最近、音楽を愛する若者の会話から「エモい」という言葉をよく耳にする。感情的だったり、テンションが高まるような作品を指す時に使用する造語なのだが、この言葉の語源となったエモというジャンルが若者に絶大な支持を得て、ここ数年で大きくシーンを広めつつある。
エモという言葉が生まれたのは90年代初頭。マイナー・スレット、フガジ等、80年代中期に台頭したハードコア・バンドの影響を受け、過激に弾き立てるギターサウンドがメロディアスに、社会的批判だった主張が自己の内面をさらけ出すような切ない主張へと変化し「エモーショナル」つまり感情的な音楽へと派生していった。その代表となる作品がサニー・デイ・リアル・エステイト『Diary』である。緩急をつけたメロディラインはどこか寂しく、独特の哀愁を感じさせるジェレミーの歌声が切なく訴えかけてくる。エモーショナルという言葉が120%シンクロした名盤だ。グランジ・ブーム最中の94年にリリースされ、異様なほどの注目を浴びた彼らは方向性を見失い、結果として解散してしまうわけだが、メンバーのネイトとウィルはその後フー・ファイターズに加入、多くのフォロワーを誕生させている。
また、ウィーザー、ジミー・イート・ワールド、ゲット・アップ・キッズの存在も外せない。パワーポップにインディ・ロック、それぞれが歩んできたルーツは違うものの、エモというキーワードにおいては模範とも言うべきサウンドを提供し、エモの黄金期を支えたバンド達である。
21世紀に入ると、エモはあらゆる要素を吸収し、次々と形を変えていく。90年代後期に興ったニュー・メタルに見られる絶叫シャウトを切ないメロディに加えたスクリーモ。エモ独特の感情的なメロディをピアノ、キーボードによってより美しく演出させたピアノ・エモなどがそれだ。
今やエモはハードコアで語れるものではなく、ジャンルとしても意味を持たなくなってきた。それゆえ、エモに対して批判的な態度をとる音楽ファンも少なくない。しかし、エモという言葉は自己主張をなくした若者の象徴であり、文化であり、支えなのだ。現代の若者が背負う未来、次世代を担うムーブメントとして、エモの世界を少しでも知っていただければと思う。
(Text/Gudera)