ブリティシュ・フォークは迷宮の世界だ。一度入り込んだら、なかなか抜け出せない。それほど魅力的で奥が深い。英国の伝統や独特の翳り、のどかな田園風情など、そこには叙情性に溢れた至福の世界が広がる。
ブリティッシュ・フォークとアメリカのフォークは違うのか?この答えは一概には言い切れないが、アメリカのフォーク自体が、元々はスコットランドやアイルランドからの移民によってもたらされたものなので、源流は同じということになる。映画『ソングキャッチャー』でも明らかにされていたが、英国の伝承歌や、ジグやリールといったトラディショナルなダンス曲が、アメリカのアパラチア地方には、ほぼ原型をとどめて残っているのである。
さて、現在のブリティッシュ・フォークの源流といえば、50年代に起きたアメリカからのフォーク・リバイバルの波と、スキッフル・ブームがある。英国フォーク・リバイバルの重鎮、イワン・マッコールやペギー・シーガー、そしてスキッフルを経たマーティン・カーシーなどの登場がシーンの土台を形作った。更にボブ・ディランやポール・サイモンが、イギリスのトラディショナル・ソングを自作に引用(拝借)したことは有名であり、イギリスとアメリカのフォーク・ソングの交流が見られ、60年代後半に世に出るフェアポート・コンヴェンション以降のフォーク勢は、ディランやジョニ・ミッチェルのカバーを数多く残している。
ブリティッシュ・フォークと一口に言っても、ブリティッシュ・トラッドと呼ばれる、フェアポート・コンヴェンション、スティーライ・スパン、ペンタングルの御三家のように、トラッドをフォーク・ロック化したグループもいれば、ドノヴァンやニック・ドレイク、ジョン・マーティンといった自作曲を歌うシンガー・ソングライターもいる。これに、リンディスファーンやヘロンといった牧歌的なグループや、スパイロ・ジャイラ、、トゥリーズ、メロウ・キャンドルなどのプログレの香りが混じるグループも含まれる。ブリティッシュ・フォークの名の元に膨大な裾野が広がっているのだ。
1970年に『ジャスト・アナザー・ダイアモンド・デイ』という、かつては超レアなアルバム1枚だけを残し、音楽から遠ざかっていたヴァシュティ・ブニヤンが35年振りとなるセカンド・アルバム『ルックアフタリング』を昨年リリースして話題となった。まるで時間が止まっていたかのような、無垢なアルバム。ブリティッシュ・フォークには、そんな“時が止まってしまう”ような永遠の生命を宿すアルバムがたくさんある。マニアが蠢くラビリンスな世界ではあるが、気軽にダウンロードして、その魅力の一部に触れてほしい。(Text/遠藤哲夫)





































