ジャズ・ボーカルの魅力の一つは、スタンダード・ナンバーをどんな歌唱、アレンジで聴かせてくれるか、その歌い手の個性や時代感覚で変化する表現力を味わえることだろう。特に女性ジャズ・ボーカルは、多くのスターを生み出し、ポピュラー・ボーカルの分野とも行き来しながら、人々の心を深くとらえてきた。
“懐かしのメロディ”と“スタンダード”は違う。スタンダードとは、多くの歌手や演奏家によって常に歌われ、演奏されている曲で、時代によってさまざまな表情を見せるだけの、生きた歌でなければならない。そもそもはジャズ演奏のために選ばれた曲で、ミュージシャンとリスナーの双方から愛された名曲ということになろうか?1920〜40年代のニューヨークのティン・パン・アレー(音楽出版社が集中していた、当時の音楽業界の中心)で人気の作曲家だった、ジョージ・ガーシュインやアーヴィング・バーリン、ジェローム・カーン、ポール・コーター、ホーギー・カーマイケル、ロジャース&ハートなどの作曲家による人気曲や、ジャズメンのオリジナル曲が、長い間親しまれて初めてスタンダード化する。 女性ジャズ・ボーカルの起源は、20年代に初録音を行ったクラシック・ブルースの女王、ベッシー・スミスあたりに遡ることができるが、ビリー・ホリデイの出現でジャズ・ボーカルの基礎が築かれた。同時に30年代のスイング・ジャズ(ビッグ・バンド)隆盛に伴い、楽団専属の女性歌手が脚光を浴びる。ベニー・グッドマン楽団のペギー・リーや、トミー・ドシー楽団のジョー・スタッフォード、スタン・ケントン楽団のアニタ・オデイ、ジューン・クリスティなどの白人女性ボーカルが華やかさを添えた。一方では、ジャズのビ・バップ時代が到来し、ジャズ奏法とシンクロする器楽的なスキャット唱法でモダン・ジャズ・ボーカルの改革者となったエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンの時代に突入する。 女性ジャズ・ボーカル御三家とは、エラ、サラ、そしてカーメン・マクレエを指すが、すでに3人ともこの世を去ってしまった。ポップス分野とまたがる活躍を見せたジュリー・ロンドンやドリス・デイ、ダイナ・ショア、ジョニ・ジェイムス、ナンシー・ウィルソンなども忘れ難いし、男性シンガーではビング・クロスビーに始まり、ナット・キング・コール、フランク・シナトラといった巨人達は今でも親しまれている。 北欧のジャズ・シーンを始め、若手ジャズ・シンガーが注目を浴びる昨今、是非お気に入りのシンガー、お気に入りのスタンダードを見つけてほしい。(Text/遠藤哲夫) |








































