙汰されたこともある。渋谷系にとっての教科書のような1枚、ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズが国内盤として初登場したのは87年9月だった。
90年代に入ると、各レコード会社で名盤復刻やコンピレーション盤が組まれたりして、“ソフト・ロック”はブームとしての盛り上がりを見せる。96年には『ソフト・ロックA to Z』というガイド本も出た。

元々ソフト・ロックとは、メロディとハーモニーが魅力の66年頃から70年代始めまでのポップ・ミュージックであるわけだが、その根底には、フィル・スペクターなどの音楽プロデューサーの影響、ビートルズの影響が大きい。フォーク・ロックやサーフィン/ホット・ロッドの流れ、バート・バカラックといった職業作曲家、ハリウッドの映画音楽の影響下にあったバーバンク・サウンドなどさまざまな系統があるが、日本で最も評価が高いのはカート・ベッチャーだろう。
ソフト・ロック・ブームの火付け役とも言えるカート・ベッチャーは、ドリーミーで繊細、幻想的ですらあるソフト・ロックの名盤、ミレニウムの『ビギン』、サジタリアスの『プレゼント・テンス』を残した人だが、“コーラス・アレンジの天才”であり、ロジャー・ニコルズ、フリー・デザイン等と共にカリスマ的な人気を誇る。

ソフト・ロックは特定の音楽ジャンルというには、実態があってないようなもので、イギリスのトニー・マコウレイやロジャー・クック=ロジャー・グリーナウェイ、アメリカ東海岸のジェリー・ロスやボブ・クルーといった作曲家の仕事として注目されることも多い。イージー・リスニングに近い分野まで幅を広げても、心地よいハーモニーとメロディがあれば、それは“ソフト・ロック”と呼んでもかまわない。ポップ・ミュージックの黄金期を彩ったお洒落な音楽を、さあ楽しもう。(Text/遠藤哲夫)
フリー・デザイン<おすすめベスト10>
『You Could Be Born Again』1968
アメリカでは、“サンシャイン・ポップ”とも呼ばれていた(日本で言うところの)ソフト・ロック。しかし、このフリー・デザインなどはポップと呼ぶにはかなり斬新なコード進行や、複雑なハーモニーを駆使するアカデミックなグループである。ニューヨーク出身のクリス、ブルース、サンディのデドリック兄妹によって結成され、67年にデビュー・アルバム『Kites Are Fun』を発表した。2作目からは末妹のエレンも参加し(5作目で長兄が脱退)、73年までに7枚のアルバムを残している。

1作目からの「カイツ・アー・ファン」「ネヴァー・テル・ザ・ワールド」を聴いていただければ、その洗練されたクールな味わいの中に、クラシックやジャズの素養も覗いているのがわかるはず。2作目は、カヴァー曲として画期的なビートルズの「エリナー・リグビー」やママス&パパスの「夢のカリフォルニア」を収録。3作目はジャズ系バックメンを起用しての前衛的ともいえる音楽性を築いた最高傑作で、「ナウ・イズ・ザ・タイム」「何処に行ったら」が実にスリリング。ジャケットも愛らしい。4作目からはフィフス・アベニュー・バンドのファンにも喜ばれそうな「バブルス」、5作目は子供向けの歌を集めたアルバムで、6作目からのより透明感を増した「ワン・バイ・ワン」と、どのアルバムもクリスタルな輝きを持つソフト・ロック名盤である。あのカーペンターズも影響を受けていることは間違いない!
プレイリスト
カイツ・アー・ファン  >>試聴
  ユー・クッド・ビー・ボ....  >>試聴  
  ネヴァー・テル・ザ・ワ....  >>試聴  
  ナウ・イズ・ザ・タイム  >>試聴  
  ラヴ・ミー  >>試聴  
  エリナー・リグビー  >>試聴  
  夢のカリフォルニア  >>試聴  
  バブルス  >>試聴  
  何処に行ったら  >>試聴  
  ワン・バイ・ワン  >>試聴  
『Kites Are Fun』1967 『Heaven/Earth』1969 『Stars/Time/Bubbles/Love』1970 『Sing For Very Important People』1970 『One By One』1972
ソフト・ロックおすすめ:ステップ1
Harpers Bizarre   『Feelin' Groovy: The Best Of Harpers Bizarre』1997
ワーナー・ブラザーズの本拠地バーバンクで生まれたソフト・ロックの代表グループがハーパーズ・ビザール。ヴァン・ダイク・パークスやボー・ブランメルズ等と共にバーバンク・サウンドを担った。ハリウッドのお膝元だけあり、映画音楽的なノスタルジックで白日夢のようなサウンドが展開する。「59番街橋の歌」「カム・トゥ・ザ・サンシャイン」はいつ聴いてもグルーヴィー!
おすすめトラック
59th Street Bridge Song(Feelin' Groovy)
Come To The Sunshine
Anything Goes
Pocketful Of Miracles
Witchi Tai To
The Association   『Just the Right Sound: The Association Anthology』2002
66年の1stアルバム『And Then...Along Comes〜』は、あのカート・ベッチャーがプロデュースとコーラス・アレンジを担当。「チェリッシュ」の全米No.1ヒットを生んだアソシエイション。ワーナー移籍後の通算3作目『Inside Out』からはまたも1位に輝く「ウィンディ」と「ネヴァー・マイ・ラヴ」(2位)が連続ヒット。ドリーミーなコーラスでソフト・ロックの頂点を極めた。
おすすめトラック
Cherish  >>試聴
Windy  >>試聴
Along Comes Mary  >>試聴
Time For Livin'  >>試聴
Requiem For The Masses  >>試聴
ソフト・ロックおすすめ:ステップ2
The Beach Boys   『Pet Sounds』
Wouldn't It Be Nice  >>試聴
Caroline No  >>試聴
God Only Knows  >>試聴
Bread  『Baby I'm-A Want You』1972
Baby I'm-A Want You  >>試聴
Everything I Own  >>試聴
Diary  >>試聴
Love  『Forever Changes』1968
The Daily Planet  >>試聴
The Red Telephone  >>試聴
Alone Again Or  >>試聴
ソフト・ロックと呼ぶにはあまりに偉大なビーチ・ボーイズであるが、ポップスの最高傑作『ペット・サウンズ』は、ソフト・ロックの過去と未来を見通す黙示録的な1枚となった。内省的な曲の中で「素敵じゃないか」の明るさや、「神のみぞ知る」の美しさが一段と輝く。

オールディーズ畑で多くのヒット曲を作ってきたデヴィッド・ゲイツと、ロック・バンドにいたジェイムス・グリフィンが結成した70年代ソフト・ロックの代表的バンドがブレッド。「イフ」や「ギターマン」も有名だが、数多くのカヴァーを生んだ「愛のわかれ道」(全米3位)と「涙の思い出」(全米5位)を含む名盤が『Baby I'm-A Want You』だった。

通常はソフト・ロックの範疇には入れないが、カルト的な人気を誇る名盤『Forever Changes』は、フォークやサイケ、ガレージなどの音楽性がごっちゃになって、分裂病的なアレンジがたまらなくラヴ&ピースでもある摩訶不思議な世界を作りだした。「レッド・テレフォン」や「グッド・ユーモア・マン」などは、アナザー・サイド・オブ・ミレミウムといった感じもする。
ソフト・ロックおすすめ:ステップ3
Gary Lewis & The Playboys  『The Legendary Masters Series』 Jay & The Americans   『Come A Little Bit Closer-The Best Of Jay & The Americans』
The Lettermen   『Capitol Collectors Series』 The Four Freshmen   『Capitol Collectors Series』
ソフト・ロックのルーツ的なグループというべきか、フィル・スペクターの元でミュージシャン/アレンジャーとして働いていたレオン・ラッセルがサウンド作りを担ったのが、ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズ。65年に1位に輝いたデビュー曲「恋のダイアモンド・リング」はアル・クーパー作だ。「涙のクラウン」や「わが心のシンフォニー」も名曲。ドゥーワップ・グループから発展したジェイ&ザ・アメリカンズは、65年に4位まであがった「カラ・ミア」のヒットを持つが、同じくカヴァー曲である「ジス・マジック・モーメント」「ハッシャバイ」などのコーラス・ワークはさすが、ドゥーワップ出身と唸らせる。マニアにはケニー・バンスが在籍していたことでも有名だ。

さらに、イージー・リスニング・コーラスのイメージが強いレターメンも、洗練されたソフトなコーラスを聴かせるという部分ではA&Mのテイストに近い部分もある。「あなたの肩に頬うめて」からジョン・レノンの「ラヴ」まで幅広い選曲が魅力。幅広いといえば、ジャズ・コーラスの最高峰フォー・フレッシュメンの与えた影響も幅広い。特に、ビーチ・ボーイズはフォー・フレッシュメンのオープン・ハーモニーの手法から多くを学んでいる。「ポインシアナ」や「エンジェル・アイズ」あたりは基本として押さえておきたい。
The Seekers   『Come The Day』 The Hollies   『Butterfly』
Peter & Gordon   『The Ultimate Peter And Gordon』 Herman's Hermits  『The Very Best Of Herman's Hermits』
イギリスのソフト・ロックというと、エジソン・ライトハウスやハーモニー・グラスあたりから、一発屋のフラワー・プット・メンやフライング・マシーン、ファースト・クラスなどが思い浮かぶ。もっと時代を遡ると、ピーター&ゴードンやホリーズ、ハーマンズ・ハーミッツ、フォーク・グループでもあるシーカーズあたりが、多くのビート・グループの中にあってソフトな味わいを持っていたグループと言えるだろう。

シーカーズは何と言っても「ジョージー・ガール」(全米2位)だが、「夢のカリフォリニア」やザ・サークルのカヴァー「レッド・ラヴァー・ボール」を演っているので侮れない。ホリーズにはグレアム・ナッシュ(CSN&Y)が在籍しており、そのハイ・トーンのハーモニーはブリリアント!中期の傑作『Evolution』や『Butterfly』は是非アルバムで聴いてほしい名盤で、「ディア・エロイズ」がシングル・ヒット。ピーター&ゴードンもヒットの常連で、後にピーター・アッシャーはジェイムス・テイラーのプロデューサーとして有名に。レノン=マッカートニー作の「愛なき世界」、エヴァリー・ブラザースのカヴァー「クライング・イン・ザ・レイン」やデル・シャノンの「アイ・ゴー・トゥ・ピーセズ」はいつ聴いても名曲。ハーマンズ・ハーミッツも当時の大人気グループだが、今となってはカーペンターズの「見つめあう恋」のオリジネイターとして有名?
ソフト・ロックおすすめ:ステップ4
America   『Live』 Raspberries   『Capitol Collectors Series』
Glen Campbell   『Reunion: The Songs Of Jimmy Webb』 Todd Rundgren   『With A Twist』
ソフト・ロック以降の気になるグループとして、まずアメリカ。アコースティックを基調としたウェスト・コースト・サウンドに、ジョージ・マーティンをプロデューサーに迎えてのビートルズっぽいポップ・センスで数々のヒットを放った。優しさに満ちたメロディは「アイ・ニード・ユー」や「ひなぎくのジェーン」に顕著。パワー・ポップの元祖としても評価の高いラズベリーズは、エリック・カルメンの緩急取り混ぜた美メロが印象的。「明日を生きよう」「君に首ったけ」のハード・ポップから、「アイ・リーチ・フォー・ザ・ライト」「さよならは言わないで」のバラードまで名曲揃い。

ソフトな口当りと共に、楽曲の瑞々しさで多くのシンガーにカヴァーされまくっているソングライターのジミー・ウェッブ。中でもグレン・キャンベルとは抜群の相性を見せる。全曲ジミー・ウェッブ・カヴァーで固めた『Reunion〜』は、アルバムとしての完成度も高くメランコリックな名盤。「月はいじわる」「ジャスト・ジス・ワン・タイム」での叙情性は素晴らしい。まあ、本人の歌が一番いいかも知れないが・・・。奇才トッド・ラングレンはナッズ時代からソフト・ロックに近い曲は作っていたが、マルチな才能はソロになって留まるところを知らず、メリーゴーランドのような煌びやかさがある。本作はボサ・ノヴァ・アレンジによるセルフ・カヴァー集。「ハロー・イッツ・ミー」「友達でいさせて」といった名曲達が違う顔を見せる。

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