Vol.7 ジャズ・ボーカル特集 軽くスイング... ジャズ・ボーカルを聴くならまず女性ボーカルから。 時代を越えて歌い継がれるスタンダード・ナンバーの魅力がここに!代表アーティスト(女性編)スタンダード・ナンバーはこれを聴け!!
ジャズ・ボーカルの魅力の一つは、スタンダード・ナンバーをどんな歌唱、アレンジで聴かせてくれるか、その歌い手の個性や時代感覚で変化する表現力を味わえることだろう。特に女性ジャズ・ボーカルは、多くのスターを生み出し、ポピュラー・ボーカルの分野とも行き来しながら、人々の心を深くとらえてきた。

“懐かしのメロディ”と“スタンダード”は違う。スタンダードとは、多くの歌手や演奏家によって常に歌われ、演奏されている曲で、時代によってさまざまな表情を見せるだけの、生きた歌でなければならない。そもそもはジャズ演奏のために選ばれた曲で、ミュージシャンとリスナーの双方から愛された名曲ということになろうか?1920〜40年代のニューヨークのティン・パン・アレー(音楽出版社が集中していた、当時の音楽業界の中心)で人気の作曲家だった、ジョージ・ガーシュインやアーヴィング・バーリン、ジェローム・カーン、ポール・コーター、ホーギー・カーマイケル、ロジャース&ハートなどの作曲家による人気曲や、ジャズメンのオリジナル曲が、長い間親しまれて初めてスタンダード化する。

女性ジャズ・ボーカルの起源は、20年代に初録音を行ったクラシック・ブルースの女王、ベッシー・スミスあたりに遡ることができるが、ビリー・ホリデイの出現でジャズ・ボーカルの基礎が築かれた。同時に30年代のスイング・ジャズ(ビッグ・バンド)隆盛に伴い、楽団専属の女性歌手が脚光を浴びる。ベニー・グッドマン楽団のペギー・リーや、トミー・ドシー楽団のジョー・スタッフォード、スタン・ケントン楽団のアニタ・オデイジューン・クリスティなどの白人女性ボーカルが華やかさを添えた。一方では、ジャズのビ・バップ時代が到来し、ジャズ奏法とシンクロする器楽的なスキャット唱法でモダン・ジャズ・ボーカルの改革者となったエラ・フィッツジェラルドサラ・ヴォーンの時代に突入する。

女性ジャズ・ボーカル御三家とは、エラ、サラ、そしてカーメン・マクレエを指すが、すでに3人ともこの世を去ってしまった。ポップス分野とまたがる活躍を見せたジュリー・ロンドンやドリス・デイ、ダイナ・ショア、ジョニ・ジェイムス、ナンシー・ウィルソンなども忘れ難いし、男性シンガーではビング・クロスビーに始まり、ナット・キング・コールフランク・シナトラといった巨人達は今でも親しまれている。

北欧のジャズ・シーンを始め、若手ジャズ・シンガーが注目を浴びる昨今、是非お気に入りのシンガー、お気に入りのスタンダードを見つけてほしい。(Text/遠藤哲夫)
代表アーティスト(女性編)
おすすめトラック
Strange Fruit
Lady Sings The Blues
Lover, Come Back To Me
ブルースの女王ともいわれ、ジャズ・ボーカルの確立者としてルイ・アームストロングと並んで偉大な歌手がビリー・ホリデイ。不幸な生い立ちは伝記にも記されているが、黒人のリンチを題材にした「奇妙な果実」を作り、麻薬に溺れ、44才でその波乱に満ちた人生を閉じた。真実と向き合う深くてもの哀しい歌声に、彼女の魂の叫びが聴こえる。CBS〜コモドア〜デッカ〜ヴァーヴと録音している。コモドア時代の『奇妙な果実』、ヴァーヴ時代の『レディ・シングス・ザ・ブルース』などが有名。
おすすめトラック
How High The Moon
Mack The Knife
All The Things You Are
ビリー・ホリデイよりも2年程遅れ、'35年にチック・ウェッブ楽団の専属歌手として初録音。ジャズを歌うために生まれてきたかのような抜群のテクニックで、可憐なバラードからマシンガンのようなスキャットまで自由自在である。どんなタイプの曲も歌いこなすので、エラだけでほとんどのスタンダードは聴けてしまう。ルイ・アームストロングとの共演盤『エラ・アンド・ルイ』や、ガーシュインなどの“ソング・ブック”シリーズもいいが、エラの円熟した実況録音『エラ・イン・ベルリン』が素晴らしい。
おすすめトラック
Lullaby Of Birdland
Tenderly
Embraceable You
エラより6つ年下ではあるが、オペラ歌手並みの声量と音域の広さで、ジャズ・ボーカルの最高峰に位置していたのがサラ・ヴォーン。3大女性ジャズ・ヴォーカリストの中でも、日本では最も人気が高い。CBSの『アフター・アワーズ』と並ぶ名盤が、マーキュリーでの『Sarah Vaughan(ウィズ・クリフォード・ブラウン)』である。70年代のミッシェル・ルグランとの共演以降、現代的な歌もレパートリーに入れて新生面を開拓した。CMで「Lullaby Of Birdland」が流れていた(歌はUA)のでお馴染みかも。
エラ、サラの御三家の中では若干ポピュラリティーが低いかもしれないが、熱狂的なファンが多いことでも知られる。元々ジャズ・ピアニストでもあり、メロディの崩し方は抜群にうまい。ユーモア感覚を持ったパーソナリティで、ライヴで本領発揮し、'71年の『グレート・アメリカン・ソングブック』は名盤とされる。歌詞をかみしめるように歌い、ハートが滲み出るようなリアルさが伝わってくる。53年デビューで、デッカに残した『アフターグロウ』やキャップでの『ブック・オブ・バラード』も有名。
'41年にベニー・グッドマン楽団の専属歌手として、キャリアをスタートさせたペギー・リー。在団中の可憐な歌声は『エルマーズ・チューン』で聴けるが、同楽団のギタリストだったデイヴ・バーバーと結婚してソロ独立。ラテン調の「マニャーナ」が初のミリオン・ヒットとなった。離婚後にデッカに移り録音した『ブラック・コーヒー』が名盤として名高い。その美貌と女盛りのお色気も交えた、こまやかな情感は70年代になっても衰えなかった。日本では「ジャニー・ギター」が大ヒットした。
スタンダード・ナンバーはこれを聴け!!
1.枯葉 Autumn Leaves
2.マイ・ファニー・バレンタイン My Funny Valentine
Nat King Cole 『Love Songs』 Matt Monro 『Sings The Standards』
Chet Baker 『Sings』 Dinah Shore 『Dinah Sings, Previn Plays』
エディット・ピアフやイヴ・モンタンによるシャンソン名曲として知られる。元々はバレエ曲として、ハンガリー出身のジョゼフ・コスマが作曲、ジョニー・マ−サーが英詞を作詞した。独特の哀愁味を持つ永遠の人気曲。
ロジャース&ハート作のメランコリックなナンバーだが、相手のルックスをけなしておきながら「でも僕のために髪の毛一本変えないで」という熱烈なラブ・ソング。アンニュイなチェット・ベイカーのボーカルがぴったり。
3.スターダスト Stardust
4.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ You'd Be So Nice To Come Home To
Nat King Cole 『The Ultimate Collection』
Julie London 『Julie At Home』
スタンダード中のスタンダードと言われる超有名な曲。ホーギー・カーマイケル作の、夜空に星屑がふるように美しいメロディーが夢見ごこちにさせる。ライオネル・ハンプトンの演奏ものもいいが、やはりボーカルで聴きたい。
「貴方が帰ってきてくれたらなんて素敵なんでしょう」というラブ・ソング。コール・ポータ作の名曲であり、ヘレン・メリルのオハコとして、日本でも何度もTV-CMに使われる人気曲。演奏ものではアート・ペッパーが痺れる!
5.サマータイム Summertime
6.身も心も Body And Soul
Caecilie Norby 『Caecilie Norby』
ロック・ファンにはジャニス・ジョプリンの血が滲み出るようなカヴァーで知られるが、ジョージ・ガーシュインがオペラ『ポギーとベス』のために書いた曲。原曲を黒人霊歌の「時には母のない子のように」に求めることもできる。
ホリデイ、エラ、サラ、マクレエといった大物ジャズ・シンガーがこぞって取り上げる名曲。作者のジョニー・グリーンはミュージカル映画『パリのアメリカ人』等のスコアでも活躍。身も心も捧げているのにあなたは気付いてくれない・・・。
7.ハウ・ハイ・ザ・ムーン How High The Moon
8.時のたつまま As Time Goes By
Frank Sinatra 『Point Of No Return』 Peggy Lee 『If You Go』
「貴方がいてくれれば、月のない暗い夜も明るくなるのに」という熱烈なラブ・ソング。ブロードウェイの作曲家モーガン・ルイスによる、唯一のスタンダード。コード進行が面白いためにビ・バップの巨人達に取り上げられ有名になった。
「時がたっても男と女の愛に変わりはない」というエモーショナルなバラードで、ハーマン・フプフェルド作。何と言っても、映画『カサブランカ』のバーのシーンで歌われたことで知られる。リー・ワイリーやローズマリー・クルーニーも是非。
9.ザ・マン・アイ・ラヴ The Man I Love
10.ミスティ Misty
アイラ&ジョージ・ガーシュイン兄弟の最高傑作と言われる不朽の名作。「私の彼氏」という邦題のとおり、いつの日か出会うであろう男性への憧れを歌ったもので、ダイナ・ショアの優雅で清潔感溢れる「女心」にメロメロ。
独自のスタイルを持つピアニスト、エロール・ガーナーのオリジナル曲で、ジョニー・バークが詞を付けた。黒人歌手ジョニー・マティスの歌でミリオン・セラーになり、サラの愛唱曲としても有名。霧に包まれるような恋の気分を歌っている。
11.ニアネス・オブ・ユー The Nearness Of You
12.ラヴ・フォー・セール Love For Sale
Norah Jones 『Come Away With Me』
ホーギー・カーマイケル作の熱烈なラブ・バラード。「スターダスト」「ロッキン・チェア」と並ぶ作者自身のお気に入りだそう。ロマンティックで甘美なムードに溢れる曲だが、ヘレン・メリルの切々たるヴァージョンが最高。
“一夜の恋”というか、街娼のことを歌ったもので、アメリカでは一時、放送禁止になったほど。コール・ポ−ターによるストレートな歌詞は痛烈。ビリー・ホリデイのバージョンは悲痛だが、大抵はアップテンポで歌われることが多い。
13.パリの4月 April In Paris
14.クライ・ミー・ア・リヴァー Cry Me A River
Dinah Shore 『The Ultimate Collection』
Julie London 『Julie Is Her Name Vol.1&2』
ロシア生まれのヴァーノン・デュークによる、「ニューヨークの秋」と対を成すバラードの傑作。大都会の季節感をリリカルに表現しているが、音域が広いために歌うには難しいとされる。その点、サラの名唱は素晴らしいの一言。
アーサー・ハミルトン作による、ポピュラー歌手のカヴァーが圧倒的に多い大スタンダード。最近ではリンダ・ロンシュタットがスタンダード・カヴァー集で取り上げていた。女優あがりの美貌歌手ジュリー・ロンドンのハスキー・ボイスが最高。
15.ラウンド・ミッドナイト Round Midnight
16.魅惑されて Bewitched
June Christy 『Ballads For Night People』 Diane Schuur 『Music Is My Life』
奇人扱いされることも多い天才ピアニスト、セロニアス・モンクが残した名曲で、「ストレート・ノー・チェイサー」や「ルビー・マイ・ディア」よりも知名度が高いのは、マイルス・デイヴィスとの有名な録音があるからか…。
正式な原題は“魅惑されて、悩まされて、そしてうろたえてしまった”みたいな意味で、ロジャース&ハート作の恋に身悶える曲。フランク・シナトラも歌っていたが、これはやはり女性の歌。アニタ・オデイのバージョンが最も有名。
17.ドント・エクスプレイン Don't Explain
18.スイングしなけりゃ意味ないね It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)
ビリー・ホリデイの自作曲で、彼女の夫であったジミー・モンローの浮気について歌ったもの。弁解を述べる夫に対し「何もいわないで(もう言い訳しないで)」とだけ。深い悲しみを伴っているが、多くのシンガーに取り上げられている。
デューク・エリントン楽団が、ベニー・グッドマンに先駆けて、初めて“Swing”という言葉を登場させた記念すべき曲で、“Swing”とは何たるかを雄弁に物語る。ジャズの代名詞とも言える1曲で、エリントンの偉大さが改めてわかる。
JASRAC
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9012737001Y30005
JASRAC許諾番号:
9012737002Y30007
JASRAC
JRC許諾番号:X000425A06L
JRC許諾番号:X000425A04L
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