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Vol.8 ブリティッシュ・フォーク特集  英国の伝統音楽が生みだす叙情的で幽玄な世界。木漏れ日のような安らぎがここに!
ブリティシュ・フォークは迷宮の世界だ。一度入り込んだら、なかなか抜け出せない。それほど魅力的で奥が深い。英国の伝統や独特の翳り、のどかな田園風情など、そこには叙情性に溢れた至福の世界が広がる。

ブリティッシュ・フォークとアメリカのフォークは違うのか?この答えは一概には言い切れないが、アメリカのフォーク自体が、元々はスコットランドやアイルランドからの移民によってもたらされたものなので、源流は同じということになる。映画『ソングキャッチャー』でも明らかにされていたが、英国の伝承歌や、ジグやリールといったトラディショナルなダンス曲が、アメリカのアパラチア地方には、ほぼ原型をとどめて残っているのである。

さて、現在のブリティッシュ・フォークの源流といえば、50年代に起きたアメリカからのフォーク・リバイバルの波と、スキッフル・ブームがある。英国フォーク・リバイバルの重鎮、イワン・マッコールやペギー・シーガー、そしてスキッフルを経たマーティン・カーシーなどの登場がシーンの土台を形作った。更にボブ・ディランやポール・サイモンが、イギリスのトラディショナル・ソングを自作に引用(拝借)したことは有名であり、イギリスとアメリカのフォーク・ソングの交流が見られ、60年代後半に世に出るフェアポート・コンヴェンション以降のフォーク勢は、ディランやジョニ・ミッチェルのカバーを数多く残している。

ブリティッシュ・フォークと一口に言っても、ブリティッシュ・トラッドと呼ばれる、フェアポート・コンヴェンションスティーライ・スパン、ペンタングルの御三家のように、トラッドをフォーク・ロック化したグループもいれば、ドノヴァンやニック・ドレイクジョン・マーティンといった自作曲を歌うシンガー・ソングライターもいる。これに、リンディスファーンやヘロンといった牧歌的なグループや、スパイロ・ジャイラ、、トゥリーズ、メロウ・キャンドルなどのプログレの香りが混じるグループも含まれる。ブリティッシュ・フォークの名の元に膨大な裾野が広がっているのだ。

1970年に『ジャスト・アナザー・ダイアモンド・デイ』という、かつては超レアなアルバム1枚だけを残し、音楽から遠ざかっていたヴァシュティ・ブニヤンが35年振りとなるセカンド・アルバム『ルックアフタリング』を昨年リリースして話題となった。まるで時間が止まっていたかのような、無垢なアルバム。ブリティッシュ・フォークには、そんな“時が止まってしまう”ような永遠の生命を宿すアルバムがたくさんある。マニアが蠢くラビリンスな世界ではあるが、気軽にダウンロードして、その魅力の一部に触れてほしい。(Text/遠藤哲夫)
代表アーティスト
フェアポート・コンヴェンション  『Meet On The Ledge: The Classic Years (1967-1975) 』1999 英国フォーク・ロック史上、最も大きな影響力を持ったグループがフェアポート・コンヴェンションである。イギリスの伝統音楽をロック世代の解釈で演奏するエレクトリック・トラッド路線を確立した。66年に結成され、イアン・マシューズ、リチャード・トンプソン、アシュリー・ハッチングス、サンディ・デニー、デイヴ・スウォーブリックといった名アーティストを輩出してきた。デビュー当時は、アメリカナイズされた音だったが、69年のサンディ・デニー加入後に、英国のトラディショナル・フォークを取り上げるようになり、『リージ&リーフ』『フルハウス』という歴史的名盤を残す。トンプソンやスウォ−ブリック、デイヴ・マタックスによる壮絶なインタープレイも、他のロック・バンドには出せない緊迫感をともなったものとして伝説化されている。

 
Meet On The Ledge  >>試聴
Who Knows Where The Time Goes?  >>試聴
Matty Groves  >>試聴
Tam Lin  >>試聴
Crazy Man Michael   >>試聴
Sloth  >>試聴
オリジナル・アルバムおすすめ
『What We Did On Our Holidays』 1969

『Unhalfbricking』1969
『Liege And Lief』1969
2作目であり、フェアポートのテーマ・ソングともいうべき「Meet On The Ledge」を収録。マシューズ作の「Book Song」やカバー曲、トラッドの「She Moves Through The Fair」など、サイケ色を残しながらもバンドの未来像を示した。 本格的にトラッドに取り組み始めた3作目。スウォーブリックがフィドルで参加した「A Sailor's Life」での画期的な演奏と、デニー畢生の名曲「時の流れを誰が知る」が素晴らしい。ディランのカバー曲(未発表だったもの)を3曲も収録。 69年にフェアポートは3枚ものアルバムを残しているが、英フォーク・ロックの最高峰といえるアルバム。有名なトラッドを取り上げた「Matty Groves」での凄まじい演奏は鳥肌もの。デニーの歌声が切ない「Crazy Man Michael」も名曲。
『Full House』1970

『House Full - Live At The LA Troubadour』1998
『Rising For The Moon』1975
デニーが脱退して男5人で録音した5作目は、フェアポートによるエレクトリック・トラッドの金字塔。男声による硬派なボーカルと引き締まった演奏が織りなす、英国の薫り高き世界。「Sloth」でのバトルはまさに神懸り的。 『フルハウス』のメンバーで行われたロサンゼルスの“トルバドール”でのライブ録音。77年に出た『Live At The LA Troubadour』の一部を差し替えてリリースされたもの。鬼気迫る圧倒的なパフォーマンスは、もはや一触即発! リチァード・トンプソンが脱けてしまったフェアポートで、新たにリーダー格となったのがトレヴァー・ルーカス。その妻がサンディ・デニーというわけで、この11作目で復帰。しっとりした味わい深さで「One More Chance」は超名曲!
ニック・ドレイク『Way To Blue - An Introduction To Nick Drake』 1994 いつからこんなに人気が出たんだろう、と不思議に思ってしまう。誰も寄せ付けないような自閉症の音楽みたいだったのに、今やカリスマ的な存在となったニック・ドレイク。3枚のオリジナル・アルバムを残し、74年にこの世を去った。1948年生まれのドレイクは、大学在学中だった69年に、孤独感と哀しいまでに繊細な美しさを湛えたファースト・アルバムをリリース。大学を中退して制作した2作目の『Bryter Layter』では、ジャズ風(ドリーミーなソフト・ロック?)のきめ細かいアレンジが施された。しかし、商業的な成功を収められず、次第に抗鬱剤を飲むようになる。3作目のアルバムはたった2日で録音され、人生への諦観を込めた作品のように思える。彼の最後の録音である4曲が86年に『Time Of No Replay』というレア・トラックス集に収められた。

 
'Cello Song  >>試聴
River Man  >>試聴
Which Will  >>試聴
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Pink Moon  >>試聴
Northern Sky  >>試聴
オリジナル・アルバムおすすめ
『Five Leaves Left』 1969

『Bryter Layter』 1970
『Pink Moon』 1972
ヴェルレーヌやランボーといったフランス詩人に傾倒していたというドレイク。まだ20歳の学生がここまで人生に深い思索を巡らせた曲を作ったことが驚きだ。ストリングスの壮麗な響きと対比する、喪失感を秘めたモノクロームな歌声。 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルが押し掛けてきて録音したという「Northern Sky」と「Fly」をはじめ、空間的な広がりを感じる都会的なサウンドとなり、何故か今ではクラブ・シーンで人気があるアルバム。 3作目にして最後のアルバムとなった、たった一人の弾き語りで二晩で録り終えた作品。「何のアレンジもして欲しくない」と自ら語ったという、絶望の淵を見るようなアルバムだが、それでも美しい。ジェフ・バックリーとつながるか?
サンディ・デニー  『No More Sad Refrains: The Anthology』2000 英国フィメール・ボーカルの至宝、サンディ・デニー。ストローブスへの一時的な在籍から始まり、フェアポート・コンヴェンションで活躍後、自らのグループであるフォザリンゲイを結成、そしてソロへと至る。レッド・ツッペリンの『W』にもゲスト参加していたが、多くのミュージシャンがリスペクトし、あの何とも云えない憂いを帯びた声の中に威厳すら感じられる稀有なボーカリストであった。惜しくも1978年に、階段から転落してわずか31歳でこの世を去ってしまった彼女であるが、生前に残された作品の他にも、未発表作品やボックス・セットなどが次々とリリースされていることからも人気の高さが伺える。もうサンディのような女性シンガーは出てこないだろう。だから、残されたアルバムに刻まれた命の証しを何度も確かめたくなる。

 
Fotheringay  >>試聴
Farewell, Farewell  >>試聴
Late November  >>試聴
It'll Take A Long Time  >>試聴
It Suits Me Well   >>試聴
One More Chance  >>試聴
オリジナル・アルバムおすすめ
『The North Star Grassman And The Ravens』 1971

『Sandy』 1972
『Gold Dust - Live At The Royalty (The Final Concert)』 1998
『海と私のねじれたキャンドル』という邦題が付いたソロ1作目。英国的情緒を醸し出す素晴らしいジャケットと共に、フォザリンゲイ+リチャード・トンプソンのバックアップで、「Late Novembe」「Blackwaterside」などの名曲を収録。 ソロ2作目であり、前作のイギリス特有の翳りは薄れ、トレヴァー・ルーカスのプロデュースのせいか幾分アメリカナイズされた明るさも感じる。だが「It'll Take A Long Time」や「It Suits Me Well」での憂いを帯びた声は最高。 サンディの没後20年を記念して発売されたライブ盤。収録された1977年11月27日のステージは生涯最後のものとなるらしい。バックにスティール・ギターが加わり、どこか温かみを感じる演奏とエモーショナルなボーカルが印象的。
ブリティッシュ・フォーク推薦盤
リチャード&リンダ・トンプソン『I Want To See The Bright Lights Tonight』1974
アメリカのロックンロールと英国の伝統音楽を融合させた、フェアポートのキーマン的存在がリチャード・トンプソンだったわけだが、グループ脱退後は奥方のリンダとデュオを組む。飾り気のないリンダのボーカルと、真空斬りのように鋭いリチャードのエレクトリック・ギター。この個性的な音とリチャードの才能溢れる作曲能力は、ブリティッシュ・フォーク/ロック随一の名盤を生み出した。
When I Get To The Border  >>試聴
The Calvary Cross   >>試聴
Down Where The Drunkards Roll  >>試聴
ジョン&ビヴァリー・マーティン『Stormbringer』1970
スコットランドのグラスゴー生まれのジョン・マーティンは、67年に『ロンドン・カンヴァセーション』でデビュー。ディランの影響が濃い弾き語りアルバムだったが、本作は夫婦で渡米してのウッドストック録音。ザ・バンドのようにストイックかつ静謐なサウンド・プロダクションで、マーティンがこの後、浮遊感を強めた幽玄なサウンドを生み出していく過程にある、センシティブな世界が広がる。
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John The Baptist  >>試聴
Would You Believe Me  >>試聴
スティーライ・スパン『Spanning The Years』1995
フェアポートを脱けたアシュリー・ハッチングスが、イングランドのマディ・プライアー&ティム・ハート、アイルランドのゲイ&テリー・ウッズという二組の夫婦と組んだのがスティーライ・スパンだった。フェアポートよりももっと深く土着的にトラッドにアプローチしていく姿が求道的にも写った。2、3作目でのドラムレスによるヘヴィなトラッド追求は、今でも誰も達することが出来ない高みへと到達していた。
The Blacksmith  >>試聴
Lovely On The Water  >>試聴
My Johnny Was A Shoemaker  >>試聴
インクレディブル・ストリング・バンド『Liquid Acrobat As Regards The Air』1971
ブリティッシュ・フォークの異端児、インクレディブル・ストリング・バンド。中心メンバーのロビン・ウォリアムソン、マイク・ヘロンは、ヒッピー丸出しでアシッド感覚溢れるアルバムを残した。特に67年の『The 500 Spirits〜』は凄い。本作はバンド後期にあたり、マルコム・ルマイストルを加えての充実したフォーク・ロック(ケルト風味もあり)が聴ける。次作『アーススパン』と並び人気のある作品。
Dear Old Battlefield  >>試聴
Worlds They Rise And Fall   >>試聴
Red Hair  >>試聴
リンディスファーン『Fog On The Tyne』1971
ニューキャッスル出身の愛すべきフォーク/ロック・バンドがリンディスファーンだ。今は亡きアラン・ハルをリーダーに、「Meet Me On The Corner」「Lady Eleanor」「Fog On The Tyne」などのヒット曲は、今でも口ずさめるほどキャッチーな魅力を放っている。最初の3枚のアルバムが名盤とされているが、活動歴が長く、メンバーが一時分裂して結成されたジャック・ザ・ラッドも評価が高い。
Meet Me On The Corner  >>試聴
January Song  >>試聴
Together Forever  >>試聴
マグナ・カルタ『Seasons + Songs From Wasties Orchard』 1970
後にエルトン・ジョンのバック・バンドに参加するデイヴィ・ジョンストンが在籍していたことでも知られるマグナ・カルタ。『四季』と題された彼等のセカンド・アルバムは組曲形式となった「Medley: Seasons」が聴きもの。端正なアンサンブルで四季の移ろいを表現している。メランコリックな「Airport Song」や、続く『Songs From〜』からの「Time For The Leaving」の瑞々しさも印象的だ。
Airport Song  >>試聴
Medley: Seasons  >>試聴
Time For The Leaving  >>試聴
アル・スチュワート『An Acoustic Evening With Al Stewart』1998
「Year Of The Cat」の大ヒットでポップス分野で人気が出たアル・スチュワート。この人のギター・テクニックは抜群で、初期の『ゼロ・シー・フライズ』に収録されていた「A Small Fruit Song」を本作でもライブ演奏しているが、もう弾きまくりである。往年のヒット曲をリラックスして歌い、演奏するアルにもう気負いはないのだろう。ラルフ・マクテルと並んでこれからも見守っていきたい人だ。
A Small Fruit Song  >>試聴
The Candidate   >>試聴
Roads To Moscow  >>試聴
キャット・スティーヴンス『Teaser And The Firecat』1971
現在はミュージシャンであったことよりも、アルカイダと間違えられたことで有名になってしまったキャット・スティーヴンスであるが、70年代に放ったヒット曲の数々は今なお歌い継がれている。レゲエ・カバーで有名な「Wild World」をはじめ、ロッドの名唱で知られる「The First Cut Is the Deepest」、本作に収録された「Moonshadow」「Morning Has Broken(雨に消えた朝)」など、淡い情緒が胸を締めつける。
Morning Has Broken   >>試聴
Moonshadow  >>試聴
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JASRAC
JASRAC許諾番号
9005801003Y
30005900580
1003Y30007
JASRAC
JRC許諾番号:X000140A02L
JRC許諾番号:X000140A03L
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